南方貨物線とコアラの謎
コアラがいる!!
Google Maps の航空写真でコアラを見つけたとき、興奮して上のような投稿をTwitterにしたのを覚えている。
そもそも、なんでこのコアラを見つけたかというと、Wikipediaで南方貨物線という名古屋の廃線に興味を抱き、Google Mapsの航空写真モードで線路跡を大府駅から辿っていったときに偶然見つけたのだ。
南方貨物線(なんぽうかもつせん)とは、日本国有鉄道(国鉄)が名古屋貨物ターミナル駅(1980年開設)から笠寺駅・大府駅を結ぶことを目的に建設を行い、途中でそれが中断された東海道本線の貨物支線(未成線)である。建設は輸送力の増強が目的であったため、日本鉄道建設公団でなく国鉄自身の手で行われた。
引用:南方貨物線 – Wikipedia より
このコアラはなんなのか?そして、南方貨物線を実際に辿って見てみたくなり、自転車で廃線沿いを走ってみることにした。
JR東海道本線から見える南方貨物線
より大きな地図で 南方貨物線 を表示
上の地図は Google Maps のマイマップで南方貨物線をJR大府駅からあおなみ線中島駅までトレースした地図。実際に航空写真で辿ってみると面白いので、大きな地図を別ウィンドウで開いて見てもらえばと思う。
この南方貨物線、大府駅から笠寺駅まではJR東海道本線と並行して線路が敷いてある。が、この線路もレールは既に撤去されたようで、道床が残るのみだ。また、新興住宅地として開発著しい南大高駅のあたりでは跡すらも完全になくなってしまっている。
そこで、JR東海道本線の車窓から見る南方貨物線はどのように見えるのか動画で撮影してみた。
動画は都合上(Youtubeの10分制限だったり、あまり代わり映えしないからだったり)南大高駅からとなる。大府駅から共和駅の様子は、自転車で辿った項目にある写真を参考にしてほしい。
動画のタイムライン
- 00:39 南大高駅。今年の3月にできた新駅で、周りは変化が著しい。共和駅まであった道床も、この駅周辺ではなくなっている。
- 03:05 大高駅。大高駅まで高架の工事を行っている。高架は撤去するのではなく、補修しているそうだ。ホーム構内のレールはない。
- 06:13 笠寺駅。貨物線がある。
- 07:20 東海道新幹線とアンダークロス。
- 07:43 南方貨物線と分岐。山崎川を渡る手前では高架が軽貨急配のトラック車庫として利用されていることがわかる。山崎川の後は、住宅街に埋もれてしまいどこにあるのかがわかりづらい。
動画からのキャプチャ画像
動画だと一瞬なので見逃しやすいが、このように南方貨物線として作られた高架がトラックの車庫として使われている。
自転車で大府駅から南方貨物線を辿る
地図を見てもらってもよくわかるように、南方貨物線の高架は道路に沿っているわけでもないので、機動性のある自転車で巡ることがベストな選択かと。
そんなわけで某日、大府駅から謎なコアラの絵がある中島駅まで自転車で巡ってみた。
JR大府駅周辺
大府駅周辺は貨物用線路として使われている様子。
JR大府駅からJR共和駅へ
レールは既になくなっている。看板によると南方貨物線路盤工事として補修しているとのこと。
JR共和駅周辺
共和駅構内はバリアフリー化の工事中。愛三工業の敷地から線路よりには細い道路があるので、そこを通ってみた。
JR南大高駅周辺
JR南大高駅からJR大高駅へ
JR東海道本線と並行している南方貨物線の走る高架を補修している様子。
JR笠寺駅周辺
東海道新幹線とのアンダークロスとJR東海道本線との分岐
JR東海道本線と南方貨物線の上を東海道新幹線の高架がクロスする。
最後の写真は山崎川に架かる東海道本線の鉄橋。この手前で南方貨物線は分岐しているわけだが、どこで分岐しているかわからなかったので、山崎川を渡って探してみることに。
住宅街に突如あらわれる南方貨物線の高架
山崎川を渡って住宅街に迷い込むと突然異質な高架が目の前に飛び込んできた。
普通の住宅の隣に切断面をさらけだすコンクリートの高架。誰がどうみても異質に感じるであろうが、目線を下に向ければ、どことも変わらない住宅街の雰囲気である。
この高架。ずっと連続で続いてるわけではなく、下に道路が通る場所だけ切り取られている。高架が途切れては、次の高架の続きを探して追いかける。この繰り返しが何度も続く。
高架の使われ方は様々だ。ネットを張ってゴルフ練習場としているところ、倉庫や車庫として利用しているところなど。事務所として使っているところもあった。
ある高架の銘板には、着手:昭和45年12月1日、竣工:昭和46年11月26日と書かれていた。
高架下は作業置き場として使われるところが多いようだが、高架に覆われる形で建物が建てられているところもある。
上の2枚は国道247号に架かる歩道橋の上から撮影。
東海道新幹線と分かれて
東海道新幹線と分かれるあたりからの高架は完全に撤去された様子。航空写真で確認するとわかるが、不自然な空き地からここを高架が通っていたんだろうと推測できる。
曲線部があっただろう西友を通ってパチンコ店の駐車場から。パチンコ店の上を使われることのない高架が横断する。
まさに新しい建物が高架の隣に建築されているところ。ここに切断された高架と建物の違和感のある風景が生まれるのであろうか?
中川運河を挟んだあたり。物流センターや市営住宅の奥にひっそりと高架が通っている。
上の2枚は環状線を挟んだ高架。
高架下を駐車場として使用されているところは多いが、ある板金工場では高架に上るスロープがあり、高架上を駐車場として利用している模様。航空写真から見える、高架上にある車がそれ。
あおなみ線との分岐
橋脚はあるが、高架が完全ではない状態。一部で未完成だったらしいけど、こういう分岐部分などがそうなのかな?
そして、コアラが描かれていたと思われる場所に近づくと。
コアラ発見!謎が解けた!!
なるほど。そういうわけね。ここまで自転車でたどり着いたご褒美にと、Google Mapsでも確認できる大きなコアラが出迎えてくれた。
早速、Twitterで顛末を報告し、すべての調査は終了。
あおなみ線中島駅周辺
さきほどの分岐からは、あおなみ線(旧西名古屋港線)と並行して名古屋駅手前の八田貨物駅(仮称)まで南方貨物線はあったことになっている。
中島駅周辺には南方高架線高架が利用されている場所があり、上の写真の2枚目でかなり古い高架橋が国道1号線に架かっていることがわかる。
消えつつある南方貨物線
2002年(平成14年)より、約300億円をかけて新規建設区間の高架橋を撤去し、土地を売却することにした。しかしバブル経済崩壊の影響もあって、回収できる金額は約40億円程度にとどまることになった。
(中略)
2008年現在、高架橋の撤去は貸借関係のない部分から先に行われている(高架下を事務所、駐車場等に賃貸している部分はそのまま残っている場合が多い)。また、大高駅付近のように現在の東海道本線の高架橋と一体で建設されている部分については高架橋の撤去はされず、橋脚の耐震補強が行われている(ただし施行はJR東海ではなく所有者の鉄道建設・運輸施設整備支援機構による)。
引用:南方貨物線 – Wikipedia より
動画や写真を撮っている中、工事中の場面が多く目についた。大高駅付近の補強工事は別として、どれも撤去に向かうための工事であろう。
残して欲しいとは決して思わないが、今ある姿をたくさんの人の目に焼き付けて欲しいと思う。慣れ親しんだ景色が消えてから初めて、何かが奪われた喪失感に気づくことは多い。
今まで存在を知らなかった人も、興味を持ったら辿ってみるといいよ。距離もそんなに長くないし、徒歩でも巡れると思う。
ひとりごと
これ、自転車道にしてくれてたら通勤が便利なんだけどな・・