東海道五十三次を歩く 10日目 新居~御油

旧御油橋 巡礼
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新居宿~御油宿 35.1km 雨風と戦い抜いた春の一日

はじめに:桜の季節に向かい風と雨に見舞われた東海道歩き

2024年3月20日、春分の日。本来なら桜のつぼみがほころび始める季節のはずなのに、新居町駅に降り立った瞬間、冷たい向かい風が容赦なく吹き付けてきました。

「なんでいつも歩くときは向かい風なんだろう…」

そんなことを思いながら、東海道五十三次の続きを歩き始めます。今回は新居宿から御油宿まで、35.1kmの道のり。結果的に7時間以上かけて歩くことになるとは、この時はまだ知る由もありませんでした。

新居関所から白須賀宿へ:歴史の重みを感じながら

唯一現存する関所建物・新居関所跡

新居関所跡
新居関所跡

前回のゴール地点である新居町駅から歩き始めて約10分。新居関所跡に到着しました。ここは江戸時代の関所建物として唯一現存する貴重な史跡で、特別史跡にも指定されています。

建物内は史料館になっているそうですが、今回は先を急ぐため外から眺めるだけに。それでも、かつて「入り鉄砲に出女」を厳しく取り締まった関所の重厚な佇まいは、400年の時を超えて旅人を圧倒します。

関所周辺には旅籠紀伊国屋資料館や疋田八郎兵衛本陣跡など、宿場町の面影を残す史跡が点在。東海道を歩く醍醐味は、こうした歴史の痕跡に触れられることですね。

旧東海道の松並木を抜けて

新居の町を南に抜け、西へと方向を変えると、旧東海道の松並木が続きます。車もほとんど通らない静かな道。江戸時代の旅人たちも、きっと同じ松の木陰で一息ついたのでしょう。

大粒の雨が降ってきた
大粒の雨が降ってきた

しかし、今日は風が強い。松の枝がざわざわと音を立て、まるで何かを警告しているかのよう。案の定、空が急速に暗くなってきました。

「天気予報では降らないはずだったのに…」

大粒の雨が降り始め、慌ててレインウェアに着替えます。東海道歩きの経験から、万が一に備えて常備しているレインウェア。これがなければ、今日の行程は諦めていたかもしれません。

潮見坂の絶景は雨にかき消されて

期待していた海の景色が…

潮見坂
潮見坂

今回のルートで最も楽しみにしていたのが潮見坂です。太平洋を一望できる絶景ポイントとして知られ、晴れていれば青い海と空のコントラストが美しいはず。

しかし、現実は厳しい。雨と霧で視界は最悪。海どころか、50m先すら見えない状況です。それでも、この坂道の急勾配は確かに感じられました。距離は短いものの、雨で滑りやすくなった路面に注意しながら一歩一歩登っていきます。

坂を登りきると、潮見坂公園跡。背後には小学校と中学校があり、「こんな高台に通学するのは大変だろうな」なんて、他人事ながら心配になってしまいました。

白須賀宿:雨の中の宿場町

白須賀宿
白須賀宿

白須賀宿は、東海道五十三次の32番目の宿場。かつては潮見坂の麓にありましたが、宝永4年(1707年)の大地震による津波被害を受けて、現在の高台に移転したそうです。

格子戸のある古民家など、所々で風情があります。でも正直なところ、この時は雨との戦いで精一杯。宿場の歴史を味わう余裕なんてありませんでした。

愛知県へ:境橋を越えて三河国入り

静岡県とのお別れ

境橋
境橋

白須賀宿を過ぎ、しばらく歩くと境橋に到着。ここで静岡県から愛知県へ、遠江国から三河国へと入ります。

「あの長かった静岡がついに終わった…」

東海道を歩いていると、静岡県の長さには本当に驚かされます。由比から始まり、薩埵峠、富士川、箱根と、数々の難所を越えてきました。その静岡県ともついにお別れ。ちょっと感慨深いものがありますね。

国道1号線との長い付き合い

境橋を渡ってからは、ひたすら国道1号線沿いを歩きます。この区間、正直言って退屈です。見どころもなく、ただただアスファルトの上を進むだけ。雨は相変わらず降り続き、風も収まる気配がありません。

こういう時は、もう無心になるしかない。一歩、また一歩。まるでロボットのように足を前に出し続けます。車がビュンビュン横を通り過ぎていく中、ひたすら歩き続ける自分が、なんだか滑稽に思えてきました。

二川宿から吉田宿へ:豊橋市街地を行く

二川宿本陣資料館は休館中

二川宿本陣資料館
二川宿本陣資料館

13時半頃、二川宿に到着。東海道五十三次の33番目の宿場です。ここには二川宿本陣資料館があり、江戸時代の本陣建物が現存している貴重な場所なのですが…

「リニューアルのため全面休館」

まあ、仕方ないですね。

暫く歩くと、材木屋の軒先で見つけた「スウェーデントーチ 500円」の看板には心惹かれました。キャンプで一度使ってみたいんですよね、あれ。

豊橋(とよばし)での強風体験

豊橋(とよばし)
豊橋(とよばし)

吉田宿を過ぎ、豊橋に差し掛かった時のこと。橋の上では、これまでにない強風が吹き荒れていました。

下流から吹き上げる風が真正面から直撃。体が持っていかれそうになり、歩道を歩いていても恐怖を感じるほど。手すりにしがみつくようにして、なんとか渡り切りました。

「東海道歩きって、こんなに過酷だったっけ…」

でも、こういう体験も含めて旅の思い出になるんですよね。後から振り返れば、笑い話です(その時は必死でしたが)。

御油宿への道:夕焼けとの出会い

見どころ満載の後半戦

豊橋市街を抜けてからも、見どころは続きます。

  • 高橋(豊川放水路):歩道がないのに車の往来が激しく、恐怖の横断
  • 飯田線の踏切:小坂井駅近くで、のんびりとした単線を横断
  • 伊奈一里塚:江戸から77里目の一里塚跡
  • キッチンながた:「孤独のグルメ」の原作者・久住昌之さんが絶賛した洋食店
キッチンながた
キッチンながた

特にキッチンながたは、いつか立ち寄ってみたいお店。久住さんの著書『野武士、西へ 二年間の散歩』で強く推薦されていていました。

感動の夕焼け:雨上がりのご褒美

17時過ぎ、御油の追分(姫街道との分岐点)を過ぎた頃、ついに雨が完全に上がりました。

旧御油橋
旧御油橋

西の空が淡く赤く染まり始め、雨に洗われた空気が澄んでいます。旧御油橋から眺める音羽川の流れも、夕日を受けてキラキラと輝いていました。

「ああ、歩いてきてよかった」

7時間以上、雨と風と戦い続けた疲れが、この瞬間にスーッと癒されていくのを感じました。センチメンタルかもしれませんが、こういう瞬間があるから、東海道歩きはやめられないんです。

東海道歩きのコツ:雨の日対策と心構え

必須の雨対策グッズ

今回の経験から、東海道歩きには以下の雨対策が必須だと改めて実感しました。

  1. レインウェア(上下セット):ポンチョより動きやすい
  2. 防水スプレー:靴とザックに事前に施工
  3. 替えの靴下:濡れた時の不快感を軽減
  4. ビニール袋:スマホや貴重品の防水対策
  5. タオル:雨を拭くだけでなく、防寒にも

悪天候でも楽しむ心構え

雨の日の街道歩きは確かに辛い。でも、考え方次第で楽しめる部分もあります。

  • 雨の日にしか見られない景色がある
  • 人が少なくて静かな街道を独り占めできる
  • 困難を乗り越えた時の達成感は格別
  • 江戸時代の旅人も同じように雨に打たれていたはず

まとめ:35.1kmの雨中行軍を終えて

新居宿から御油宿まで、35.1km、7時間2分の道のり。雨と風に苦しめられた一日でしたが、最後に見た夕焼けが全てを報われた気持ちにしてくれました。

東海道五十三次を歩いていると、こんな日もあります。でも、だからこそ晴れた日のありがたさが身に染みるし、ゴールした時の達成感も大きくなるんです。

次回は御油宿から先へ。どんな天気が待っているか分かりませんが、また一歩一歩、京都を目指して歩き続けます。

新居~御油の歩行記録

  • 日程:2024年3月20日(水)
  • 天候:曇り時々雨
⏱タイム🏃距離↗登り↘下り
07:0235.1km128m110m

地図・標高グラフ

コースタイム

新居町駅から【白須賀宿】まで

新居町駅 10:43 → 10:51 新居関所 10:52 → 11:59 潮見坂 12:00 → 12:04 おんやど白須賀 12:04 → 12:16 旧東海道第32宿白須賀宿 12:16 → 12:17 【白須賀宿】

歩行タイムライン
  • 10:43
    新居町駅
    新居町駅
    新居町駅

    前回のゴール地点である新居町駅から続きを歩く。

    新居町歩道橋
    新居町歩道橋

    もうすぐ春だというのに、今日はとにかく寒い。しかも強風。
    追い風ならありがたいのに、なぜか歩くときはいつも向かい風なんですよね…。

  • 10:51
    新居関所
    新居関所跡
    新居関所跡
    新居関所跡
    新居関所跡

    唯一の関所建物として特別史跡に指定されている。
    今回は時間がないので寄ることはなかったが、建物の中は史料館となっているようだ。

    新居関所跡
    新居関所跡
    旅篭紀伊国屋資料館
    旅篭紀伊国屋資料館
    疋田八郎兵衛本陣跡
    疋田八郎兵衛本陣跡
    新居一里塚跡
    新居一里塚跡
    旧東海道の松並木
    旧東海道の松並木

    新居の町並みを南に抜け、西へ方向を変える。
    閑散とした道路に沿って、旧東海道の松並木が続く。風情を感じながら歩くが、風が強い。

    立場跡
    立場跡
    明治天皇御野立所跡
    明治天皇御野立所跡
    大粒の雨が降ってきた
    大粒の雨が降ってきた

    空が暗くなってきたなって思った途端、大粒の雨が降ってきた。
    「天気予報では降らないはずだったのに…」と思いつつ、しぶしぶレインウェアに着替えた。万が一に備えて常備しているレインウェア、持っててよかった。

    潮見坂への曲がり角
    潮見坂への曲がり角

    ぼーっとしてて気づかず通り過ぎてたので、引き返した。注意力散漫になっていたのかも。

  • 11:59
    潮見坂
    潮見坂
    潮見坂

    潮見坂から海に向かっての景色。
    天気が良ければ、真っ青な海と空が見られたかもしれない。

    潮見坂
    潮見坂

    坂は急だけど距離が短いので、すぐ登りきれました。

  • 12:04
    おんやど白須賀
    潮見坂公園跡
    潮見坂公園跡

    この背後にある小学校と中学校。高台にあるので通学が大変そうだ。

  • 12:16
    旧東海道第32宿白須賀宿
    白須賀宿
    白須賀宿
  • 12:17
    【白須賀宿】
    白須賀交番前交差点
    白須賀交番前交差点

【白須賀宿】から【二川宿】まで

【白須賀宿】 12:17 → 12:31 境橋 12:31 → 13:29 旧東海道第33宿二川宿 13:29 → 13:40 二川駅 13:41 → 13:41 【二川宿】

歩行タイムライン
  • 12:17
    【白須賀宿】
    旧国道1号
    旧国道1号

    旧国道1号と合流。

  • 12:31
    境橋
    境橋
    境橋

    静岡県から愛知県へ。遠江国と三河国の国境を越え、ようやく豊橋市に入りました。
    あの長かった静岡が終わると、ちょっと感慨深いものがあります。

    国道1号線
    国道1号線

    しばらく、国道1号線を歩くことになる。
    この区間は特に見どころもなく、ひたすら無心で歩きます。ただただ前に歩くのみの辛い時間。

    二川一里塚跡
    二川一里塚跡
    商家「駒屋」
    商家「駒屋」
    馬場本陣
    馬場本陣
  • 13:29
    旧東海道第33宿二川宿
    二川宿本陣資料館
    二川宿本陣資料館

    残念ながら二川宿本陣資料館はリニューアルのため、全面休館中のようだ。

    春田屋
    春田屋
  • 13:40
    二川駅
    二川駅
    二川駅
  • 13:41
    【二川宿】

【二川宿】から【吉田宿】まで

【二川宿】 13:41 → 14:19 飯村一里塚跡 14:20 → 14:59 秋葉神社 常夜灯 15:00 → 15:13 旧東海道第34宿吉田宿 15:13 → 15:18 【吉田宿】

歩行タイムライン
  • 13:41
    【二川宿】
    スウェーデントーチ 500円
    スウェーデントーチ 500円

    材木屋の軒先でスウェーデントーチが格安(500円)で売られてた。
    一回、キャンプで燃やす体験してみたいんだよな。

  • 14:19
    飯村一里塚跡
    モンベル豊橋店
    モンベル豊橋店

    飯村一里塚跡近く。モンベル豊橋店。

    瓦町交差点
    瓦町交差点
    東八町交差点
    東八町交差点
  • 14:59
    秋葉神社 常夜灯
    吉田宿東惣門跡のミニチュア
    吉田宿東惣門跡のミニチュア

    ミニチュアで復元するのかわいい。

  • 15:13
    旧東海道第34宿吉田宿
    吉田宿本陣跡
    吉田宿本陣跡
  • 15:18
    【吉田宿】
    吉田宿
    吉田宿

【吉田宿】から御油駅まで

【吉田宿】 15:18 → 15:23 湊町公園 15:24 → 15:29 豊橋(とよばし) 15:29 → 15:58 高橋(豊川放水路) 15:58 → 16:26 伊奈一里塚 16:27 → 17:39 御油郵便局 17:39 → 17:45 御油駅

歩行タイムライン
  • 15:18
    【吉田宿】
  • 15:23
    湊町公園
  • 15:29
    豊橋(とよばし)
    豊橋(とよばし)
    豊橋(とよばし)

    橋の上は強風との戦い。
    下流からの風がもろに直撃し体が持っていかれるので、歩道を歩いていても怖かった。

  • 15:58
    高橋(豊川放水路)
    高橋
    高橋

    豊川放水路に架かる高橋。
    歩道がないのに車の往来は激しい、恐怖しかない。

    子だが橋の碑
    子だが橋の碑
    飯田線の踏切
    飯田線の踏切

    小坂井駅の近く、飯田線の踏切を横断。

  • 16:26
    伊奈一里塚
    伊ノ奈の一里塚付近
    伊ノ奈の一里塚付近
    佐奈川
    佐奈川

    佐奈川を越える。

    キッチンながた
    キッチンながた

    「孤独のグルメ」の原作者である久住さんが東海道を歩いた際に立ち寄った洋食店。
    エッセイの中で強くオススメされていたので、いつか行ってみたい。

    高架橋で旧東海道は遮られる。
    近くの横断歩道を渡るために少し遠回りする。

    国道1号
    国道1号

    国道1号を横切る。

    名鉄豊川線の踏切
    名鉄豊川線の踏切
    国府交番
    国府交番

    景観に合わせているのか、凝った外観をしている国府交番。

    大社神社
    大社神社
    御油の追分
    御油の追分

    姫街道との分岐。

    旧御油橋
    旧御油橋

    今は花のない時期ですが、十分絵になる景色。
    桜の季節に訪れればさらに賑やかな雰囲気になるだろう。

  • 17:39
    御油郵便局
    御油郵便局
    御油郵便局

    御油郵便局で今回はおしまい。
    本来の東海道とは逆に歩き、御油駅から帰宅する。

  • 17:45
    御油駅
    御油駅
    御油駅

動画

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