平溪線一日周遊券で秘境駅めぐり|台北の週末オフ

三貂嶺駅の薄暗いホームに停車する橙の旧型列車。右手のコンクリート柱に「三貂嶺」と大書され、複線の線路が奥へ延びる。 旅行
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前日に世界初の猫カフェと七星山ハイキングを済ませ、台湾出張後のオフ日2日目。この日は台北から臺鐵(台湾鉄路)で瑞芳へ向かい、平溪深澳線一日周遊券を使って、海側ホームで有名な八斗子から、炭鉱遺構の菁桐、天灯で知られる十分、秘境駅の三貂嶺まで、平溪線・深澳線の主要駅を1日で巡る乗り鉄旅をした。

前日の様子はこちら。

運良く前日は晴れて登山できたが、もし天気が悪くて山に登れなかった場合の予備プランとして温めていた乗り鉄旅。せっかくなので予定通りこちらも回ってきた。

平溪線は「線路と街が一体になった」十分老街がSNSで有名だが、実は海に飛び出す八斗子・炭鉱遺構の菁桐・車道が通じない秘境駅の三貂嶺それぞれに違う顔があって、乗り鉄好きなら1日中飽きない路線だった。

目次

忙しい人向けまとめ

時刻スポット
7時台台北駅→瑞芳
8時台瑞芳駅で平溪深澳線一日周遊券を購入(120元)
9時台八斗子駅 海側ホーム、青い海と線路
11時台菁桐駅 炭鉱遺構、石底大斜坑、菁桐礦業生活館
12時台平溪老街 赤い天灯装飾、大腸包小腸(もち米ソーセージ)
13〜14時十分駅 線路と街が一体、天灯上げ、仙草奶凍アイス
15時台三貂嶺駅 孤島の秘境駅、渓谷と鉄道橋
16時台瑞芳経由で台北へ戻る
18時台冰讃で芒果雪花冰(マンゴーかき氷)

移動は臺鐵(台湾鉄路)の平溪深澳線一日周遊券で乗り放題。台北→瑞芳→八斗子→菁桐→平溪→十分→三貂嶺→瑞芳→台北 という平溪深澳線の乗りつぶしルート。

平溪深澳線一日周遊券とは

平溪線・深澳線を1日中乗り降り自由になる、臺鐵公式の割引パス。

  • 正式名称: 平溪/深澳雙支線一日週遊券(Pingxi/Shen-Ao 1-Day Pass) https://tip.railway.gov.tw/tra-tip-web/tip/tip003/tip313/detail
  • 料金: 大人120元(約600円)。2025年6月23日の臺鐵運賃改定で80元から120元に値上げされた
  • 有効範囲: 八斗子〜瑞芳〜菁桐区間の乗り降り自由(分岐駅の瑞芳を除き、深澳線2駅+平溪線9駅の計11駅)
  • 販売駅: 板橋、台北、松山、基隆、八堵、瑞芳、猴硐、宜蘭、羅東、平溪、菁桐、十分の12駅
  • 注意: 台北〜瑞芳間の幹線区間は別途乗車券が必要(悠遊カードでOK)

普通に乗ると1駅22元から、瑞芳〜菁桐で44元。平溪線を1往復するだけでは元が取れないが、今回のように5駅で乗り降りする(普通運賃だと合計160元前後)ならしっかり得になる。

台北駅から瑞芳への移動

ホテルから台北駅の地下ホームへ。朝の台北駅では、たぶんホームレスなのだろう、駅寝(ステーションビバーク)している人の姿がちらほら見えて、少し昔の日本のようで懐かしくなった。8時前の区間車で瑞芳へ向かう。

地下ホームに入線する銀色に緑帯の臺鐵通勤電車。前面に行先表示が光り、白タイルの壁際で乗客が一人待っている。11番の柱番号が見える。
地下ホームに入線する銀色に緑帯の臺鐵通勤電車。前面に行先表示が光り、白タイルの壁際で乗客が一人待っている。11番の柱番号が見える。

瑞芳までは73元(約365円)。2025年6月、臺鐵は約30年ぶりに運賃を改定して平均26%ほど値上げしたそうだが、まだ日本の感覚からすると十分に安い。

瑞芳(Ruifang)駅ホームの緑白の駅名標。猴硐・四脚亭方面の案内が中国語で記され、屋根の下の青いベンチに乗客が座って列車を待つ。
瑞芳(Ruifang)駅ホームの緑白の駅名標。猴硐・四脚亭方面の案内が中国語で記され、屋根の下の青いベンチに乗客が座って列車を待つ。
瑞芳駅の改札口。「入口 剪票口」「出口」の看板が並び、電光時計は8時51分。「進站 ENTRY」の矢印看板の脇を制服の駅員や乗客が行き交う。
瑞芳駅の改札口。「入口 剪票口」「出口」の看板が並び、電光時計は8時51分。「進站 ENTRY」の矢印看板の脇を制服の駅員や乗客が行き交う。

電車に揺れること50分弱で瑞芳駅に到着。ドア上の車内案内モニターに、下車する様子のアニメが流れていてかわいい。台湾ツキノワグマをモチーフにした台鐵の公式マスコット「鐵魯(テル)」だ。

瑞芳車站の駅舎正面。「瑞芳車站 Ruifang Station」の看板を掲げた赤茶色の建物前の石段に、帽子やリュック姿の団体客が集まっている。
瑞芳車站の駅舎正面。「瑞芳車站 Ruifang Station」の看板を掲げた赤茶色の建物前の石段に、帽子やリュック姿の団体客が集まっている。
手に持った「平溪深澳雙支線一日週遊券」の一日乗車券。天燈やレトロ列車のイラスト入りで、背後に緑色の駅舎の売票処が写る。
平溪深澳雙支線一日週遊券(120元)

瑞芳駅でいったん下車。ここまでは悠遊カードで来たので、1日乗車券を買って乗り直す。駅員に売り場を尋ねると、いったん改札の外に出たところに窓口があるという。ちょうど瑞芳駅は改修工事の最中で、プレハブの仮設ブースが切符販売窓口として使われていた。

そこで平溪深澳線一日周遊券を購入。天燈が空に上がるイラスト入りの紙の乗車券は、それだけで気分が上がるデザイン。悠遊カードのタッチとは違って、手元に残るのがいい記念になる。

瑞芳区の区民広場付近の街角。大きな壁画が描かれたビルの前にバス停があり、路線バスやバイク、横断歩道が見える。歩道には木々が並ぶ。
瑞芳区の区民広場付近の街角。大きな壁画が描かれたビルの前にバス停があり、路線バスやバイク、横断歩道が見える。歩道には木々が並ぶ。

八斗子行きの発車まで少し時間があるので、去年に泊まったホステルのある区民広場まで散歩してみた。区民広場は九份行きのバス停がある場所でもあり、瑞芳駅から九份へバスで向かう人は、この広場までそこそこ歩くことになる。

瑞芳駅ホームに停車する橙と黄色の臺鐵区間車。丸い前照灯の旧型気動車で、緑の屋根の下、ホームで乗客数人が乗車を待っている。
瑞芳駅ホームに停車する橙と黄色の臺鐵区間車。丸い前照灯の旧型気動車で、緑の屋根の下、ホームで乗客数人が乗車を待っている。

瑞芳駅のホームで橙と黄色の旧型臺鐵区間車を待って、いよいよ深澳線・八斗子へ。深澳線は瑞芳・海科館・八斗子のわずか3駅というマイナー路線なので、車内はガラガラだろうと思っていた。ところがそこには、元気いっぱいの台湾のおじちゃんおばちゃん団体が乗り込んでいて、何度も何度も記念写真を撮っては大声で喋りまくり、車内はやたら賑やかだった。八斗子まで、いったい何しに行くのだろう?

①八斗子|海側ホームの絶景

瑞芳から深澳線に乗り換えて、終点の八斗子(Badouzi)へ。ここはホームのすぐ横に太平洋が広がるという珍しい駅で、青と黒の欄干が付いた遊歩道が線路とほぼ一体になって伸びている。かつて廃止されていた八斗子駅は2016年に旅客営業を再開しており、隣の海科館駅(2014年新設)とともに、国立海洋科技博物館のアクセス駅として整備された経緯を持つ。

  • 駅名: 八斗子(Badouzi)
  • 路線: 深澳線終点(瑞芳から約20分)
  • 見どころ: ホーム間近に広がる海、青い海と橙の気動車、隣の海科館駅から徒歩圏の国立海洋科技博物館
  • 滞在時間目安: 20〜30分(折り返し便まで)
八斗子(Badouzi)駅の駅名標を大きく写した一枚。「海科館 Haikeguan」の案内と、青い柵越しに海と山が続く海辺の無人駅の雰囲気。
八斗子(Badouzi)駅の駅名標を大きく写した一枚。「海科館 Haikeguan」の案内と、青い柵越しに海と山が続く海辺の無人駅の雰囲気。
海辺のホームに停車する橙とグレーの列車の先頭部。線路が奥へ伸び、左に海と岬、右に緑の山肌が迫る八斗子駅の情景。
海辺のホームに停車する橙とグレーの列車の先頭部。線路が奥へ伸び、左に海と岬、右に緑の山肌が迫る八斗子駅の情景。

ここまで乗ってきた区間車はそのまま瑞芳へ折り返すため、ホームに停車したまま出発準備に入っている。ドアから降りると、目の前に太平洋が広がっていた。ホームの向こう、遠くに見える台形の山影は基隆山かな。去年、自転車でこの一帯を走ったときにも気になっていた、印象深いシルエットだ。

いったん駅の外にも出てみたが、写真を数枚撮っただけで手持ち無沙汰になり、停車中の車内に戻る。10分ほどの停車ののち、今度は瑞芳に向けて出発。

列車の開いた乗降口から見える海。ドア越しに青と黒の柵、その先に穏やかな海と防波堤、浅瀬で遊ぶ人影が小さく写る。
列車の開いた乗降口から見える海。ドア越しに青と黒の柵、その先に穏やかな海と防波堤、浅瀬で遊ぶ人影が小さく写る。
古い列車内。壁に台湾全図と路線図が掲示され、緑のクロスシートにリュックやスーツケースなどの荷物が置かれたレトロな車内。
古い列車内。壁に台湾全図と路線図が掲示され、緑のクロスシートにリュックやスーツケースなどの荷物が置かれたレトロな車内。

列車内の壁に掲示されている台湾全図と平溪線・深澳線の路線図。シンプルなレトロデザインで、どこか懐かしい。緑のクロスシートも味わい深い。

②菁桐|炭鉱遺構と老街

瑞芳に戻って、今度は平溪線へ乗り換え、終点の菁桐(Jingtong)まで一気に乗り通す。八斗子から菁桐まで、深澳線・平溪線それぞれの終端から終端まで、1時間15分ほどの乗車になる。

途中、環島Day 11で訪れた猴硐(猫村)を通過。車内からでも駅周辺の猫が見えるかな?と目を凝らしていたが、車窓からは1匹も見つけられなかった。

猴硐(Houtong)駅のホーム。青い花柄タイルの柱に「猴硐」の駅名と矢印。線路脇に草が茂り、白い上着に日除け帽の女性が歩いている。
猴硐(Houtong)駅のホーム。青い花柄タイルの柱に「猴硐」の駅名と矢印。線路脇に草が茂り、白い上着に日除け帽の女性が歩いている。
走行中の列車の窓から見た渓谷。深い緑の山肌の谷底に川が流れ、線路脇に草木が茂る。窓ガラスに車内が映り込んでいる。
走行中の列車の窓から見た渓谷。深い緑の山肌の谷底に川が流れ、線路脇に草木が茂る。窓ガラスに車内が映り込んでいる。

車窓は徐々に山あいの渓谷へ。深い緑の山肌、谷底の川、線路脇の草木が次々に流れていく。線路は基隆河の上流をなぞっていくが、この川が台北市の士林あたりまでつながっていると思うと、地形的にちょっと面白い。

  • 駅名: 菁桐(Jingtong)
  • 路線: 平溪線終点(瑞芳から約1時間)
  • 見どころ: 日本統治時代の駅舎、石底大斜坑、菁桐礦業生活館(無料)、選炭場遺構
  • 滞在時間目安: 60〜90分

菁桐駅の駅舎と老街

菁桐は、日本統治時代の1929年に石底炭鉱の積出駅として開業した、平溪線の終点駅。かつてはこの一帯の石炭を台北方面へ運び出す拠点として大いに賑わった街で、鉱山が閉山した今も、木造駅舎や選炭場、坑口、日本家屋の職員宿舎など、当時の産業遺構がまとまって残っている。

駅舎は木造で、日本統治時代の雰囲気そのまま。駅前の老街には土産物店や食堂が軒を連ね、通りを歩くとまるで映画のオープンセットに紛れ込んだような気分になる。

平溪線・菁桐駅のホーム。オレンジと白の旧型ディーゼル列車が停車し、街灯や乗客が並ぶ。線路脇には古い木造家屋や山の緑が見える。
平溪線・菁桐駅のホーム。オレンジと白の旧型ディーゼル列車が停車し、街灯や乗客が並ぶ。線路脇には古い木造家屋や山の緑が見える。
平溪線・菁桐駅の駅名標。緑と白の「菁桐 Jingtong」「平溪 Pingxi」の標識が立ち、背後には錆びたトタンや木造の古い駅舎建物と山の緑が広がる。
平溪線・菁桐駅の駅名標。緑と白の「菁桐 Jingtong」「平溪 Pingxi」の標識が立ち、背後には錆びたトタンや木造の古い駅舎建物と山の緑が広がる。
菁桐駅の駅舎正面。「菁桐車站 Jingtong」と書かれた白壁・瓦屋根の木造風駅舎の前に、竹細工のオブジェや観葉植物の鉢が並ぶ石畳の通り。左手に古い木造の物見櫓状の建物。
菁桐駅の駅舎正面。「菁桐車站 Jingtong」と書かれた白壁・瓦屋根の木造風駅舎の前に、竹細工のオブジェや観葉植物の鉢が並ぶ石畳の通り。左手に古い木造の物見櫓状の建物。
菁桐老街の商店街。「菁桐 Jingtong 鐵道文物」の看板を掲げた木造の古い店舗が軒を連ね、赤い郵便ポストや吊り飾りが並ぶ。石畳の路地を観光客が歩く。
菁桐老街の商店街。「菁桐 Jingtong 鐵道文物」の看板を掲げた木造の古い店舗が軒を連ね、赤い郵便ポストや吊り飾りが並ぶ。石畳の路地を観光客が歩く。

老街を歩いていると案内地図があって、この先に日本家屋の職員宿舎群があるようだ。暑い中、坂道を登って行ってみる。「皇宮」と扁額を掲げたリノベ済みの建物は残念ながら中に入れなかったが、映画やドラマのロケ地としてよく使われている場所らしい。他の宿舎はゲストハウスとして宿泊できるようになっているっぽい。

「皇宮」と扁額を掲げた木造家屋の門構え。切妻の木造庇の下に照明が下がり、石を積んだ塀と木格子の門扉が続く。背後は山の緑と青空。
「皇宮」と扁額を掲げた木造家屋の門構え。切妻の木造庇の下に照明が下がり、石を積んだ塀と木格子の門扉が続く。背後は山の緑と青空。

石底大斜坑と選炭場遺構

菁桐駅付近の線路と旧選炭場。手前で三本の線路が分岐し、左手にコンクリート造アーチが連なる旧選炭場の巨大な遺構、右手に駅舎の屋根と山の緑が広がる。
菁桐駅付近の線路と旧選炭場。手前で三本の線路が分岐し、左手にコンクリート造アーチが連なる旧選炭場の巨大な遺構、右手に駅舎の屋根と山の緑が広がる。
菁桐の旧選炭場遺構の内部。コンクリートの柱とアーチが連なる薄暗い構造物の中を線路が延び、緑の草に覆われている。奥に山の緑と曇り空。
菁桐の旧選炭場遺構の内部。コンクリートの柱とアーチが連なる薄暗い構造物の中を線路が延び、緑の草に覆われている。奥に山の緑と曇り空。

菁桐駅のすぐそばには、旧選炭場のコンクリート造アーチ遺構が今も残っている。かつては石底大斜坑で採掘された石炭を、ここでサイズごとに選別・洗浄して貨車に積み込んでいた場所。コンクリートの柱とアーチが薄暗い内部で連なり、その隙間から緑の草がじわじわと構造物を飲み込もうとしていた。

菁桐駅付近の線路を低い視点で捉えた一枚。錆びた一本のレールと枕木、犬釘が手前に大きく写り、奥には旧鉱業施設の建物や青い一方通行標識、山の緑が続く。
菁桐駅付近の線路を低い視点で捉えた一枚。錆びた一本のレールと枕木、犬釘が手前に大きく写り、奥には旧鉱業施設の建物や青い一方通行標識、山の緑が続く。
菁桐駅の線路の終点。石垣に挟まれた行き止まりの区間で、錆びたレールが雑草に覆われ、砂利とともに緑に埋もれている。左手に建物、奥に車。
菁桐駅の線路の終点。石垣に挟まれた行き止まりの区間で、錆びたレールが雑草に覆われ、砂利とともに緑に埋もれている。左手に建物、奥に車。

線路の終点にはレールが行き止まりのまま雑草に埋もれていて、時間が止まったような雰囲気。

菁桐の石底大斜坑の坑口。「石底大斜坑」と赤地に記されたコンクリート造の坑門があり、格子で閉ざされたアーチ状の入口へ二本の線路が延びる。左手に石段。
菁桐の石底大斜坑の坑口。「石底大斜坑」と赤地に記されたコンクリート造の坑門があり、格子で閉ざされたアーチ状の入口へ二本の線路が延びる。左手に石段。

線路を挟んで階段を登ると、石底大斜坑の坑口まで行ける。石底大斜坑は、1937年に着工・1939年に完成した台陽鉱業の坑道で、周辺の石底一坑〜五坑を1本に統合し、地中を15度の傾斜で切り下げていったことから「大斜坑」と名付けられた。全長5kmにも及ぶ坑道は最盛期に台湾一の産炭量を誇ったが、1979年に閉山。今は坑口だけが残り、平溪一帯の炭鉱産業の記憶を静かに伝えている。

赤地に「石底大斜坑」と大書された坑口は格子で閉ざされているが、その周囲には煉瓦塀や崩れかけの建物、選炭場のコンクリート遺構が点在していて、廃墟好き・鉄道遺構好きにはたまらない一帯だ。

菁桐の旧施設跡の門をくぐる緑深い小径。蔓と根に覆われた石造の門と塀が続き、奥にも同様の遺構が見える。地面は落ち葉の積もった石畳。
菁桐の旧施設跡の門をくぐる緑深い小径。蔓と根に覆われた石造の門と塀が続き、奥にも同様の遺構が見える。地面は落ち葉の積もった石畳。
台湾・菁桐周辺の森に残る石積みの建物跡。苔むした壁を大木の根が覆い、崩れかけた遺構が広がる。中央の地面には白いウサギの置物が二体、並んで置かれている。
台湾・菁桐周辺の森に残る石積みの建物跡。苔むした壁を大木の根が覆い、崩れかけた遺構が広がる。中央の地面には白いウサギの置物が二体、並んで置かれている。

蔓と樹の根に覆われた石造の門があり、周囲に誰もいなかったので、ゆっくり映える写真が撮れた。フォトスポットとして誰かが置いたのだろう、地面に白いウサギの置物が二体、こちらを向いて静かに佇んでいる。日中は絵になる置物だけれど、日が暮れて薄暗くなってからひとりで来たら、たぶんホラーだ。

菁桐礦業生活館

菁桐礦業生活館は入館無料で、石底炭鉱の歴史と鉱夫たちの暮らしを常設展示している小さな博物館。石底一帯を上空から捉えた大きな航空写真パネル、鉱夫の道具、当時の生活用品などが並び、短時間でも炭鉱の街としての菁桐がぐっと立体的に見えてくる。

……のだけれど、エアコンの効いた館内には、暑さから逃げてきた観光客がひしめいていて、展示スペースの人口密度がなかなかのもの。学びと避難所を兼ねた稼働ぶり。

「菁桐礦業生活館」の外観。モルタル塗りの二階建て建物の軒に暖簾が下がり、緑の植栽が屋根に茂る。前を観光客が歩く。木造ではなくコンクリート造の建物。
「菁桐礦業生活館」の外観。モルタル塗りの二階建て建物の軒に暖簾が下がり、緑の植栽が屋根に茂る。前を観光客が歩く。木造ではなくコンクリート造の建物。
菁桐礦業生活館の展示壁。石底炭鉱一帯を写した大きな航空写真のパネルに、菁桐や各鉱区の名称と解説文が書き込まれている。
菁桐礦業生活館の展示壁。石底炭鉱一帯を写した大きな航空写真のパネルに、菁桐や各鉱区の名称と解説文が書き込まれている。
菁桐礦業生活館の展示室内部。赤茶色の壁と照明の下、鉱山の歴史写真パネルやガラスケース、木製の展示台が円形に配置されている。
菁桐礦業生活館の展示室内部。赤茶色の壁と照明の下、鉱山の歴史写真パネルやガラスケース、木製の展示台が円形に配置されている。
菁桐駅に展示された古い荷物用の台車と重り。車輪付きの錆びた鉄製台車や、円盤状の分銅を積んだ計量器具が、白壁・赤煉瓦の駅舎軒下に並べて置かれている。
菁桐駅に展示された古い荷物用の台車と重り。車輪付きの錆びた鉄製台車や、円盤状の分銅を積んだ計量器具が、白壁・赤煉瓦の駅舎軒下に並べて置かれている。

駅の軒下には、古い荷物用の台車や分銅を積んだ計量器具も無造作に並べてあって、駅そのものが小さな鉱山博物館のようになっている。

菁桐駅一帯を見下ろす眺め。緑に覆われた屋根の家屋や商店の間を線路が緩やかに曲がりながら延び、山々に囲まれた谷あいの町並みが広がる。手前に木製の欄干。
菁桐駅一帯を見下ろす眺め。緑に覆われた屋根の家屋や商店の間を線路が緩やかに曲がりながら延び、山々に囲まれた谷あいの町並みが広がる。手前に木製の欄干。
平溪線のホームに停車する観光列車。空色の車体に鳥や町並み、平溪ランタンなどのイラストが描かれた列車が発着し、乗客がホームで待つ。背後は山の緑。
平溪線のホームに停車する観光列車。空色の車体に鳥や町並み、平溪ランタンなどのイラストが描かれた列車が発着し、乗客がホームで待つ。背後は山の緑。

駅ホームに戻ると、空色の車体に鳥や町並み、天燈のイラストが描かれた次の便が停まっていた。菁桐を後にして、1駅戻る平溪へ。

③平溪|赤い天灯と老街の大腸包小腸

菁桐から1駅戻って平溪駅へ。平溪線の路線名の由来になった街で、平溪区の中心地でもある。菁桐のような産業遺構というよりは、老街の賑わいと山あいの生活感が同居しているのが印象的な駅。街のあちこちに赤い天灯を模した装飾が下がっていて、旧暦正月の「平溪天燈祭」で有名な街だと一目でわかる。

  • 駅名: 平溪(Pingxi)
  • 路線: 平溪線(菁桐から1駅、瑞芳から約50分)
  • 見どころ: 平溪老街、赤い天灯装飾、屋台の大腸包小腸
  • 滞在時間目安: 30〜40分(次の便まで)

線路脇の老街

平溪(Pingxi)駅の緑白の駅名標。「菁桐 Jingtong」「嶺腳 Lingjiao」への案内が記され、右に緑ラッピングの列車、椰子の木が立つ。
平溪(Pingxi)駅の緑白の駅名標。「菁桐 Jingtong」「嶺腳 Lingjiao」への案内が記され、右に緑ラッピングの列車、椰子の木が立つ。
「平溪車站」と縦書きで刻まれた石造の駅舎入口。灰色の御影石の柱と黒枠の窓、緑に囲まれた落ち着いたたたずまいの駅。
「平溪車站」と縦書きで刻まれた石造の駅舎入口。灰色の御影石の柱と黒枠の窓、緑に囲まれた落ち着いたたたずまいの駅。

平溪駅は石造の入口が緑に囲まれた重厚な佇まいの駅舎。菁桐の木造・観光地感とはガラッと雰囲気が変わる。平溪の老街は線路のすぐ横に商店が軒を連ね、いかにも台湾の田舎町という空気感。

平溪の商店街に沿った線路。片側に軒を連ねる土産物店や飲食店、バイクが停まり、砂利の線路がゆるやかに奥へ延びる。
平溪の商店街に沿った線路。片側に軒を連ねる土産物店や飲食店、バイクが停まり、砂利の線路がゆるやかに奥へ延びる。
建物に挟まれた小川の眺め。左右に古びた集合住宅がせり出し、ベランダに洗濯物や物が並ぶ。谷底に浅い水が流れ、奥に緑の山。
建物に挟まれた小川の眺め。左右に古びた集合住宅がせり出し、ベランダに洗濯物や物が並ぶ。谷底に浅い水が流れ、奥に緑の山。
平溪の坂道。赤い天灯を模した飾りが並ぶ柵沿いに家並みが続き、バイクや人影が見える。背後に緑濃い山が迫る山里の路地。
平溪の坂道。赤い天灯を模した飾りが並ぶ柵沿いに家並みが続き、バイクや人影が見える。背後に緑濃い山が迫る山里の路地。

建物に挟まれた小川の眺めや、両側からせり出した集合住宅の風景も、田舎町ならではの生活感が滲む。天灯装飾の付いた柵沿いの坂道を、バイクや地元の人が普通に行き交っているのがいい。

老街の大腸包小腸

昼食は、線路脇に煙突を立てた青看板の「鐵道熱腸」で並んで大腸包小腸を購入。「大腸」は焼いたもち米ソーセージ、「小腸」は台湾風の豚肉ソーセージのことで、もち米ソーセージを縦に切り開き、そこに豚のソーセージを挟み込んだ台湾式ホットドッグだ。

かじると、まずもち米のもちもちした食感と、外側の香ばしい焦げ目。そこに豚の脂の甘みが乗り、しっかり効いた炭火の香りが追いかけてくる。噂には聞いていたが、生ニンニクのスライスがゴロっと入っていたのは驚き。一気にパンチが増して、屋台のB級グルメらしい満足感がある。

平溪老街の屋台で買った「大腸包小腸」。焼いたもち米の腸詰めに台湾式ソーセージを挟んだB級グルメを紙で包んで手に持つ。背後の屋台には値段付きのメニュー写真が並び、通りには人が行き交う。
平溪老街の屋台で買った「大腸包小腸」。焼いたもち米の腸詰めに台湾式ソーセージを挟んだB級グルメを紙で包んで手に持つ。背後の屋台には値段付きのメニュー写真が並び、通りには人が行き交う。
平溪の屋台街の角。青い看板の「鐵道熱腸」ソーセージ店の煙突から煙が上がり、「平溪車站」への緑の案内標識が立つ。客が集まる。
平溪の屋台街の角。青い看板の「鐵道熱腸」ソーセージ店の煙突から煙が上がり、「平溪車站」への緑の案内標識が立つ。客が集まる。
平溪駅の線路脇に停車する橙とグレーの列車。「天燈」の横断幕が下がる屋根の下、線路沿いの土産物店の前を観光客が歩く。
平溪駅の線路脇に停車する橙とグレーの列車。「天燈」の横断幕が下がる屋根の下、線路沿いの土産物店の前を観光客が歩く。

食べ終わって満足したところで、平溪駅に戻って次の便に乗り込む。

④十分|線路と街が一体の観光地

平溪から2駅で十分(Shifen)。SNSでよく見る「線路の上を歩ける街」といえばまさにここで、平溪線の中でも圧倒的な観光地。天灯上げ体験と線路と老街の一体感が名物で、菁桐や平溪と比べても人の密度が段違いに濃い。

  • 駅名: 十分(Shifen)
  • 路線: 平溪線(平溪から2駅、瑞芳から約40分)
  • 見どころ: 線路と一体の老街、天灯上げ体験、仙草奶凍アイス
  • 滞在時間目安: 60分

線路と街が一体

十分老街は、線路の両側に商店・屋台がぎっしり軒を連ねるという他ではあまり見ない風景。列車が来ない時間帯は、観光客が線路の上を自由に歩き回り、記念撮影をしたり天灯を掲げたりしている。しかも実際に列車が通る現役の路線なので、警笛が近づいてきたら店側にサッと退避するというスリルまで込みで観光の一部になっている。

十分(Shifen)駅の緑白の駅名標。天灯を掲げる人物のイラスト付きで、「望古 Wanggu」「大華 Dahua」への案内。水色の服の団体客が写る。
十分(Shifen)駅の緑白の駅名標。天灯を掲げる人物のイラスト付きで、「望古 Wanggu」「大華 Dahua」への案内。水色の服の団体客が写る。
十分車站の赤煉瓦の駅舎正面。「十分車站 Shifen Station」の看板を掲げ、軒下に大勢の観光客が集まる。左にホームと山並みが見える。
十分車站の赤煉瓦の駅舎正面。「十分車站 Shifen Station」の看板を掲げ、軒下に大勢の観光客が集まる。左にホームと山並みが見える。
十分老街の賑わい。「牛軋糖 Nougat」「花生糖 Peanut Candy」の看板の下、線路脇の緑の柵の前で観光客が写真を撮っている。
十分老街の賑わい。「牛軋糖 Nougat」「花生糖 Peanut Candy」の看板の下、線路脇の緑の柵の前で観光客が写真を撮っている。
線路がまっすぐ通る十分老街。両側に古い商店が軒を連ね、緑の柵の間を人々が歩く。曇り空の下に山並みが遠く見える。
線路がまっすぐ通る十分老街。両側に古い商店が軒を連ね、緑の柵の間を人々が歩く。曇り空の下に山並みが遠く見える。
線路に顔を近づけた低い視点の一枚。砂利の間を延びる二本のレールの先に、緑の柵と土産物店、行き交う観光客が写る十分老街。
線路に顔を近づけた低い視点の一枚。砂利の間を延びる二本のレールの先に、緑の柵と土産物店、行き交う観光客が写る十分老街。

老街の一角には天灯(スカイランタン)上げの店がずらりと並ぶ。街のあちこちに色ごとの意味を書いた看板があり、赤は健康、黄は金運、青は仕事、緑は開運……といった具合。単色なら1個200元、複数色を組み合わせると250〜300元くらいで、願い事を書いて実際に空へ飛ばせる。今回は自分では上げなかったが、街を彩る赤い天灯装飾と、次々と空に登っていく色とりどりの天灯を眺めているだけでも十分楽しい。

列車が来ない間は天灯上げと撮影タイム、警笛が鳴ったら線路から一斉に退避——というリズムを繰り返しながら、線路上の老街を進んでいく。

十分老街の線路と商店。奥に橙の列車が停まり、緑の柵沿いに宅配便のバイクや歩く人。「Viet Nam Quan」の看板が右手にある。
十分老街の線路と商店。奥に橙の列車が停まり、緑の柵沿いに宅配便のバイクや歩く人。「Viet Nam Quan」の看板が右手にある。
十分老街の中心部。大きな樹木のそばの線路脇で、若い観光客が記念撮影をし、両側に土産物店が軒を連ねる賑やかな通り。
十分老街の中心部。大きな樹木のそばの線路脇で、若い観光客が記念撮影をし、両側に土産物店が軒を連ねる賑やかな通り。
十分の路地の屋台街。「黑」の看板やかき氷「剉冰」の幟が並ぶ細い通りを、黄色い傘を差した団体客が列をなして進む。
十分の路地の屋台街。「黑」の看板やかき氷「剉冰」の幟が並ぶ細い通りを、黄色い傘を差した団体客が列をなして進む。

暑さの中を一通り老街を歩き切り、全家(ファミリーマート)で仙草奶凍(仙草ゼリー入りのミルクアイスバー)を買って涼む。こう暑いと、冷たければ何でも美味い。仙草の淡いほろ苦さと練乳寄りのミルクの甘さが噛み合って、コンビニアイスの水準を軽く超えてくる。

手に持った「仙草奶凍」グラスジェリーミルクのアイスバー。パッケージに商品写真が印刷され、背後にリュックの人と店先がぼやける。
手に持った「仙草奶凍」グラスジェリーミルクのアイスバー。パッケージに商品写真が印刷され、背後にリュックの人と店先がぼやける。
色鮮やかな廟の一角。屋根の軒下に龍の装飾、壁面に人物を描いたレリーフ、赤い柱と石獅子が並ぶ。右に自動販売機が置かれている。
色鮮やかな廟の一角。屋根の軒下に龍の装飾、壁面に人物を描いたレリーフ、赤い柱と石獅子が並ぶ。右に自動販売機が置かれている。

駅に戻る途中で立ち寄った街角の廟にも龍や石獅子の装飾がにぎやかで、平溪線の各駅ごとに色が違うのを改めて感じる。賑やかな十分を”充分”に楽しんで、いよいよ最後の秘境駅へ。

⑤三貂嶺|孤島の秘境駅

十分から瑞芳方面へ戻る途中、三貂嶺(Sandiaoling)で下車。ここは平溪線が宜蘭線から分岐する接続駅で、駅まで車道が通じておらず、線路沿いの歩道を歩くか列車で来る以外に到達手段がない、台湾でも指折りの秘境駅として知られている。

  • 駅名: 三貂嶺(Sandiaoling)
  • 路線: 宜蘭線(平溪線の分岐駅、瑞芳から2駅)
  • 見どころ: 秘境駅の雰囲気、基隆河の渓谷と鉄道橋、廃線遺構と自転車専用トンネル「三貂嶺生態隧道」
  • 滞在時間目安: 40〜60分

秘境駅の雰囲気

三貂嶺は駅前に道路も駅前広場もなく、改札を出るとすぐ渓流と鉄道橋、線路脇の細い歩道、そして時々現れる廃墟が広がる。何よりも、宜蘭線と平溪線をひっきりなしに走り抜けていく列車を、線路のすぐ脇から間近で眺められるのが鉄道ファンにはたまらない。

高架橋の下を通る線路とホーム。太いコンクリートの橋脚の陰で、数人が線路脇に立って写真を撮る。壁面が苔で緑がかっている。
高架橋の下を通る線路とホーム。太いコンクリートの橋脚の陰で、数人が線路脇に立って写真を撮る。壁面が苔で緑がかっている。
三貂嶺(Sandiaoling)站の駅舎。「三貂嶺車站 Sandiaoling Station」の看板を掲げた簡素な建物の前に、鉢植えや観光客が写る山あいの駅。
三貂嶺(Sandiaoling)站の駅舎。「三貂嶺車站 Sandiaoling Station」の看板を掲げた簡素な建物の前に、鉢植えや観光客が写る山あいの駅。
金網フェンス越しに見た走行中の橙とグレーの列車。緑濃い山肌を背に、複線の線路をカーブして通過する電車を捉えた一枚。
金網フェンス越しに見た走行中の橙とグレーの列車。緑濃い山肌を背に、複線の線路をカーブして通過する電車を捉えた一枚。
金網越しに見た白い特急型列車。オレンジの帯を巻いた車両が緑の山を背に線路を走り、右奥に信号機と歩道が見える。
金網越しに見た白い特急型列車。オレンジの帯を巻いた車両が緑の山を背に線路を走り、右奥に信号機と歩道が見える。

金網の向こうを橙とグレーの区間車や、オレンジ帯の特急型が次々と通過していく。

渓谷に架かる橋と山里の家並み。左手に緑の斜面と川、右に鉄橋、正面にトンネルの坑口が見える。深い緑に囲まれた三貂嶺付近の風景。
渓谷に架かる橋と山里の家並み。左手に緑の斜面と川、右に鉄橋、正面にトンネルの坑口が見える。深い緑に囲まれた三貂嶺付近の風景。
線路脇の歩道に立つ鉄道信号機。赤いランプが点灯し、金網フェンス越しに単線の線路が緑の山へ延びる。青空が広がる。
線路脇の歩道に立つ鉄道信号機。赤いランプが点灯し、金網フェンス越しに単線の線路が緑の山へ延びる。青空が広がる。
高い位置から見た鉄道橋と山里。橋が谷を渡り、左手に川と古い建物、遠くまで緑の山が続く。手前に注意書きの標柱が立つ。
高い位置から見た鉄道橋と山里。橋が谷を渡り、左手に川と古い建物、遠くまで緑の山が続く。手前に注意書きの標柱が立つ。

渓谷に架かる鉄橋、トンネルの坑口、線路脇にぽつんと立つ鉄道信号機。深い緑に囲まれた三貂嶺付近は、まさに秘境というほかない。去年、環島で自転車を走らせながら基隆河の対岸から眺めていたあの風景の中を、今度は自分が歩いているというのは、なんとも不思議な感覚だ。

線路脇に停車する黄色い顔の列車。カフェの赤いパラソルとテーブルが右手に並び、緑の山を背にしたのどかな山あいの駅風景。
線路脇に停車する黄色い顔の列車。カフェの赤いパラソルとテーブルが右手に並び、緑の山を背にしたのどかな山あいの駅風景。

線路を通過していく黄色い顔の列車と、赤いパラソルが並ぶカフェのテラス席。人の少ない秘境駅なのに、山あいのカフェだけがのどかな時間を刻んでいる。ここで散策を切り上げ、折り返して駅へ戻る。

ホームの雰囲気

三貂嶺駅そのものは、高架下のスペースに低いホームがあるだけの簡素な作り。自動改札には「刷卡進站 TAP IN」の案内、そして横に「尚未開放進站(まだホーム開放していません)」の貼り紙。ホームがとにかく狭いため、停車する列車の直前にならないと改札を通してもらえない仕組みらしい。安全側に振り切った運用が、逆にこの駅らしくて面白い。

コンクリートの高架下ホームに入線する青と橙の臺鐵列車。「往40 Exit」の黄色い案内が下がり、右に制服の駅員が立つ。
コンクリートの高架下ホームに入線する青と橙の臺鐵列車。「往40 Exit」の黄色い案内が下がり、右に制服の駅員が立つ。
駅の自動改札機と「刷卡進站 TAP IN」の案内。「尚未開放進站」の貼り紙があり、まだ開放前の様子。壁に路線図が掲示されている。
駅の自動改札機と「刷卡進站 TAP IN」の案内。「尚未開放進站」の貼り紙があり、まだ開放前の様子。壁に路線図が掲示されている。
高架下ホームに進入する白い特急型列車。流線形の先頭部が近づき、右に制服の駅員が立つ。コンクリートの薄暗いホーム。
高架下ホームに進入する白い特急型列車。流線形の先頭部が近づき、右に制服の駅員が立つ。コンクリートの薄暗いホーム。
低いホームから線路を渡る乗客たち。リュックを背負った人々が古いコンクリートの構造物の脇を歩き、右へ線路が延びる駅構内。
低いホームから線路を渡る乗客たち。リュックを背負った人々が古いコンクリートの構造物の脇を歩き、右へ線路が延びる駅構内。
三貂嶺駅の「2月台 Platform」と駅名標。瑞芳・台北・猴硐方面の案内が記され、頭上の番線表示とともに撮られた駅の案内標識。
三貂嶺駅の「2月台 Platform」と駅名標。瑞芳・台北・猴硐方面の案内が記され、頭上の番線表示とともに撮られた駅の案内標識。
三貂嶺駅の薄暗いホームに停車する橙の旧型列車。右手のコンクリート柱に「三貂嶺」と大書され、複線の線路が奥へ延びる。
三貂嶺駅の薄暗いホームに停車する橙の旧型列車。右手のコンクリート柱に「三貂嶺」と大書され、複線の線路が奥へ延びる。

薄暗いホームに橙の列車がゆっくり入線してきたので、改札を抜けてホームへ出て、瑞芳方面の車両に乗り込む。

台北への帰路と冰讃のマンゴーかき氷

三貂嶺から瑞芳経由で台北へ戻る。ちょっと時間があったので、瑞芳駅の北口にも出てみた。こちら側にも瑞芳老街があるらしいが、実際歩いてみると古い低層家屋と数階建てビルが密集しているだけで、どこが老街の”見せ場”なのかいまいち掴めなかった。地元の生活動線という意味では、こちらのほうが濃いのかもしれない。

瑞芳駅の出入口付近。改札へ続く階段のある駅舎入口の脇に、青い海や鳥を描いた壁画と石灯籠が置かれ、古い建物に挟まれた通路になっている。
瑞芳駅の出入口付近。改札へ続く階段のある駅舎入口の脇に、青い海や鳥を描いた壁画と石灯籠が置かれ、古い建物に挟まれた通路になっている。
瑞芳老街の街角。赤いタイルや看板の古い低層家屋と数階建てのビルが交差点を囲み、「OK」コンビニの看板やバイク、黄色い区画線の車道が見える。
瑞芳老街の街角。赤いタイルや看板の古い低層家屋と数階建てのビルが交差点を囲み、「OK」コンビニの看板やバイク、黄色い区画線の車道が見える。
瑞芳駅の改札口(剪票口)。天井から吊るされた列車発車案内の電光掲示板が並び、その下に自動改札機やホームへ続く通路がある。壁に時刻表が掲示されている。
瑞芳駅の改札口(剪票口)。天井から吊るされた列車発車案内の電光掲示板が並び、その下に自動改札機やホームへ続く通路がある。壁に時刻表が掲示されている。
駅ホームに入線する青と白の臺鐵通勤電車。手前に待つ乗客の後ろ姿があり、複線の線路と緑の屋根のホーム、遠くの街並みが見える。
駅ホームに入線する青と白の臺鐵通勤電車。手前に待つ乗客の後ろ姿があり、複線の線路と緑の屋根のホーム、遠くの街並みが見える。

台北方面の臺鐵通勤電車に乗り込み、瑞芳を後にする。

冰讃で芒果雪花冰

18時ごろ台北に戻り、雙連にある冰讚(ピンザン、Bing Zan)へ。台湾でマンゴーかき氷といえばここという定番の名店で、日本人観光客に大人気の店。というか、店内はほぼ日本人しかいない。

  • 店名: 冰讚(Bing Zan)
  • 所在地: 台北市大同区雙連街2號
  • アクセス: MRT淡水信義線「雙連駅」1番出口から徒歩約3分
  • 営業時間: 4月〜10月頃のマンゴーシーズン限定、11:00〜21:00頃(売り切れ次第終了)
  • 看板メニュー: 芒果雪花冰(マンゴーかき氷、200元)
  • 支払: 現金のみ
台北の街角のかき氷店「冰讚」。青い看板に「芒果冰・雪花冰」と書かれ、店先に大勢の客が行列する。手前に黄色いタクシーが停まる。
台北の街角のかき氷店「冰讚」。青い看板に「芒果冰・雪花冰」と書かれ、店先に大勢の客が行列する。手前に黄色いタクシーが停まる。

青い看板に「芒果冰・雪花冰」と書かれた店先には、いつも通りの行列。手前には黄色いタクシーが停まる、いかにも台北の街角らしい風景だ。この日は10分ほど並んで席に着けた。

看板メニューの芒果雪花冰(200元)は、マンゴー味に練られた雪花冰の削り氷を土台に、角切りの完熟マンゴーがこれでもかと山盛りに乗り、練乳がとろりとかけられた一皿。雪花冰は口に入れた瞬間ふわっと溶け、マンゴーの果汁と一体化して喉を滑り落ちていく。乗っているマンゴーがどれも完熟のはずれなしで、甘みと酸味のバランスが絶妙。日本のかき氷とは別ジャンルのスイーツだと感じる、想像を軽く超えてくる旨さだった。

白い皿に盛られた芒果雪花冰。ふわふわの削り氷の上に大ぶりの黄色いマンゴーが山盛りにされ、果汁がとろりとかかる。スプーンが添えられる。
白い皿に盛られた芒果雪花冰。ふわふわの削り氷の上に大ぶりの黄色いマンゴーが山盛りにされ、果汁がとろりとかかる。スプーンが添えられる。

7月の台湾はマンゴーが最盛期。マンゴーの季節に台北を訪れるなら、この店は絶対に外せない。1日中平溪線を乗り継いだ疲れも、この一皿でだいたい帳消しになった。

まとめ:平溪線1日で乗り鉄と観光を両立

平溪深澳線一日周遊券を使えば、120元(約600円)で1日中乗り放題。海側ホームの八斗子から炭鉱遺構の菁桐、天灯の十分、秘境駅の三貂嶺まで、タイプの違う5駅を1日で巡れる充実コースだった。

この記事のポイント:

  • 平溪深澳線一日周遊券は大人120元、5駅で下車するなら間違いなくお得
  • 平溪線は1時間に約1本、紙の時刻表で折り返し便を必ず確認
  • ①八斗子は海側ホーム、②菁桐は炭鉱遺構、③平溪は老街、④十分は線路と天灯、⑤三貂嶺は秘境駅
  • 猴硐(猫村)は環島Day 11で訪問済みなので今回は通過
  • 台北に戻ってのマンゴーかき氷「冰讃」はマンゴーシーズンなら食べる価値あり

台北近郊で乗り鉄しようとしたら、観光スポットも一緒に巡れるこのコースを強くおすすめしたい。

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