赤石岳、荒川岳に向かうまで
日本百名山の中でも赤石岳と荒川岳の二座への一般的なアプローチは、特殊東海フォレストという私企業が運営している山小屋やバスに頼ることになる。そのため、この二座はふらっと気軽に登れる山ではなく、登る前に特殊東海フォレストのサイト等をよく調べて、決められたルールに従う必要がある。
9月14日からの土日と敬老の日の三連休を利用して、なかなか行きづらい南アルプス奥地の二座を踏破すべく計画を立てた。
2019年9月13日 夕方から静岡オクシズ畑薙第一ダム駐車場へ前日入り
13日の金曜日は午後休をとって、夕方に家を出発した。小田急線の栢山駅(小田原市)まで電車で行き、そこからレンタカーを借りる。都内からレンタカーを借りるよりも、渋滞に巻き込まれる心配がないので早いし私鉄は料金が安いため、結果的にリーズナブルという算段だ。
20時前にレンタカーを借りてからひたすら下道で静岡市まで行き、そこから国道362号で千頭まで、そして県道77号・388号で大井川鉄道と並走しながら井川まで、県道60号で畑薙第一ダム夏期臨時駐車場に着いた。

途中で通過した長島ダム。なかなかの存在感である。
畑薙第一ダム夏期臨時駐車場に到着したのは日付を越えた1時過ぎ。三連休の初日ということもあり、既に駐車場はいっぱいだった。約6時間の運転で疲れて、そのまま車中泊で仮眠をとる。
2019年9月14日 赤石岳と荒川岳への一泊二日周回登山へ

周りが騒がしくなった5時半ごろに起きる。

朝食を済ませてトイレに向かうと、バス停には既に長蛇の列ができていた。始発は7:30のはずだったが、この登山客をさばくため予定より早くピストン輸送で運んでいるようだ。というわけで、急いで列に並んだ。

列に並んで2時間余り、5台目か6台目のバスでようやく乗車。6時から並んだのに、予定よりも1時間遅れという誤算。乗車時には、泊まる予定の宿泊小屋を聞かれ、3,000円の前金を支払う。

林道は悪路にも関わらず、容赦ないスピードでバスが駆け抜けるため、揺れる揺れる。バスの最後列だったため空中浮遊を幾度も経験した。椹島の少し前、赤石沢橋のあたりでクッキリと赤石岳が車窓から望めた。

椹島に到着。ちょうど1時間の行程だった。
実際に登ってみた
日程: 2019年9月14日(土) ~ 2019年9月15日(日) [1泊2日] 天候: 2日間とも快晴
アクセス
【往路】
[車] 静岡市街地からは国道362号で千頭まで、県道77号・388号で大井川鉄道と並走しながら井川まで、県道60号で畑薙第一ダム夏期臨時駐車場へ。
[特種東海フォレスト 送迎バス] 畑薙第一ダム夏期臨時駐車場 8:12 → 9:14 椹島ロッジ (7:30出発のバスに乗るつもりだったが、6時からバス乗り場の列に並んで、5番目くらいのバスにようやく乗車できた。乗り込み時に宿泊施設の聞き取りと前金3000円を支払う。)
送迎バス時刻表 https://www.t-forest.com/alpsinfo/bus/timetable/
【復路】
[特種東海フォレスト 送迎バス] 椹島ロッジ 10:30 → 11:30 畑薙第一ダム夏期臨時駐車場 (椹島のレストハウスで宿泊小屋の領収書を提示し、受付券をもらう。)
[車] 往路とは違い井川で東に向かう別ルート、県道60号・189号・27号で静岡市街地へ。
静岡市街地から井川間のアクセスだが、両ルートともにカーブや道が狭い区間が多く難路だった。どちらかというと多少遠回りになるが大井川鉄道と並走するルートのほうが、アップダウンも少なくすれ違いできる道幅があるのでマシだと思った。所要時間は大差ないかと。
地図・標高グラフ
⏱タイム | 🏃距離 | ↗登り | ↘下り |
---|---|---|---|
10:58 | 25.9km | 2,952m | 2,970m |
コースタイム
1日目
ルート: 椹島-赤石小屋-赤石岳-大聖寺平-荒川小屋[泊]
- 09:21
- 10:20
- 11:36
- 12:07
- 12:38
- 13:20
- 13:39
- 13:57
- 14:08
- 14:17
- 14:38
- 14:58

食事付きの宿泊者と素泊まりは違う小屋とのこと。設備の差はそれなりにあるが、雨風をしのげて横になれるだけでもありがたい。


水場に向かう途中にウメバチソウ。清楚で美しい花だ。


夕景が綺麗だというので外に出てみると、見事なグラデーションと雲海に挟まれる富士山が。これは今日一番の絶景かもしれない。

素泊まり組は18時を過ぎて暗くなっていくと、消灯を待たずに就寝。与えられた毛布ではちょっと寒く、ダウンジャケットを毛布と体の間に挟んでしのいだ。
2日目
ルート: 荒川小屋-中岳-悪沢岳-千枚岳-千枚小屋-椹島
- 03:39
- 04:13
- 04:34
- 04:38
- 05:17悪沢岳
荒川東岳(悪沢岳)頂上 荒川東岳(悪沢岳)頂上へ到達。まだ、太陽は顔を出していない、ギリギリ間に合った!
悪沢岳頂上 太陽の反対側には月が浮かんでいる。実に幻想的な光景だ。
悪沢岳からのパノラマ 悪沢岳からのパノラマ 悪沢岳から北側の眺望 悪沢岳から北側の眺望。中央から右にかけて仙丈岳、手前に塩見岳、遠くに甲斐駒ヶ岳、間ノ岳・北岳。南アルプスの峰々が連なる壮大な光景である。
悪沢岳からの眺望 悪沢岳のご来光 太陽が地平線を割って出てきた。一気にまばゆくなる。そして、赤い太陽に照らされて一面が真っ赤に染まった。これほど美しい御来光は滅多にお目にかかれない。早起きした甲斐があったというものだ。
悪沢岳の影 薄く消えつつある月と、雲に投影された悪沢岳(?)の影。こういう自然現象を目にすると、山に登る醍醐味を感じる。
イワツメクサ 十分に御来光を堪能し、東岳から千枚岳へと下りる。
- 05:50
- 06:13
- 06:32
- 06:46駒鳥池駐車場
- 06:51
- 07:15見晴岩
- 07:20
- 08:11
- 09:10
- 09:19

バスで駐車場へ帰ってきた。相変わらず車でいっぱいだ。
大井川鐵道井川駅

東京へ帰る途中で井川駅に寄った。以前に井川線を鉄道で乗り潰した時は、災害の影響で井川駅まで不通となっていたが、今はこうしてアプト式列車が来ていることに感動。
行きと違って、帰りは県道60号・189号・27号を経由して静岡市街地へ行くルートを選択。こちらのほうが、距離は短いように思えたが狭い難路が続いて結構な険道だった。
下山後の感想
まだ未踏の日本百名山で、アクセスが容易にできるところは少なくなってきて、ちゃんとした計画が必要になってきた。そんな中、三連休で良い天気という予報だったので、日帰りでは行きづらい南アルプスの奥地へ。
椹島へ向かうバスで大行列ができて、1時間も予定より遅れたのは計算外ではあったが、過ごしやすい季節で快適に登ることができ、遅れを挽回して荒川小屋に着けた。翌朝、本当は6時くらいに起きて、14時半のバスに乗って帰ればいいと計画していた。しかし、素泊まり組の全員が早出ということに引きずられ、思いがけない御来光に巡り会い、時間に余裕のある登山となって、結果的に大満足だった。
コース状況・危険箇所等
【椹島~赤石小屋】 ずっと登りだが歩きやすい道。
【北沢源頭~赤石岳】 日差しを遮ることもできないキツイ急登区間。
【赤石岳~荒川小屋~荒川中岳】 稜線を外れたトラバース。谷の内側となるため、日没後は暗くなるのも早いと思う。
【荒川中岳~東岳】 中岳を過ぎるとヤセ尾根となるので慎重に。東岳は岩場あり。
【千枚岳~椹島】 ゆったりとした下り道が続き、とても歩きやすい。椹島の手前で、岩場の登りがあったり、急坂があったりするので最後まで気を抜かないように。
かかった費用と装備
交通費用
- 電車: 小田急線運賃 1,810円
- レンタカー: 48時間使用 7,600円
- ガソリン: 往復分 3,501円
交通費合計: 12,911円
宿泊費用
- 荒川小屋: 素泊まり 6,100円
宿泊費合計: 6,100円
食費・その他
- 食費: 朝昼晩2日分 4,000円
- 行動食: 2日分 600円
食費合計: 4,600円
総費用
合計: 23,611円
今になって思うこと
今となっては、2019年に登っておいてよかったとつくづく思う。この次のシーズン2020年から2021年には新型コロナウイルスの影響で、東海フォレストは山小屋の運営を休止していてバスも当然運行停止。南アルプスの山々に行くのにハードルが高くなってしまった。
2022年の夏山シーズンから3年ぶりに営業を再開したのだが、9月28日から台風の影響で林道が通れなくなり、まだ厳しい状況は続いているようだ。このような制約のある山域だからこそ、行けるタイミングで確実に行っておくことの重要性を痛感する。