日本百名山全山踏破 91座目 トムラウシ山 | 夏のお花畑と残雪の短縮コース日帰り登山

トムラウシ山頂 日本百名山
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トムラウシ山に向かうまで

幌尻岳でその雄大さに圧倒されてから2日後、北海道遠征の第3の舞台となるトムラウシ山への挑戦が待っていた。前日は疲労回復を兼ねて観光を楽しみ、体調も万全に整った状態で、念願のトムラウシ山に向かう準備が整った。

トムラウシ山といえば、登山者なら誰もが知る2009年の遭難事故の舞台となった山だ。羽根田治さんの著書やトムラウシ山遭難事故調査報告書も事前に熟読し、この山の気象条件の厳しさや地形の特性についても十分に理解していたつもりだった。そうした背景もあって、今回は最も安全性の高い短縮コースを選択することにした。

2021年7月24日 短縮コース登山口からトムラウシ山へピストン登山

朝の出発時刻を考慮し、道の駅しかおいで前泊。早朝からのアクセスに備えて車内泊の準備も整え、北海道での百名山制覇に向けた重要な一歩となるこの登山への期待も高まっていた。

道の駅しかおいから朝4時前に出発し、トムラウシ温泉を経由して短縮コース登山口へ向かった。早朝の山間部は濃い朝靄に包まれ、視界が100メートル先も不明瞭な状況で、安全運転を心がけながら慎重に進んだ。

トムラウシ温泉を過ぎてからの短縮コース登山口までのダート道は、想像以上に険しい道のりだった。これまで皇海山や祖母山などでも相当なダート道を経験してきたが、この短縮コース登山口へのアプローチは勾配と路面状況の両面で最も困難な部類に入る。凹凸の激しい路面と急勾配が続き、車への負担も相当なものだった。

実際に登ってみた

日程: 2021年7月24日(土) 日帰り 天候: 晴れ

アクセス

短縮コース登山口までのダート道は勾配がある上に登山口直前には凹凸もあるので、割と気を使う。

地図・標高グラフ

⏱タイム🏃距離↗登り↘下り
07:2716.9km1,498m1,496m

コースタイム

ルート: 短縮登山口-トムラウシ公園-トムラウシ山-トムラウシ公園-短縮登山口

山行タイムライン
  • 05:21
    短縮登山口
    トムラウシ短縮コース登山口の駐車場
    トムラウシ短縮コース登山口の駐車場

    到着してみると駐車場はほぼ満車状態。さすが人気の山だけあって、早朝にも関わらず多くの登山者が既に出発の準備を整えていた。幸運にも登山口近くの絶好の場所に駐車することができ、ちょうど出発された方がいたタイミングだったのかもしれない。

    トムラウシ短縮コース登山口
    トムラウシ短縮コース登山口

    登山口から歩き始めた序盤は平坦で歩きやすい道が続く。

  • 05:35
    温泉コース分岐
    温泉コース分岐
    温泉コース分岐
    温泉コース分岐付近の森林帯の登山道

    温泉コース分岐を過ぎると、ようやく本格的な登山道の雰囲気となってきた。それでも整備が行き届いており、歩行に支障をきたすような箇所は全くない。

  • 06:06
    カムイ天上
    カムイ天上
    カムイ天上
    カムイ天上から続く木道
    木道

    この区間からは丁寧に整備された木道が設置されている。雨天時には泥濘が深刻になるらしく、登山道保護と安全性確保の両面から木道の設置が進められているようだ。

    カムイ天上周辺のチングルマの可憐な白い花
    チングルマ

    カムイ天上の周辺では早くもチングルマの美しいお花畑が迎えてくれた。

    カムイ天上からコマドリ沢方面への下り斜面の登山道

    コマドリ沢まで70mほど下る。

    コマドリ沢周辺の湿地帯に咲くシナノキンバイの黄色い花
    シナノキンバイ
  • 07:02
    コマドリ沢出合
    コマドリ沢分岐の道標
    コマドリ沢分岐
    コマドリ沢分岐付近の7月下旬でも残る残雪斜面
    残雪

    コマドリ沢分岐から登り始めると、7月下旬にも関わらず残雪が現れ始める。猛暑の中での登山においては、この涼しげな雪の存在が心身ともに救いとなった。

    コマドリ沢上部の残雪斜面

    残雪区間ではアイゼンなしでも歩行に支障はないが、安定性を考慮すればアイゼンがあったほうが安心感は高い。雪質は部分的に腐っており、踏み抜きには注意が必要だった。

    前トム平への途中のゴーロ帯
    ゴーロ

    ゴーロ帯のトラバース区間。

  • 07:44
    前トム平
    前トム平の開けた平坦地
    前トム平

    前トム平に到達すると、小ピークを越えてトムラウシ公園への最終アプローチが始まる。

    前トム平からトムラウシ山本峰の山頂部を望む展望
    トムラウシ山

    前トム平からは、ついにトムラウシ山の頂上部が明確に視認できるようになった。

    前トム平周辺のヨツバシオガマの紫色の花
    ヨツバシオガマ
  • 08:19
    トムラウシ公園
    トムラウシ公園
    トムラウシ公園

    トムラウシ公園に到達した瞬間、その名に恥じない壮大なお花畑が視界いっぱいに広がった。「公園」という名称が決して誇張ではないことを実感する、息をのむような美しさだった。

    トムラウシ公園のゲンノショウコの白い小さな花
    ゲンノショウコ
    トムラウシ公園のエゾヒメクワガタの青紫色の花
    エゾヒメクワガタ
    トムラウシ公園のチングルマの群落と白い花絨毯
    チングルマ
    トムラウシ公園のコマクサの淡いピンク色の花
    コマクサ

    ゲンノショウコ、エゾヒメクワガタ、チングルマ、コマクサと、高山植物の代表格が一堂に会している。これほど多様で豊富な花々を一度に観察できる機会は稀で、まさに天然の植物園といった印象だった。

    トムラウシ公園から南沼方面への緩やかな登山道
  • 08:50
    南沼キャンプ指定地
    南沼の神秘的なクリームソーダ色の湖面
    南沼

    振り返ってみると南沼の湖面がまるでクリームソーダのような幻想的な色合いを呈していた。この独特の色彩は、湖底の成分や光の反射によるものかもしれないが、一度見たら忘れられない印象的な光景だった。

    南沼キャンプ指定地からトムラウシ山山頂への最終登り
    南沼キャンプ指定地からトムラウシ山山頂への岩稜帯
  • 09:15
    トムラウシ山
    トムラウシ山山頂(2,141m)
    トムラウシ山
    トムラウシ山頂
    トムラウシ山頂

    トムラウシ山の山頂に立つことができた。91座目という百名山完走へのカウントダウンが進む中、この瞬間の達成感は格別だった。到着とほぼ同時にガスが上がってきて視界は限定的となったが、それでも充分な満足感に包まれていた。

    トムラウシ山山頂からの雲海に包まれた周辺山岳展望
    トムラウシ山からの眺め
    トムラウシ山からの眺め
    トムラウシ山からの眺め
    トムラウシ山からの眺め
    トムラウシ山からの眺め
    トムラウシ山からの眺め
    トムラウシ山からの眺め
    トムラウシ山頂
    トムラウシ山頂
    トムラウシ山頂
    トムラウシ山頂
    トムラウシ山山頂周辺のイワブクロの紫色の高山植物
    イワブクロ
  • 10:05
    南沼キャンプ指定地
  • 10:28
    トムラウシ公園
  • 10:50
    前トム平
    下山時の残雪斜面
    残雪

    下山時の残雪歩きでは、片足ずつ慎重に体重をかけながら滑りを防いだ。結果的には踏み跡のしっかりした部分を歩くのが最も効率的で安全だった。

  • 11:14
    コマドリ沢出合
  • 12:09
    カムイ天上

  • 12:35
    温泉コース分岐
  • 12:48
    短縮登山口

ぶた丼のとん田で帯広名物の豚丼

ぶた丼のとん田の外観と帯広名物豚丼の名店
ぶた丼のとん田

下山後は帯広市内に移動し、登山中ずっと楽しみにしていた豚丼を求めて「ぶた丼のとん田」へ向かった。土曜日の昼時ということもあり、相当な待ち時間が予想される状況だった。

ロース・バラ盛り合わせオリジナルぶた丼
ロース・バラ盛り合わせオリジナルぶた丼

約1時間の待ち時間を経て、ようやく注文したロース・バラ盛り合わせオリジナルぶた丼。これほど待たされた分だけ期待も高まり、実際の味わいも期待を裏切らない素晴らしさだった。

帯広競馬場のばんえい競馬

帯広競馬場の正面ゲート
帯広競馬場

食欲を満たしたので、続いてはギャンブルへ。

ちょうど開催されていたばんえい競馬を観戦するため帯広競馬場へ向かった。

  • 帯広競馬場
  • 帯広競馬場
  • 帯広競馬場
  • ばんえい競馬
  • ばんえい競馬
  • ばんえい競馬
  • ばんえい競馬
  • ばんえい競馬
  • 馬の資料館
  • 馬の資料館
  • 馬の資料館

ばんえい競馬は通常の競馬とは全く異なる独特の魅力があった。馬が走った後に舞い上がる砂埃が観客席まで届くほど競技と観客の距離が近く、しかも馬の走行速度が遅いため歩いて並走できるほどで、一体感あふれる観戦体験だった。まるで子どもの徒競走を見守るような微笑ましい感覚もあり、他では味わえない競馬体験だった。

しかし、ビギナーズラックというものは存在せず、結果的に帯広市への納税という形で貢献することとなった。明日は士幌線の廃線跡を巡りながら旭川市まで移動し、北海道百名山遠征の最終章となる旭岳への挑戦が控えている。

下山後の感想

遠征旅4日目。トムラウシ山登山は、北海道での百名山遠征において最も印象的な体験の一つとなった。登山そのものの魅力はもちろんだが、それ以外の要素も含めて充実した一日だった。

短縮コースは名前の通り効率的なルートで、登山口までのアクセスは困難だったものの、登山道自体は非常によく整備されており安全性も高い。雪渓の存在が猛暑の中での登山において清涼感をもたらしてくれたのは予想外の恩恵だった。

トムラウシ公園の広大なお花畑は期待を大きく上回る素晴らしさで、多種多様な高山植物を一度に観察できる貴重な体験となった。南沼のクリームソーダのような独特の色合いも、この山ならではの特別な記憶として残っている。

かかった費用と装備

費用は、今回の遠征の中で最初の日本百名山 十勝岳の記事でまとめています。

今になって思うこと

トムラウシ山は2009年の大量遭難事故の現場として、登山界において特別な意味を持つ山だ。百名山を完走した現在振り返っても、この山での安全管理に対する意識の重要性を改めて実感している。

羽根田治さんの著書「トムラウシ山遭難はなぜ起きたのか」や遭難事故調査報告書を事前に熟読していたことで、登山中も随所で当時の状況を思い浮かべながら歩を進めていた。特にトムラウシ山周辺のすり鉢状の地形は、悪天候時には風の流れや気温変化が急激になりやすく、いったん天候が悪化すれば脱出が困難になる地形的特徴を肌で感じることができた。

短縮コースを選択したのは正解だった。アクセスの困難さはあるものの、登山道の安全性と所要時間の両面で、単独日帰り登山には最適なルートだった。今後この山を登る人には、無理をせず最も安全性の高いルートを選択することを強く推奨したい。


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