忙しい人向けまとめ
- 台風26号接近で休養日を決断:昨日の壽卡峠越え119kmで満身創痍の体を回復させる。雨は止んでいたが、宣言通りオフに
- 台東グルメを堪能:朝食に台湾の定番・蛋餅、昼食に台東名物の米苔目、デザートに剉冰と、ここぞとばかりに食べ歩き
- 台風ニュースで花蓮の橋崩壊を知る:明後日走る予定のルートにある馬太鞍渓橋が台風で壊された。迂回路の存在を確認し、明日の出発を決意
Day 7 レポート
環島7日目。自転車に乗らない日。
久しぶりの充足した睡眠から目が覚めて窓の外を見ると、昨日まで激しく降っていた雨が止んでいた。これなら出発してもよかったなと思うが、せっかく休むと決めたのだから宣言通りオフにする。
台東の朝:蛋餅と水煎包を求めて(08:36)
朝ごはんを食べに外へ出た。1階でフロントの人に挨拶し、「台風来てるから今日も泊まりたい、2泊分を払う。部屋のクリーニングは要らない」と日本語をGoogle翻訳で繁体字にしたスマホを見せると「OK」とのこと。2泊分で1,170NTD(約5,850円)を現金で支払った。


朝の持て余した時間で、台東の観光スポットやオススメの店などをGoogleマップで保存しておいた。途中、朝市のフルーツなどを見ながら、その一つである「秒殺水煎包」という水煎包のお店へ。名前が素敵だ。
水煎包は、小ぶりの肉まんを鉄鍋で蒸し焼きにしたもの。底がカリッと焼けていて中はジューシー。台東の名物でもあるらしい。

しかし、残念ながらお店は開いてない。
近くの「瑞麟美又美」に入って蛋餅とオレンジジュースを注文した。蛋餅は台湾の朝ごはんの超定番で、小麦粉ともち粉の薄い生地を焼いて、卵を乗せてくるっと巻いたもの。店によってパリパリだったりもちもちだったりする。

目の前のキッチンで手早く調理してくれる。すぐにお皿が運ばれてきたが、思ったより量が少ない。朝食をしっかり食べたいタイプなので、これだけで満足するとは思えない。

いざ食べると、味は美味しい。作りたてだから美味しい。蛋餅とよくわからない肉片とオレンジジュースで90NTD(約450円)。朝食としてはちょっと高いかな。全然お腹が膨れないし。

台東散歩:クレーンゲームとアーケード(09:14)
あとはすることもないので散歩。台湾式クレーンゲームの店に入ってみた。


台湾では「夾娃娃機」と呼ばれていて、街中にコンビニ並みの密度で専門店がある。1回10元(約50円)と激安で、景品もぬいぐるみだけじゃなく日用品やお菓子まで入っている。
なるほど、これが噂に聞く台湾のUFOキャッチャーか。しかし、誰も客はいない。この後もいろんなところで台湾式クレーンゲームの店を見かけたが、全然人がいない。営業が成り立つのか疑問だ。

台湾の街を歩いていると、建物の1階部分がくり抜かれていて、2階が張り出す形の半屋外の歩道がある。「亭仔脚」と呼ばれる台湾独特のアーケードで、日本統治時代に設置が義務付けられて全土に広まったそうだ。雨の日は便利だが、場所によって地面に凹凸があって躓いたりするので注意が必要。


旧台東駅にも寄ってみた。現在の台東駅は市街地から離れた内陸部に移転しており、旧駅は2001年に廃止された。跡地は鉄道芸術村として生まれ変わったらしいが、なんだか工事中のようで、仮囲い越しに駅名板がかろうじて見えた。

あとは目ぼしい観光スポットもないので、大人しくホテルに戻った。
台湾からリモートワーク(10:00頃〜)
ホテルに戻ってからは、今まで蔑ろにしていた仕事に取り掛かる。
この台湾環島の旅行だが、有給休暇を取ったものではない。リモートワークで台湾から仕事をしながらの旅、という形になっている。この旅に出る前の3ヶ月間で頑張って1つのプロダクトを開発して、そのレビューを他の人にお願いしてきた。多少余裕ができた隙間を使って調整の上、会社に行かせてもらったという経緯だ。
一週間近くは自転車で忙しく、メールやチャットの対応くらいしかできなかったので、まとまった時間が取れた今、レビューで上がっていたカンバンのカードを解決していく。
「ワーケーションをとる」と周囲には言っていたが、厳密にはワーケーションではないのかな。ワーケーションは「Work+Vacation」の造語で、観光地でリモートワークしながら休暇も楽しむ働き方のことだが、僕の場合は仕事しながら移動もしている。
この仕事のためにわざわざノートPCを持ってきている。ThinkPad X1 Carbon という比較的軽くて堅牢なPCだが、パニアバッグに入れて自転車の振動に耐えられるかは少し心配ではあった。今考えるとタブレットPCでもよかったかも。
でも、ノートPCのUSB-Cから給電ができるので、どでかいモバイルバッテリーとしてiPhoneを充電するのには助かった。
台東名物・米苔目と剉冰(13:00)
一仕事を終えて、お昼ご飯を食べにまた外に出る。雨は降ったり止んだりを繰り返している。


途中、台湾のゴミ収集車に遭遇。「乙女の祈り」を大音量で流しながら巡回してくるのが台湾スタイル。日本のような固定のゴミ集積所がなく、音楽が聞こえたら住民がゴミ袋を持って走り出て、収集車に直接投げ入れる方式だ。台湾人はこの曲が鳴ると、ゴミを出したくて疼くようにDNAに刻まれているんではなかろうか。
今日のお昼ご飯は、米苔目(ミータイムー)が美味しいという情報を旅行ブログで仕入れたので、「榕樹下米苔目」というお店まで歩いた。

注文方法がよくわからないので、注文する人をよく観察してから列に並んだ。

米苔目は米粉で作った太めの麺で、その上にたっぷり盛られた鰹節が湯気と一緒にふわっと香る。見た目からして食欲をそそる。
どれどれと麺をすする。出汁の旨味が口いっぱいに広がって、「あ、これ日本人が絶対好きなやつだ」と一発でわかった。鰹出汁のやさしい味わいに、つるっともちっとした麺が絡む。讃岐うどんの出汁で食べるベトナムのフォー、と言えば伝わるだろうか。シンプルなのに箸が止まらない。
さっぱりしてて健康的だし、毎日食べても飽きない。これで60NTD(約300円)は文句のつけようがない。トリドールは米線じゃなくて、こっちの専門店を日本で展開すべきだと本気で思った。
満足した帰りに、かき氷屋「阿桑挫冰」があったのでデザートとして立ち寄る。

剉冰は台湾の伝統的なかき氷。日本のかき氷と違って氷は脇役で、甘く煮た豆類やタピオカ、ゼリーなどトッピングが山盛りにのってくるのが特徴だ。
おばあちゃんが、いろいろ具材をトッピングしてくれてかき氷をかけてくれる。具材が何が何だかわかっていないが、食感が楽しくて美味しい。路上で食べるのが、台湾の街に馴染んでる感じがして満足感が高まる。50NTD(約250円)。

宿に戻って、お仕事再開。ひさしぶりにリモートビルド作業していたので、時間がかかる。
臭豆腐チャレンジ失敗と台風ニュース(18:00)
いつしか夜になり、昨日のような雨がまた降り出していた。

土砂降りの中、臭豆腐屋に行こうと歩いた。臭豆腐を食べるという勇気を出して、まずは初心者にやさしいカリカリに揚げた臭豆腐からチャレンジするんだという道筋を立てて、いざ食べるぞとお店まで来たのに、開いてない。
仕方ないので、近くのセブンイレブンで「奮起湖秘製雙拼」という弁当とグレープフルーツティーといういつものスタイル。


宿に戻って台風のニュースを見ていると、床上浸水の様子や、ライブカメラで現在の状況が報道されていた。中国語はよくわからないが、字幕を見ていると、どうやら学校や仕事を休みにするかを行政が発表する仕組みがあるらしい。「停班停課」と呼ばれる、台風の多い台湾ならではのシステマティックな制度なのだろう。
明日の計画:台風から逃げるように北上(21:00頃)

現在、台風26号は台湾の西南にあり、明日の夕方には上陸するらしい。その上陸予想地点は、一昨日に泊まった屏東のあたり。昨日、自分が走ったルートを台風は明日走るらしい。フォンウォンがんばれー。

明日の天気予報を見ると朝は雨だが、午後からは晴れ。雨に濡れるのは嫌だが、2日連続で休むのも嫌なので、出発することにしよう。西からやってくる台風から追われ、逃げるような形で北上することになる。
ふと、ニュース記事を見ていると、花蓮の南にある台9線の橋(馬太鞍渓橋)が壊されたという記事があった。明後日あたりに予定していたルートであり、場合によっては大幅に遠回りを強いられるかもしれない。

花蓮県のFacebookや台湾の通行止め情報を見ると、幸いなことに迂回路があるようだ(ただし峠越えとなる)。
それにしても、花蓮は災害ばかりだ。去年4月の花蓮地震では何人もの人が亡くなり、太魯閣渓谷は崩壊して無期限閉鎖になった。完全復旧には時間がかかり、行ってみたかった太魯閣は当面お預け。
そして、つい2ヶ月前の9月には台風18号の大雨でせき止め湖が決壊し、土石流が流れ込る大災害が起きている(今回の雨で橋が壊された地域)。
今日1日の休養で、枯渇していた体力と気力は大幅に回復した。天気も悪いから明日も気持ち良いサイクリングができるわけではないが、これまで毎日自転車で走ることが普通になっていたので、すぐにでもこの先に進みたいという気持ちが大きくなっていた。
コラム:台湾の災害
台風のニュースを宿で見ていて、改めて台湾は災害の多い場所なのだと実感した。今回の旅の最中にも台風26号が直撃し、花蓮では橋が壊されるなど被害が出ている。サイクリストとして台湾を走るなら、災害リスクは知っておいて損はない。
台湾はなぜ災害が多いのか
台湾はユーラシアプレートとフィリピン海プレートがぶつかる境界上にあり、いわゆる環太平洋火山帯の一部。このプレートの衝突によって台湾の山々が隆起し、同時に地震が頻発している。体に感じない微小な地震を含めると、平均して1日に1回は揺れているそうだ。
加えて、台風シーズン(6〜10月)にはフィリピン沖で発生した台風が勢力を維持したまま上陸してくる。急峻な山地に大量の雨が降り注ぐため、土砂災害も起きやすい。地震と台風のダブルパンチ、これが台湾の宿命だ。
| 災害の種類 | 特徴 |
|---|---|
| 地震 | プレート境界上に位置、有感地震は年2〜3回程度 |
| 台風 | 6〜10月がシーズン(ピークは7〜9月) |
| 土砂災害 | 急峻な地形+大雨で斜面崩壊・土石流が頻発 |
| 洪水 | せき止め湖の決壊による二次災害リスクも |
最近の大きな災害と太魯閣渓谷
2024年4月の花蓮地震(M7.2)は、1999年の集集地震以来25年ぶりの大規模地震だった。18人が亡くなり、花蓮市内ではビルが傾く被害も出た。
最も大きな影響を受けたのが太魯閣渓谷だ。園内で1,000箇所以上が崩壊し、無期限閉鎖に。完全復旧には約7年を要する見込みで、渓谷の核心部(太魯閣〜天祥間の峡谷区間)は依然として立ち入りできない。燕子口や九曲洞といった人気スポットは当分お預けだ。僕自身、この地震がきっかけで当時計画していた台湾環島を取りやめた経緯がある。
そして、この旅のわずか2ヶ月前の2025年9月には、台風18号の大雨でせき止め湖が決壊し、花蓮県光復郷に土石流が流れ込む大災害が起きた。14人以上が犠牲になっている。
花蓮は台湾で最も美しい場所の一つだが、同時に最も災害リスクの高い場所でもある。
停班停課:台湾独自の台風休日制度
台湾には「停班停課」という独自の制度がある。「停止上班(出勤停止)+停止上課(授業停止)」の略で、台風が来ると行政が学校も会社も休みにするというものだ。
各県・市の首長が、風速や雨量の基準をもとに前日の夜10時30分までに判断を下す。テレビやSNSで発表され、台湾人はこの発表を待つのが台風シーズンの風物詩になっている。地域ごとに判断されるため、「台北は休みだけど新北は通常通り」なんてこともあるらしい。
今回の旅で、台風ニュースの字幕を追いながらこの制度を知った。日本にも同じような仕組みがあればいいのにと思ったが、台湾ほど台風が直撃する頻度が高くないからこそ、制度化されているのだろう。
サイクリストにとっての災害リスク
環島サイクリストにとって最も怖いのは、道路の寸断だ。特に東海岸の台9線は南北をつなぐほぼ唯一の幹線道路。この1本が止まると文字通り陸の孤島になる。
実際、今回の台風で花蓮南の馬太鞍渓橋が壊された。僕の予定ルート上にある橋だったので肝を冷やしたが、幸い迂回路(峠越え)があるようだった。花蓮の北にある蘇花公路も「台湾で最も危険な道路」の一つとして知られ、落石や崩壊が頻発している。
実際に台風に遭遇して思ったこと
今回、台風の中を自転車で走るという無謀な体験をしたわけだが、振り返ると「情報さえあれば、なんとかなる」というのが正直な感想だ。
宿でiPhoneから台風の進路を追い、通行止め情報を花蓮県のFacebookで確認し、迂回ルートの目処を立てられた。台湾は災害が多い分、情報発信も手厚い。停班停課の発表はSNSでリアルタイムに流れてくるし、「DPIP」という防災アプリは日本語にも対応していて地震速報がすぐ届く。
思い返すと、今日は秒殺水煎包も臭豆腐屋も閉まっていた。台風の影響で臨時休業していた店が多かったのかもしれない。食事はコンビニがあるので困らなかったが、台湾のローカルグルメを楽しみたいなら、台風の日はあまり期待しないほうがいい。
台湾の人たちは台風に慣れていて、淡々と備えて、過ぎ去ったらすぐ日常に戻る。旅行者もその空気に合わせて、怖がりすぎず、でも甘く見ず。壽卡峠の暴風雨で身に染みて学んだことだ。
Day 7 まとめ
走行データ
この日は休養日のため走行なし。自転車は宿の2階に置きっぱなし。
費用まとめ(Day 7)
この日の出費は合計で929NTD(約4,645円)。
内訳は以下の通り:
- コンビニ(夕食の弁当・飲み物など):144NTD(約720円)
- 朝食(瑞麟美又美:蛋餅+オレンジジュース):90NTD(約450円)
- 昼食(榕樹下米苔目:米苔目):60NTD(約300円)
- デザート(阿桑挫冰:剉冰):50NTD(約250円)
- 宿泊(Tiin Tinn Inn ドミトリー 2泊目):585NTD(約2,925円)
合計:約4,645円
1NTD(ニュー台湾ドル)は約5円で計算している。
7日目の感想と教訓
良かった点
- 休養日の判断は正しかった。体力と気力が大幅に回復した
- 台東の米苔目が絶品。日本人が絶対好きな味
- リモートワークで溜まっていた仕事を消化できた
- 台風情報を事前に確認し、迂回ルートの目処を立てられた
反省点
- 行きたかったお店が閉まっていた。台風の影響で臨時休業する店が多いのかも
- 台東(旧台東駅周辺)は1日散歩するには少し物足りない(半日で十分だった)
体調面
昨日の壽卡峠越えの疲労は相当なもので、朝起きたときはまだ体のあちこちが痛かった。1日の休養で完全回復。明日からの後半戦に向けて、できる限り体を休めた。
次回予告
Day 8は台風から逃げるように台東を出発し、北上を再開する。
朝は雨の中のスタートになりそうだが、午後から晴れの予報。花蓮南の橋が壊されたニュースが気になるが、迂回路はあるようだ。台風一過の東海岸を走る後半戦が始まる。
次回、「Day 8:台東→池上」に続く。



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