薬師岳、水晶岳、鷲羽岳、黒部五郎岳に向かうまで
北アルプス最深部にある日本百名山4座をどう攻略するか?
9月のシルバーウィークは4連休。コロナ禍ではあるが、この機会に普段は行けない北アルプス最深部にある薬師岳、水晶岳、鷲羽岳、黒部五郎岳の4座を一気に踏破する計画を考えた。
まず初めに、富山までのバスを8月初旬のうちに予約、最初はウィラーで予約していたが運休するという連絡があり、千栄交通で予約し直し。コロナ禍の影響もあるのだろうか往復で5,000円。心配になるくらい安い。
北アルプス最深部へのアクセスは、富山駅から直通バスで行ける折立の登山口を利用する。薬師岳と水晶岳までは分岐からちょっとしたピストンがあるものの、4座を一番効率よく周回できそうだ。
次に、折立を起点とした周回プランを考える。
- プランA:折立→雲ノ平[泊]→水晶岳→鷲羽岳→黒部五郎岳→薬師峠[泊]→薬師岳→折立
- プランB:折立→薬師岳→薬師峠[泊]→雲ノ平→水晶岳→鷲羽岳→黒部五郎小舎[泊]→黒部五郎岳→折立
薬師岳ピストンを最初に行くか最後に行くかで検討した上の2つのプラン。 プランAの最初のテント場である雲ノ平キャンプ場は予約が必要とのことなので、初日(19日)の予約を入れる。4連休の初日なので空きがないだろうと思いきや、初日に雲ノ平まで来れる人は限られるようで空いていた。即予約。
最後に、折立までのアクセスとなるバスを調べて、富山駅から折立までのスケジュールを埋める。 しかし、ここで今年は富山駅から折立までの直通バスが運行しないという衝撃の事実を知る。 そのバスが無いとなると、折立に到着するのはお昼ごろになってしまい、その日のうちに雲ノ平まで行くのは厳しすぎる。 仕方なくプランBに変更。雲ノ平キャンプ場の予約は泣く泣くキャンセルした。
その後、計画確認としてスケジュールを9月初めに見直した。その時に、黒部五郎小舎のテント場も今年から予約が必要になったと知る。そして、電話するも既に満員とのこと。オワタ。
- プランC:折立→薬師岳→薬師峠[泊]→雲ノ平→水晶岳→鷲羽岳→三俣山荘[泊]→黒部五郎岳→折立
黒部五郎小舎の手前にある三俣山荘(テント場の予約必要なし)に泊まるので最終日の行程が2時間くらい増えて、最悪折立から帰りのバスに乗れなくなる可能性もあるけど、このプランCしかないかな……
行く直前に、ダメ元で黒部五郎小舎に問い合わせると、キャンセルがでたので予約できるとのこと。 プランBに変更。よし、行くぞ。
2020年9月19日 折立から日本百名山4座に登るテント泊雲ノ平周回

いつ見ても工事をしている印象の富山駅に到着。そろそろ最終形態になるんだろうか。
今年は直通バスが運行していないため、電鉄富山駅から有峰口駅まで富山地方鉄道で移動し、そこから折立行きのバスに乗り換える必要がある。
富山地鉄乗換駅の岩峅寺駅。富山地鉄の駅はどこも哀愁あってエモい。

有峰口駅に到着。ここでバスに乗り換える。

有峰口駅から折立までは、土日祝日のみ1日2本しかないバスの最終便。今年は富山駅前からの直行便が運休している。予約が必要なのはその直行便だと思って予約せずに来たが、現場で予約優先と判明。乗車席数40名に対して予約者33名、未予約者は6名でギリギリセーフだった。
実際に登ってみた
日程:2020年9月19日(土) ~ 2020年9月21日(月) [2泊3日] 天候:【1日目】曇りのち晴れ【2日目】高曇り【3日目】曇りのち快晴
アクセス
【往路復路とも】
[電車] 電鉄富山駅~有峰口駅
[バス] 有峰口駅前~折立
今年度は富山駅から折立への直行便が運休。有峰口駅前から折立へのバスは予約優先で、繁忙日には事前予約が必要。自分は予約できることを知らずに現地に向かったが、予約者でほぼ満車のバスにギリギリ乗ることができた(座席数40人中、33人が予約者で6人が予約なし)。バス内はマスク着用、私語も控えるようアナウンスされた。
地図・標高グラフ
⏱タイム | 🏃距離 | ↗登り | ↘下り |
---|---|---|---|
24:24 | 54.4km | 4,400m | 4,373m |
コースタイム
1日目
ルート: 折立-太郎平小屋-薬師峠-薬師岳-薬師峠[泊]
- 11:10
- 11:41
- 12:04
- 12:12
- 12:53
- 13:07
- 13:27
- 14:19
- 14:57
- 15:25
- 15:52
- 16:06
- 16:20薬師岳避難小屋跡
- 16:35薬師岳山荘
- 16:53薬師平
- 17:10
薬師峠キャンプ場の夕焼け

テント場から見る日の入りがエモい。明日も晴れるといいな。
2日目
ルート: 薬師峠-太郎平小屋-薬師沢-雲ノ平-祖父岳-ワリモ北分岐-水晶岳-ワリモ北分岐-ワリモ岳-鷲羽岳-三俣山荘-黒部五郎小舎[泊]
- 05:16
- 05:32
- 06:03
- 06:07
- 06:20第三徒渉点
- 06:46
- 06:53
- 08:21
- 08:42
- 09:01
- 09:55
- 10:22
- 10:53岩苔乗越
- 11:05
- 11:37
- 12:07
- 12:39水晶小屋
- 13:16
- 13:32
- 14:03
- 14:53
- 15:45三俣蓮華岳巻道分岐
- 16:23
3日目
ルート: 黒部五郎小舎-黒部五郎の肩-黒部五郎岳-黒部五郎の肩-赤木岳-北ノ俣岳-太郎平小屋-折立
- 04:25
- 06:02
- 06:09
- 06:24
- 07:22
- 08:07赤木岳
- 08:34
- 08:39
- 09:24
- 09:30太郎平小屋
- 09:48太郎兵衛平
- 10:00五光岩ベンチ
- 10:29積雪深計測ポール
- 10:34青淵三角点
- 10:49太郎坂
- 11:14十三重之塔 慰霊碑
立山サンダーバードで熊肉のおにぎりを食べる

下山後に有峰口駅から2駅先の横江駅で下車。

以前から気になっていた、立山サンダーバードというコンビニへ。

クマ肉、シカ肉、イノシシ肉といった奇抜なおにぎりが並ぶ。

せっかくなのでクマ肉をチョイス。

噛みごたえがあるけど、醤油味で美味しいお肉でした。
富山駅に戻り、高岡駅から東京に帰る

高岡駅の隣に、”高岡やぶなみ駅”という新駅が2018年に開業した。駅メモで全駅アクセスをしている自分としては、せっかく富山県まで来たので見逃すわけにはいかない。あいの風とやま鉄道に乗って高岡へ。

高岡駅からは、高速バスに乗って新宿へ帰った。
下山後の感想
コース状況・危険箇所等
折立~太郎平小屋: 登りが続くが、全体的に歩きやすい道程。丹沢の塔ノ岳「バカ尾根」にも通じる、ひたすら登る感覚がある。青淵三角点を過ぎると勾配は緩やかになり、視界が開けて展望が広がる。
薬師峠~薬師岳: 序盤に沢沿いの岩場を登るが、水濡れの心配はない。全体を通して危険箇所は特になく、避難小屋のある稜線に出ると途端に風が強まり、寒さを感じた。
太郎平小屋~雲ノ平: 木道が多く敷かれ、滑りにくい加工が施されているため安心して歩ける。薬師沢小屋の橋を渡った先で一度川岸に降り、そこから雲ノ平へ向かう急登が始まる。
雲ノ平~ワリモ北分岐: 祖父岳付近のトラバース道は、道が荒れて狭くなっている箇所もあるため、足元の踏み外しには注意が必要である。
ワリモ北分岐~水晶岳: 水晶小屋までは非常に歩きやすい登山道が続くが、水晶岳が近づくと岩場となる。
ワリモ北分岐~鷲羽岳~三俣山荘: ワリモ岳ではロープが設置されたトラバースがあるが、ロープはやや頼りなく感じられたため、しっかりと支持を確認しながら進んだ。鷲羽岳から三俣山荘へは急坂が続く。
三俣山荘~黒部五郎小舎: 巻道であるためトラバースを想像していたが、実際にはかなりの登りがあった。黒部五郎小舎への下りも急峻である。
黒部五郎小舎~黒部五郎岳: 黒部五郎のカールは道迷いの注意が必要な場所であり、実際にカールの中心方向へ誘い込まれてしまった。黒部五郎岳の山頂は険しく見えるが、カールルートの分岐からであれば危険な箇所はなかった。
黒部五郎岳~北ノ俣岳~太郎平小屋: 黒部五郎岳直下のルートは急で、付け替えられたのか地図上の道とは一部異なっていた。北ノ俣岳まではアップダウンがあり、そこからは太郎平小屋までひたすら緩やかな下りとなる。
感想・記録
下山後、有峰口駅から電鉄富山駅へ戻る途中、駅近のコンビニと温浴施設を利用するため途中下車した。
温浴施設「満天の湯」 (http://www.manten-yu.co.jp/toyama/) 不二越駅から徒歩2分の場所にあるスーパー銭湯で、入口でザックを置かせてもらうことができた。特にマッサージ機能付きのジェットバスが充実しており、疲れた体を癒すのに最適であった。
コンビニ「立山サンダーバード」 (https://www.instagram.com/tateyama.thunderbird/) 横江駅から徒歩5分の立地にある、クマ肉や鹿肉を使ったユニークなおにぎりや、美味しいサンドイッチで知られる有名なコンビニだ。
かかった費用と装備
交通費用
- 電車: 2,994円
- 高速バス 新宿→富山駅: 2,300円
- 高速バス 高岡駅→新宿: 2,700円
- 有峰口駅→折立 往復: 5,000円
交通費合計: 12,994円
宿泊費用
- 薬師峠キャンプ場(テント泊): 1,000円
- 黒部五郎小舎(テント泊): 1,000円
宿泊費合計: 2,000円
食費・その他
- 朝昼晩(3日分): 6,000円
- 行動食(3日分): 900円
- 風呂: 750円
食費合計: 7,650円
総費用
合計: 22,644円
今になって思うこと
高速バスの運休、直通バスの運行中止、そしてテント場への事前予約必須化。この山行は、まさにコロナ禍の影響を色濃く受けるものとなった。
計画段階では混乱の連続であったが、いざ実行に移すと、秋晴れに恵まれた素晴らしい山行となり、これまでの苦労はすべて尊い思い出へと昇華された。
しかし、一般的には4泊5日を要するルートを2泊3日で一気に駆け抜けたため、行程に余裕がなかったのは確かである。
次は、日本一遠い温泉と称される高天原温泉を訪れ、心ゆくまでゆったりとした登山を楽しみたいと願っている。