北アルプス後立山連峰の唐松岳。八方尾根から続く登山道は、北アルプス入門コースとして人気が高い。あおい、楓、ほのかの3人が冬季に挑戦し、強風により登頂を断念した思い出の山。夏は高山植物の宝庫、八方池の絶景など、初心者から上級者まで楽しめる魅力的な山岳ルートです。
基本情報
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 山名 | 唐松岳(からまつだけ) |
| 標高 | 2,696m |
| 所在地 | 長野県白馬村・富山県黒部市 |
| 難易度 | ★★★☆☆(夏季)/ ★★★★★(冬季) |
| 推奨シーズン | 7月~10月(冬季は雪山経験者のみ) |
| 所要時間 | 1泊2日推奨(日帰り可能だが厳しい) |
| 登山スタイル | 山小屋泊・稜線縦走 |
ヤマノススメでの描写
原作での登場シーン
【六十七合目】《雪山、山小屋泊》《登頂断念》八方尾根スキー場~八方池山荘~唐松岳
- メンバー: あおい、楓、ほのか
- アクセス: 高崎駅→〈ほのか兄の車で上信越自動車道経由〉→八方尾根スキー場→八方駅→〈八方ゴンドラリフトアダム〉→兎平(この先2本のリフトで八方池山荘まで行けるが、強風でリフトが運行停止)
- コース: 八方尾根スキー場 兎平→黒菱平→八方池山荘(1,830m)(山小屋泊)→[第2ケルン~八方池~第3ケルン~丸山(2,420m)→唐松岳(2,696m)](八方池山荘から1時間歩いた所で唐松岳への登頂を断念)
あらすじ
【六十七合目 挑戦! 冬の北アルプス】小春にアイゼンを借り、ほのか兄の車で八方尾根スキー場へ(ほのか兄は友人とスキー)。リフトが強風で止まっているため、スキー場をアイゼンで登る。その日は八方池山荘で宿泊。次の日は朝から強風で停滞、風が治まったお昼前に出発するも唐松岳までは断念し引き返す。
ヤマノススメ単行本10巻に収録されています
ルート地図
聖地巡礼のポイント
- 八方池山荘: 宿泊地点
- 第2~第3ケルン: 石積みの道標
- 丸山: 唐松岳への中継点
アクセス・登山情報
アクセス方法
ゴンドラ・リフト利用で効率的にアクセス。
電車でのアクセス
- JR大糸線「白馬駅」下車
- 白馬駅から路線バスで八方バスターミナルへ(約5分)
- 徒歩でゴンドラ駅へ(約10分)
車でのアクセス
- 長野道「安曇野IC」から約1時間
- 上信越道「長野IC」から約1時間
- 八方尾根駐車場利用(有料)
ゴンドラ・リフト
- 八方ゴンドラリフト「アダム」
- グラートクワッドリフト
- 黒菱第3リフト
- 合計で標高1,830mまで
登山ルート
標準ルート(夏季) 八方池山荘→第1ケルン→八方池→第2ケルン→第3ケルン→扇雪渓→丸山→唐松岳頂上山荘→唐松岳
主要ポイント間の時間
- 八方池山荘~八方池:50分
- 八方池~第3ケルン:30分
- 第3ケルン~丸山:1時間
- 丸山~唐松岳頂上山荘:1時間
- 唐松岳頂上山荘~唐松岳:20分
装備と準備
標高が高く天候変化が激しいため要注意。
夏季装備
- 登山靴
- 防寒着(夏でも必須)
- 雨具
- 帽子・サングラス
- 日焼け止め
- 行動食・水分
冬季装備(追加)
- アイゼン(12本爪)
- ピッケル
- 冬山用防寒着
- ゴーグル
- 手袋(予備含む)
- ビーコン・プローブ・シャベル
八方尾根~唐松岳の魅力
鏡のような湖面に映る白馬三山「八方池」
八方尾根を語る上で欠かせないのが、標高2,060mに位置する「八方池」です。ここはまさに、北アルプスの美しさを凝縮した天然の鏡。風のない穏やかな朝には、白馬三山の猛々しい姿がコバルトブルーの水面に逆さに映り込み、息を呑むような絶景を作り出します。登山の疲れを忘れさせてくれるこの景色は、北アルプスデビューのハイカーに贈られる最高のご褒美です。
空へと続く、花と光の「天空の尾根歩き」
ゴンドラを降りた瞬間から始まるのは、四方を名峰に囲まれた開放感あふれる稜線歩きです。夏にはハッポウウスユキソウやコマクサといった高山植物が咲き乱れ、足元を彩ります。標高を上げるにつれ、後立山連峰の主役たちが次々と姿を現すダイナミックな光景は、まさに天空の散歩道。視界を遮るもののない広大な尾根を進む快感は、標高2,600m超の世界へと足を踏み入れた実感を与えてくれます。
剱岳と対峙する、迫力の「唐松岳頂上」
最後の急登を越え、唐松岳頂上山荘のテント場を抜けて辿り着く山頂。そこには、谷を隔てて眼前にそびえる「剱岳」の圧倒的な岩壁が待っています。鋭く切り立った剱岳と立山連峰が、夕日に染まる姿や雲海に浮かぶ様は、まさに北アルプスの中心に立っているという特別な感動を呼ぶでしょう。初心者でもこのスケール感を味わえるのが唐松岳の最大の魅力であり、多くのハイカーが「また戻ってきたい」と願う理由でもあります。
実際の巡礼記録
日程: 2018年7月24日[日帰り]
コースタイム:八方池山荘 07:08→07:26 第2ケルン→07:30 八方ケルン→07:37 第三ケルン→08:06 扇雪渓 08:08→08:19 丸山 08:20→08:49 唐松岳頂上山荘 08:52→09:05 唐松岳 09:13→09:21 唐松岳頂上山荘→09:25 牛首 09:26→10:00 大黒岳→10:36 白岳→10:40 五竜山荘 10:44→11:37 五竜岳 11:56→12:23 五竜山荘→12:27 遠見尾根分岐 12:28→13:05 西遠見山→13:31 大遠見山→13:54 中遠見山→14:07 小遠見山→14:43 地蔵の頭→15:00 白馬五竜アルプス平
ルート地図
巡礼レポート
緻密な計画と白馬駅からの出発
『ヤマノススメ』に登場した唐松岳へ行く計画を以前から立てていましたが、せっかくなので五竜岳も合わせて日帰りで行けるか、計画を立ててみました。
八方のゴンドラ始発が6:30なので、スタート地点の八方池山荘には7:00頃。東京まで鈍行で帰ってこられる神城駅の最終が16:46。逆算すると、ゴール地点のアルプス平には16:15くらいには着いていないと完全にアウトです。
標準コースタイムは12時間20分なので、0.7倍くらいのスピードが必要です。マイルストーンを9:30に唐松岳頂上山荘、11:30に五竜山荘と設定し、もし間に合わなかったら五竜岳は諦めるプランで行くことにしました。

白馬駅からバス、ゴンドラ、リフトで八方尾根へ
「ムーンライト信州(現在は定期運行がなくなりました)」の終点、白馬駅。駅から見てロータリー左側には北アルプス総合案内所があり、早朝にもかかわらず開いていました。予めゴンドラのチケットを購入しておこうと思いましたが、片道のチケットは販売していないとのことで、残念。


白馬駅から乗った路線バスは、5分ほどで白馬八方BT(バスターミナル)に到着しました。バスターミナルからドアトゥドアでゴンドラ駅に行けると勘違いしていましたが、実際は10分ほど歩く必要があります。

八方駅ではザックの重さを計測(15kg未満なら追加料金なし)して片道チケットを購入。ゴンドラの運行開始は6:30。待機列でしばらく待ちます。流れはスムーズで、運行開始から5分ほどで乗車できました。


八方ゴンドラリフト アダムの乗車時間は8分。

続いてアルペンクワッドリフトで兎平から黒菱平へ。リフト直下には、足が触れるような高さで草花が咲いていました。


黒菱平では目の前に白馬三山がそびえ、「北アルプスに来た」という気分を高めてくれます。
八方池山荘から登山開始

最後にグラートクワッドリフトで八方池山荘へ。トイレに寄ってから、登山開始です!

整備されたハイキングコースには草花の案内板もあり、ゆっくり散策している人も多いですが、自分はコースタイム的に日帰りできるかの瀬戸際だったので、急ぎ気味で進みます。






八方池は、ほとりの探索路へは下りずに上から眺めるだけにしました。なるほど、八方池は真上から眺めると景色を反射してくれないようです。




夏道の横に雪渓があり、わざわざそこを登っている方たちがいました。北アルプスでもかなり暑いので、その気持ちはよくわかります。


唐松岳から五竜岳へ
大きくて立派な唐松岳頂上山荘に到着。デポして行くような距離ではないので、そのままザックを背負って唐松岳山頂へ。


山頂からは、手前の五竜岳の奥に前穂高岳、奥穂高岳、槍ヶ岳が小さく見え、右側には立山が望めました。




頂上山荘に戻り、今度は五竜岳を目指します。

今までのお気楽な登山道からガラリと変わり、難所の「牛首」の鎖場へ。高度感はそれほどなく、譲り合って慎重に進めば問題ありません。



ずっと下り基調だった道が、五竜岳へ向けての登りへ転じます。五竜岳の山容がはっきり見えてきました。



五竜山荘に到着すると、ちょうどヘリコプターが物資を降ろしているところでした。この間はスタッフが登山者を制止します。
ヘリは何度も往復しており、五竜岳から戻ったときにも飛んでいました。



五竜岳の岩場にはマークがしっかりあるので、それに従っていけば難なく登れます。少ないながら手を使う場面もあるので、グローブがあるといいかもしれません。


「え、もう頂上?」と思って登っても、本当の頂上はもう少し奥にありました。ちょうどお腹が空いていたので、ここでお昼ごはんにします。







遠見尾根を下山
五竜山荘に戻り、ここから遠見尾根を下ります。序盤に鎖場がいくつかありましたが、使わなくても問題ないレベルです。





中遠見山への登り返しが割ときつくて足にきます。

ようやく外界が見えてきました。地蔵の頭あたりから白馬五竜高山植物園までは観光客が増えて賑やかになります。




植物園では、いたるところにコマクサが咲いていました。ウスユキソウではなく本物のエーデルワイスや、ヒマラヤの青いケシもあり、初めて目にしました。





テレキャビン(ゴンドラ)で山麓のとおみ駅へ。乗車時に渡される冷たいおしぼりのサービスがとても有り難かったです。




エスカルプラザから神城駅までは無料のシャトルバスを利用しました。

旅の終わりに
神城駅から松本駅へ向かいます。東京への4時間半の鈍行列車に備え、松本駅前で食事を済ませました。 今回乗車した「ムーンライト信州」は、以前の冬とは違い9割くらいの乗車率で盛況でした。
白馬駅で感じた涼しさは早朝だけの話で、2,000m以上の山でも直射日光がかなり暑かったです。午後からは雲が上がって日光を遮ってくれたので、日射病の心配はありませんでした。
それほど急登や難所も少ないおすすめのコースですが、やはり日帰りだと焦って見どころを堪能できないため、1泊するのが無難でしょう。次は八方池のほとりまで下りて、池に反射する白馬三山を見てみたいです。
周辺情報・関連記事
憧れの峰々が連なる「後立山連峰」
唐松岳を起点とした縦走路は、北アルプスの中でも特にダイナミックな景観を誇ります。南へ向かえば、レポートにもあった雄々しい岩容の五竜岳。北へ向かえば、日本最大級の大雪渓を抱く白馬岳(しろうまだけ)へと道が続いています。いずれも日本百名山に数えられる名峰であり、唐松岳で北アルプスの洗礼を受けたハイカーにとって、次なる目標となる「憧れの舞台」です。
オリンピックの記憶と、癒やしの白馬温泉郷
麓の白馬村は、1998年長野オリンピックの興奮が今も息づく場所。白馬ジャンプ競技場では、リフトでスタートタワーの最上部まで登ることができ、ジャンパーが見る「空へ飛び出すような」視点を体験できます。下山後は、強アルカリ性で美肌の湯として知られる「白馬八方温泉」がおすすめ。白馬駅周辺には足湯も点在しており、帰りの列車を待つ間に登山の疲れを解きほぐすことができます。
冬の顔:世界が羨む「スノーリゾート・八方」
冬になると、八方尾根は世界中のスキーヤー・スノーボーダーが憧れる白馬八方尾根スキー場へと姿を変えます。国内最大級の標高差が生み出すパウダースノーは圧巻の一言。一方で、登山者にとっては厳冬期の過酷なフィールドとなります。原作であおいたちが引き返したように、白銀の美しさと隣り合わせにある「厳しさ」を知ることこそが、冬の八方の真の魅力といえるかもしれません。
よくある質問
Q: 初心者でも登れますか?
A: 夏季の八方尾根ルートは北アルプス入門コースとして人気です。ただし、標高が高く天候変化も激しいため、基本的な登山経験と体力は必要です。
Q: 夏季に日帰りは可能ですか?
A: 唐松岳往復(約6時間)なら日帰りは十分可能ですが、「アルペンライン(ゴンドラ・リフト)の最終時刻」が絶対的なリミットになります。16時を過ぎると下りのリフトが終了し始めるため、遅くとも午前8時には八方池山荘を出発するのが安全です。
Q: 冬に八方池まで行けますか?
A: スキー場のリフトを利用して八方池山荘まで行けますが、そこから八方池までの区間も完全な雪山です。アイゼンやピッケルなどの冬山装備と、天候が崩れた際に見失いやすいルートを判断する技術が必要です。観光のついでに軽装で立ち入ることは、極めて危険ですので控えてください。
Q: 装備はどの程度必要ですか?
A: 八方池までは観光客も多いですが、そこから先は本格的な岩稜帯です。森林限界を超えるため日差しが強く、風を遮るものもありません。夏でも「防寒用のシェル」と、足元を支える「登山靴」は必須です。あおいのように、しっかりとした装備を整えることが北アルプスを楽しむ第一歩です。


