立山、剱岳に向かうまで
日本百名山最後の2座に残った立山と剱岳
以前にも述べたが、最後の山は剱岳と決めていた。
日本百名山全山踏破を志した当初、剱岳はあまりに技術的で体力的な要求が高く、手が届く存在ではなかった。しかし、それこそが戦略的な判断だった。日本百名山の中でも最も憧れの対象である剱岳を最後まで温存することで、必ず完走するという強固な意志を維持し続けられると考えたのだ。
ついに念願の剱岳に挑戦する時が来た。しかも、前日に立山連峰の完全縦走を組み合わせた、まさに自分への最高のご褒美とも言える特別なテント泊登山として設計した。
これまで天候に恵まれない中でも遠征を強行してきたが、最後の登山だけは違った。最高の条件で剱岳を迎えたい。9月の週末はすべてスケジュールを空け、台風の動向に一喜一憂しながら、完璧な晴天のタイミングを見極めて臨んだ。
2021年9月19日 富山から長野へ、立山黒部アルペンルートを乗り通す
同時に乗り鉄として、いつかは乗り通してみたかった立山黒部アルペンルートを富山県の立山駅から長野県の扇沢まで乗り通す。
大学生の頃に黒部ダムから下ノ廊下を歩いた時、立山駅から室堂までは乗ったことがあるが、その先は未乗車。登山そのものと同じくらい心躍る体験になりそうだ。

高速バス(千栄交通の2,500円という激安4列シート)で富山駅に。富山駅は訪れるたびに工事中の印象があるが、なぜだろうか。
富山地方鉄道で電鉄富山駅から立山駅へ

電鉄富山駅で事前購入していた予約WEBきっぷを発券。

富山地方鉄道で電鉄富山駅から立山駅へ向かう。 昨年のシルバーウィークに折立アクセスで利用して以来、1年ぶりの地鉄体験だ。


立山ケーブルカーで立山駅から美女平へ

立山駅で美女平行きの立山ケーブルカーに乗車。 車両に荷台が連結されており、ザックはそちらに預託する仕組み。



美女平駅に到着。
立山高原バスで美女平から室堂へ

立山高原バスで室堂へ向かう。 標高977mの美女平から、50分の山岳ドライブで標高2450mの室堂まで一気に上昇する。 座席に装備されたUSB充電端子でiPhoneを最後の充電。このような心遣いは本当にありがたい。


称名滝はガスに覆われて視界が効かなかったが、室堂手前のソーメン滝は車窓から鮮明に確認できた。

室堂に到着し、配布された登山届を記入して提出。 スタッフからは「剱岳は登山者の渋滞が発生しやすいため、帰りの最終便に間に合うよう早めの行動を心がけてください」とのアドバイスを受ける。
実際に登ってみた
日程: 2021年9月19日(日) ~ 2021年9月20日(月) [1泊2日] 天候: 【1日目】快晴【2日目】くもり
アクセス
往路
- [富山地方鉄道] 電鉄富山駅 → 立山駅
- [立山ケーブルカー] 立山駅 → 美女平
- [立山高原バス] 美女平 → 室堂
復路
- [立山トンネルトロリーバス] 室堂 → 大観峰
- [立山ロープウェイ] 大観峰 → 黒部平
- [黒部ケーブルカー] 黒部平 → 黒部湖
- [関電トンネル電気バス] 黒部ダム → 扇沢
乗車5日前に立山黒部アルペンルート( https://www.alpen-route.com )のWEBきっぷを購入。その時点で朝8時40分より前の室堂行きケーブルカーは全て満席状態だった。 前日正午まではキャンセル料も発生しないため、早期予約を強く推奨する。 電鉄富山から扇沢までの通し券を購入したので、電鉄富山駅の専用端末で発券手続きを実施。乗車日から5日間有効。
地図・標高グラフ
⏱タイム | 🏃距離 | ↗登り | ↘下り |
---|---|---|---|
12:40 | 18.1km | 2,198m | 2,214m |
コースタイム
1日目
ルート: 室堂-浄土山-雄山-立山-真砂岳-別山南峰-剱沢キャンプ場[泊]
- 10:06
- 11:07
- 11:16
- 11:34
- 12:17
- 12:54
- 13:05
- 13:15
- 13:40
- 14:28
- 15:15
2日目
ルート: 剱沢キャンプ場-前剱-剱岳-前剱-剱沢キャンプ場-別山乗越-ミクリガ池-室堂
- 04:11
- 04:15剱澤小屋
- 04:32
- 04:54
- 05:33
- 05:48
- 06:09
- 06:18
- 06:41
- 06:47
- 07:08
- 07:17
- 07:31
- 07:47
- 07:56
- 08:26
- 08:41
- 08:59剱澤小屋
- 09:06
- 10:44
- 11:31
- 11:51
- 11:58
- 12:14
- 12:18みくりが池
- 12:25ホテル立山
- 12:27室堂
室堂 室堂に戻ってきて、無事下山。ここからは観光モード、立山黒部アルペンルートの続きで扇沢へ向かう。
立山トンネルトロリーバスで室堂から大観峰へ

立山トンネルトロリーバスで大観峰へ。

関電トンネルトロリーバスが電気バスに置き換わったので、ここが日本で唯一走るトロリーバス。

大観峰からロープウェイに乗り換え。
立山ロープウェイで大観峰から黒部平へ

立山ロープウェイで黒部平へ。

向こうで手を振ってくれている。

あっという間に黒部平へ到着。紅葉がもっと進むと綺麗だろうな。
黒部ケーブルカーで黒部平から黒部湖へ

続いて黒部ケーブルカーで黒部湖へ。


黒部湖に到着。
黒部ダム

ここからはダム堰堤の上を歩いて移動。




この黒部ダムの直下まで下って下ノ廊下を歩いたときに、黒部ダムに来たことがあるが、通過しただけだったので、今回はしっかり観光。

黒部ダムカレー。辛口仕様で、黒部湖の色を再現した緑色のカレー。美味しい。


関電トンネル電気バスで黒部ダムから扇沢へ

立山黒部アルペンルートの最後は、関電トンネル電気バスで黒部ダムから扇沢へ。

トロリーバスから置き換えられた電気バス。

駅アナウンスが「おうぎさわー、おうぎさわー」と松本駅の「まつもとー、まつもとー」と同じイントネーション。


帰りのバスまで時間があったので、近くにある扇沢総合案内センターへ。ここでは「黒部の太陽」関連の展示などがある。
今年の春からトロバス記念館として、関電トンネルトロリーバスの引退した車両が展示されている クラウドファンディングで保存を呼びかけて、奇跡的に残っていた最後の1台の展示が実現したそうだ。 https://readyfor.jp/projects/torobus-omachi
新宿

と、立山黒部アルペンルートの観光も終わり、あとは新宿までのバスに乗って帰るだけのはずだった……。
- 諏訪湖SAに緊急停車、同じアルピコ交通のさわやか信州号がエンジントラブルで乗客移動、ガラガラの車内が満席に。
- 双葉SAでの駐車時に接触事故、警察の現場検証等で1時間以上の遅れ。
- 連休最終日 中央道の渋滞にハマる。
16:10 に扇沢を出発して 21:11 に到着予定だったのだが、日付を越えて 0:30 到着。終電間に合わず……。
ものすごい1日だった。

結局タクシーで自宅に帰ったが、延着補償が行われない高速バスとしては珍しく、タクシー代金を返金していただいた。
下山後の感想
コース状況・危険箇所等
【室堂~浄土山】 室堂からの石畳から浄土山登山道に分岐すると、急に荒々しくなる。
【一ノ越~雄山】 登りと下りで別ルートとなっている所もあるが終始渋滞。
【雄山~別山の稜線】 特に危険なところはない(稜線なので日差し、突風等で問題になる時もあるかと)。
【別山~剱沢】 途中、踏み跡を間違え正規ルートより少し東の沢を下ってた(同じく前のパーティーも)。目前のキャンプ場ばかり見ずに、足元も見よう。
【剱沢キャンプ場~剣山荘】 広いゴーロをトラバースするような道があるが、暗いとマーキングが分かりづらい。
【一服剱、前剱】 鎖場は問題なるところはないが、岩峰のトラバースは慎重に(下りでも)。
【前劔の門、カニのタテバイ】 登りの難所。高度感はないし、落ちても死ぬことはなさそう。
【カニのヨコバイ】 下りの難所。岩壁の赤いペイントに足を踏み出す勇気があれば、あとは鎖を信じるのみ。
【雷鳥荘~ミクリガ池】 地獄谷からの火山ガスがちょうど風下できつかった。
感想・記録
立山と剱岳を日本百名山の99座目と100座目で登りたいと思い、ずっと取っておいた憧れの山にようやく登ることが叶った。 当日まで台風14号の行方にどぎまぎされたが、室堂に来てみると圧巻の澄み渡る空で、堂々たる立山連峰の稜線が迎えてくれた。
立山三山は浄土山・雄山・別山の3つを指し、それぞれ過去・現在・未来を表すという。これまで登った百名山の山々を思い出しながら、これからの山行に繋げていくというエモさを噛み締めながら立山の稜線を歩き、99座目となる立山連峰最高峰となる大汝山に登頂した。
浄土山からは遠くに見えた剱岳も、別山まで歩き切ると貫禄のある険しい姿をまじまじと見せつけて、百名山最後の山として最高に相応しいと感慨に浸る。 翌日、暗いうちから出発。核心部の難所も各個撃破し難なく剱岳に登頂。やり遂げたという嬉しさが溢れてきたが、下山するまでが登山、気持ちを引き締めて山頂を後にした。
かかった費用と装備
交通費用
- 電車: 157円(富山地方鉄道)
- 高速バス(新宿→富山駅): 2,450円(千栄交通の激安4列シート)
- 高速バス(扇沢→新宿): 5,800円(アルピコ交通)
- 立山黒部アルペンルートWEBきっぷ(立山駅→扇沢駅): 10,530円
交通費合計: 18,937円
宿泊費用
- 剱沢キャンプ場: 1,000円
宿泊費合計: 1,000円
食費・その他
- 朝昼晩2日分: 4,000円(概算)
- 行動食2日: 600円
食費合計: 4,600円
総費用
合計: 24,537円
今になって思うこと
最後に剱岳を登ることができて幸せ。本当にパズルのラストピースをはめるように、日本百名山全山踏破の最終登山として、これ以上に相応しい山はなかったと確信している。
立山三山縦走との組み合わせも絶妙だった。単独での剱岳登頂だけでは味わえない、立山連峰全体の魅力を満喫できた。特に大汝山からの剱岳展望は、翌日の登頂に向けて完璧な予習となった。
これで日本百名山の全山踏破という壮大な挑戦は幕を閉じた。しかし、登山への情熱が尽きることはない。これからは、これまで登った山々の中から、もう一度その頂を目指したい山や、心残りを抱えた山に挑み続けていきたい。