忙しい人向けまとめ
- 台風の爪痕が残る迂回路で予定より30km超え:橋が流された光復の先で台9線が通行止め。道幅の狭い峠道を迂回するはめになり、計画69kmが100.2kmに膨らんだ
- 2度目の北回帰線、光復糖廠でソフトクリーム:舞鶴の北回帰線モニュメントを通過し、日本統治時代の製糖工場跡に立ち寄って台湾最速オペレーションのソフトクリームを堪能
- 花蓮到着、蘇花公路を電車で迂回する決断:花蓮駅で明日の輪行ルートを下調べし、夜は花蓮香扁食のワンタンと東大門夜市のパパイヤジュースで締めくくり
Day 9 実走レポート
環島9日目。台風が過ぎ去った東海岸を、北へ向かう。

この日のルート
910 Hostelを出発(07:43)


910 Hostelを後にした。城のような佇まいの立派なホステルで、しかも価格がリーズナブル。オーナーの心遣いも含めて、玉里という街の印象を良くしてくれた宿だった。なんで豪邸でドミトリーをやっているのか謎ではあるが、ありがたいことに変わりはない。

玉里の市街地を抜けるとすぐ、両側を山に囲まれた花東縦谷の風景に戻る。雲が低い位置に漂い、道路は昨夜の雨でまだ濡れている。朝靄だろうか、山の稜線がかすんで見えた。

走り始めてすぐ、道路の向こうから臺鐵の音が聞こえてきた。昨日まで台風で運休していた鉄道が、運転を再開したのだろう。その音に、なぜか安堵した。インフラが動いているというだけで、日常が戻ってきた気がする。
今日からは台風の影響もなくなって晴れ予報。ここ数日の悪天候でたまっていた鬱積した気持ちを、気持ちいいサイクリングで晴らしてやろうじゃないかと意気込んだ(フラグ)。
2度目の北回帰線:舞鶴(08:54)
なだらかな登りが続き、周りにはお茶畑らしき農園や、ビンロウの木の農園が広がる。


登りきったところで目に入ったのは、北回帰線のモニュメント。Day 4の嘉義でも渡った、あの北緯23度26分の線だ。今度は舞鶴側の北回帰線標誌で、こちらの方が素朴で、誰もいない公園の中にひっそりと立っている。嘉義の大きなモニュメントの縮小版のようなオブジェもあった。
北回帰線は、太陽が真上に来る最も北の緯度だ。ここより南は亜熱帯・熱帯で、北は温帯。台湾はほぼこの線で半分に切れており、花東縦谷の中間あたりに位置する舞鶴もその境界線上にある。

モニュメントの近くには、巨大なヤカンのようなオブジェが立っていた。ヤカンではなく茶器らしい。この一帯は瑞穂郷の舞鶴台地で、「蜜香紅茶(ミツカホンチャ)」という台湾東部の名産紅茶の産地だ。ウンカという虫が茶葉を噛むことで生まれる独特の蜜のような香りが特徴で、台湾を代表するお茶の一つらしい。

高台の舞鶴北回帰線から離れると、道はダウンヒルになった。雨もない、風もない。「これだよ、これが自転車旅行の醍醐味なんだよ」と心の中でつぶやいた。
昨日までの3日間、台風に散々にやられたが、これからとりかえしていこう。

ひたすら真っ直ぐな道で、信号もほとんどない。スピードが乗って快調に進む。光復郷の看板が目に入ったとき、少しだけ気が引き締まった。
光復郷は、つい2ヶ月前の2025年9月に台風18号の大雨でせき止め湖が決壊し、土石流が流れ込む大災害が起きた場所だ。さらに今回の台風26号でも甚大な浸水被害を受けているのをニュースで見た。
道路脇で大型重機が動いている。災害復旧用の車だろう。台風が来るたびにこれだけの被害が出る花蓮の町、この地域の人々の苦労は計り知れない。
光復糖廠でソフトクリーム(10:18)

セブンイレブンで軽くお腹を満たしてから(サツマイモのフライドポテトとコーヒー牛乳)、すぐ近くの花蓮光復糖廠(台糖光復観光製糖工場)に寄り道することにした。
花蓮光復糖廠は、日本統治時代の1913年に創業した製糖工場の跡地だ。稼働していた当時は東台湾最大の製糖工場で、工場内で働く労働者が生活するための社宅まで備えていた。現在は観光地として整備され、トロッコ列車の線路跡が残り、レトロな雰囲気を楽しめる場所になっている。

敷地内に残る日本統治時代に建てられた和風の平屋宿舎を見て歩いた。低い軒と縁側を持つ木造建築は、どこか懐かしい。昨日の玉里神社といい、東台湾には日本統治時代の面影が色濃く残っている。

お目当ては、工場敷地内にあるアイスクリーム直売店だ。種類が豊富で、しかも安い。

パパイヤ風味のソフトクリームを注文した。55NTD(約275円)。
お釣りを受け取る前に横からアイスクリームを渡されるほど速いオペレーション。お客さんの数に対して販売スタッフが多すぎるような気もするが、プロフェッショナルなお客さばきは満点。
パパイヤの風味は思ったよりも控えめで、穏やかな甘さのソフトクリームとして素直に美味しい。この後に待ち受ける峠道への備えとして、砂糖というエネルギーを十分に補給した。
台風の爪痕:迂回路の峠道(11:17)
製糖工場を出発しようとしたら、突然の強雨。「なんでだ、晴れ予報じゃなかったのか」とぼやきながら、慌ててレインウェアを着込む。
朝に気持ちいいサイクリングを夢見ていた自分に、浮かれるなと忠告したい。

今回の台風で橋が流された区間を避けるように、台11線甲から迂回ルートへ入った。分岐点で193号線の代替道路へ向かう。

台9線などの国道とは明らかに違う。路面は荒れていて、道幅は狭く、路肩が崩れているところもある。何より自転車のことを考慮していない道(慢車の通行帯がない)なので、後ろから来る車に追い抜かれるたびに恐怖を感じる。
雨、峠道、車。壽卡峠の悪夢がよぎった。せめてパンクだけはしないように、と念じながらペダルを踏む。

迂回路というのは、すぐに終わるものだと思い込んでいた。しかし、台9線が生命線である花東縦谷において、それ以外の道を選ぶということは、地形を丸ごとまたいで山を越えることを意味する。ほぼ倍の距離を走ることになる上に、道路状況も悪い。これだけ台9線の有り難みを実感した日本人観光客は、そうそういないだろう。

色々あったが、花蓮渓に架かる長い斜張橋を渡って、ようやく台9線に戻った。台風の災害現場を大きく迂回してきた分、想定外に消耗した。
ホッとして、またセブンイレブンへ。コンビニだけが折れそうな心を繋いでくれる。チーズスモークソーセージロールを食べた。ブリトーっぽいやつで、悪くない。

台9線に戻って順調に走っていると、雨が止んだ。なんでこの旅は、辛いときに限って雨が降るのだろう。呪われてるのかな。
豊田を通過(13:55)

「豊田」という地名の看板が目に入った。愛知県豊田市と同じ漢字だ。
実は花蓮県には、日本の地名がそのまま使われている地域がいくつかある。豊田、林田、吉野、瑞穂——どれも日本統治時代に国策として入植した日本人移民が名付けた地名で、現在も地図に残っている。豊田も日本人移民の集落があった場所で、現在は「豐田移民村」として当時の様子がそのまま残されていいるという。
じっくり立ち寄る時間はなかったが、こういう場所が台湾東部の山あいに存在しているという事実は、台湾の歴史の複層性を感じさせてくれる。
花蓮市到着、蘇花公路の決断(15:02)

徐々に建物が増えて、交通量が上がっていく。花蓮市に入ると、それまでの農村・山岳地帯の景色が嘘のように、都市の空気に変わった。しばらく東海岸を走ってきたからこそ、花蓮の都会感が際立つ。


天使の像があるロータリーを通過し、メインストリートの中山路へ。台9線と別れて左に折れ、花蓮駅を目指す。


花蓮駅前に設置されているアヒルのオブジェを前に、しばし小休憩。花蓮駅は立派な駅舎だ。
ここ数日、花蓮から先をどうするかずっと考えてきた。蘇花公路は花蓮から北の宜蘭・蘇澳をつなぐ断崖絶壁の海岸沿いを走る道で、落石や崩壊が頻発する「台湾で最も危険な道路」の一つとして知られている。環島でもこの区間は自転車で走らずに電車で迂回することが一般的に推奨されている。
もう辛くて危険なのは嫌だ。台風に振り回されたここ数日が決心させた。電車で行く。
明日早朝の列車に自転車を載せることになるので、予め構内を偵察した。「なるほど、2階にある改札まであの階段を登っていくのだな」と確認した。後で知ったことだが、改札階へ上がるための大型エレベーターがスロープの奥に設置されていた。重い荷物を積んだ自転車で階段を登る必要はなかったのだ。相変わらず下調べが甘い。

ベイハウス コンフォーテル(16:14)
今日の宿は、花蓮駅のすぐそばにある「ベイハウス コンフォーテル 花蓮 ホステル」。都市部だから宿代が高いかと思いきや競争原理が働いて、373NTD(約1,865円)という格安ドミトリー。これはありがたい。


ドミトリーに入ると、部屋はすでにエアコンがガンガンに効かされていた。先客が冷やしっぱなしにしてくつろいでいる。ベッド空間はやや狭いが許容範囲。
ただ、線路が近いので電車の音がする。Googleマップで確認すると、花蓮駅の線路と北東にある花蓮空港の滑走路が見事に直線上に並んでいる。市街地への騒音を抑えるためによく考えられた配置なのだろうが、そのおかげで空港に近い駅周辺では飛行機の轟音がたまに響く。慣れれば気にならないが、最初は少し驚いた。
花蓮香扁食でワンタン(18:32)
宿でやるべきことを片付けていると、すっかり夜になっていた。
花蓮はワンタンが有名らしい。ただし「雲呑」ではなく「扁食(ビェンシー)」と呼ばれる。薄い皮で包んだ具材が平たい形をしていることからこの名がついたとも言われ、福建語が語源という説もある。花蓮の扁食は、特に大ぶりな皮と具材の充実ぶりで知られている。

その有名店「花蓮香扁食」がメインストリート沿いにあるというので、自転車で向かった。


店内は満員。相席でいいかと聞かれて「Yes」と答えると、スタッフが「日本人?」と確認した。なんだか韓国人観光客と日本人観光客の相席を避けているような配慮をされているようだ。理由はわからないが、そういう配慮が必要な場面が過去にあったんだろうか。

日本語のメニューがあり、ワンタンスープと魯肉飯(ここでは肉燥飯)を頼んだが、肉燥飯は今は提供していないとのこと。この旅の直前に台湾でアフリカ豚熱が発生していたので、その影響かもしれない。代わりに乾麺(汁なし麺)を注文した。

ワンタンスープが運ばれてきた。器から覗く大ぶりのワンタンに、まず目を引かれる。
すくい上げると、薄い皮の中にエビ・豚肉などの餡がぎっしり詰まった大きなワンタンがぷるんと揺れる。一口かじると、皮がつるっと喉を滑り、中の具材がほんのり甘い。スープはあっさりしているようで、飲み進めるほどに鶏ベースの旨味がじわじわと広がってくる。あっさりなのに奥深い、という台湾料理ならではの塩梅だ。汁なし麺と交互にすすっていると、あっという間に平らげてしまった。150NTD(約750円)。

台湾のいろんな街を巡って、名物ばかり食べている。贅沢な旅だ。
東大門夜市(19:10)


食後は自転車で東へ走り、東大門夜市へ。

花蓮を代表するこの夜市は、とにかく広い。夜市のために作られた専用の会場に、複数の異なるテーマエリアが集まっているという構成で、浅草の仲見世のような大きな通りを挟んで店舗が並ぶ。ゲートから入ってすぐのメインエリアだけでも相当な長さがある。

ゲームコーナー、おもちゃ屋、ローカルフード、ドリンク、雑貨と、ありとあらゆるものが揃っている。今まで台湾で見てきた夜市は、大通りが夜の時間帯だけ夜市に変身するスタイルだったが、ここは夜市専用のイベント会場を丸ごと作ってしまったスケール感だ。


突き当りまで歩ききると、今度は「原住民一條街」というゲートがある。台湾の原住民族(先住民の正式な呼称)の料理や食材が並ぶエリアで、見たことのない野菜や果物が所狭しと売られていて目に映るものが全て新鮮だ。さらにその横のエリアに進むと、また別の空間が広がっている。どこまで続くんだ。



ワンタンを食べた後でお腹に余裕がなかったので、飲み物だけ調達することに。

「妙不可言現打果汁」でパパイヤミルクを注文した。目の前でパパイヤを絞ってくれる、出来たてのフルーツジュースだ。70NTD(約350円)。
市販のパックのものとはまるで別物の、香りと爽やかさがある。台湾サイズでたっぷり、その場では飲み切れないほど。歩きながら少しずつ飲む、これが夜市の正しい楽しみ方だ。

メインストリートを端から端まで走って、宿へ戻る。
後で動画を見返して気付いたが、2024年4月の花蓮地震で傾いた「天王星ビル」の跡地のそばを偶然通っていた。東大門夜市のすぐ近くにある。賑やかな夜市の喧騒の横に、静かに残る災害の記憶。花蓮という街の二面性を、図らずも体感した夜だった。

明日の輪行を下調べ
宿に戻り、明日の臺鐵の時刻と自転車持ち込みについて調べた。
臺鐵のウェブサイトは独特のインターフェースで、理解するのに時間がかかった。どうやら「区間」という種別の列車で、サービス設備欄に自転車マークが付いているものを選べば自転車を持ち込めるらしい。
調べた結果、早朝6時5分発の「區間快 4013」に乗ることに決めた。花蓮から蘇澳新までの蘇花公路区間を電車で迂回し、蘇澳新から再び自転車での旅が始まる。チケットをあらかじめ予約してないし、当日に本当に乗れるのか不安が残る。でも、まぁなんとかなるだろう。
ときおり飛行機の轟音が聞こえる宿で、眠りについた。
コラム:台湾の鉄道
環島を計画したことがある人なら、「蘇花公路は電車でスキップするのが定番」という情報を一度は目にしたことがあるはずだ。
台湾に鉄道があることも、東海岸を走る臺鐵(台湾鉄路)の存在も、出発前から知っていた。でも、玉里から花蓮に向かい、いざ自分が蘇花公路の前に立つ段になって初めて、「で、実際どうやって乗るんだ?」という実務的な問いが突然リアルになった。
臺鐵とは
臺鐵(台湾鉄路管理局、Taiwan Railways)は台湾の国鉄だ。1891年に基隆〜台北間で開業した歴史ある路線で、今も台湾の大動脈として機能している。
台湾の鉄道は大きく3つに分けて理解すると把握しやすい。
| 種別 | 特徴 | 代表路線 |
|---|---|---|
| 臺鐵(台湾鉄路) | 在来線。島を一周する幹線が核心 | 西部幹線、花東線、北迴線 |
| 高鐵(台湾高速鉄路) | 台湾版新幹線。西海岸のみ | 台北〜左営(高雄)の西部のみ |
| MRT(捷運) | 都市部の地下鉄・軽軌 | 台北、高雄、桃園など |
環島サイクリストが主に使うのは臺鐵だ。高鐵は西海岸しか走っておらず、東海岸をカバーするのは臺鐵のみ。僕が玉里駅や池上駅の近くを走ったとき、線路と近づいたり離れたりしていたのも臺鐵の花東線(台東〜花蓮)だ。
臺鐵の路線と環島ルートの関係
臺鐵のメイン路線を地図で追うと、台湾の形をそのままなぞるように走っている。
- 西部幹線(台北〜高雄):都市部を結ぶ主要路線。特急・急行が多く、本数も豊富
- 花東線(花蓮〜台東):台湾東海岸の内陸部を走る。環島サイクリストが走る台9線とほぼ並走している
- 北迴線(台北〜花蓮):台湾北東部の山岳地帯を貫く路線。蘇花公路に並走している区間を含む
- 南迴線(台東〜高雄):台湾南端を横断する路線。環島サイクリストが走る台9線と並走
この旅で台東→玉里→池上と走ってきた区間は、まさに花東線の線路と並走だった。橋を渡るたびに「あ、また線路だ」と確認しながら走ってきた。
列車の種別
臺鐵の列車は種別が多くて複雑だが、サイクリストが知っておくべき主なものは以下の通り。
| 種別 | 特徴 | 自転車持ち込み |
|---|---|---|
| 太魯閣(タロコ) | 最速の特急。台北〜花蓮をノンストップで結ぶ | ×(折り畳みのみ) |
| 自強号 | 幹線を走る特急 | ×(折り畳みのみ) |
| 莒光号 | 急行列車 | 条件付き |
| 區間快 | 快速普通列車。自転車対応が多い | ○(専用車両あり) |
| 區間 | 普通列車 | ○(専用車両あり) |
自転車をそのまま持ち込めるのは「區間」と「區間快」が中心だ。ウェブサイトの時刻表で列車を検索すると、設備マークの中に自転車アイコン(🚲)が表示されているものが対象になる。ただし、全ての區間快が対応しているわけではないので、必ず確認が必要だ。
今回僕が乗ることにした「區間快 4013」も、自転車マークを確認して選んだ。
自転車の持ち込み方
臺鐵で自転車を持ち込む際のルールはざっくり以下の通り。
チケット購入
- 乗車券(普通運賃)に加えて、自転車用チケット(自行車票)が別途必要
- 自行車票の料金は乗車券の半額(例:乗車券166NTDなら自行車票は83NTD)
- 自転車指定席は先頭または最後尾車両に割り当てられる
- 区間・区間快は駅窓口で購入(ネット予約不可)
車両による設備の違い
自転車スペースの快適さは、乗る車両によってかなり差がある。
| 車両 | 自転車設備 |
|---|---|
| EMU900型(新型「スマイル列車」) | 前輪を吊るす縦型ラック付き。先頭・最後尾車両に計12台分 |
| 旧型区間・区間快 | ラックなし。先頭・最後尾車両に自転車をそのまま持ち込み、壁に立てかける |
| 莒光号(一部) | 自転車専用車両あり。要事前確認・予約 |
今回僕が乗った「區間快 4013」は旧型車両で、ラックのない普通の車内に自転車をそのまま持ち込む形だった。乗り方自体はシンプルで、壁や手すりに立てかけるだけ。
注意点
- 自転車の汚れは事前にふき取る(雨の後は特に注意)
- 満員の場合は自転車の持ち込みを断られることがある
輪行袋(携車袋)を使う場合は追加料金なし。前輪を外して袋に収めれば手荷物扱いになり、乗車券だけで乗れる(縦横高さの合計220cm以内が条件)。そのまま乗り込む「人車同行」スタイルより手間はかかるが、自転車の種類に関係なく全列車に乗れるのが利点だ。
環島では手間を省いてそのまま乗るか、輪行袋で料金を節約するか、状況に応じて選ぶといい。
台風と臺鐵の運休
この旅では台風26号の直撃を受けて、花東線が丸2日近く運休した。
台湾の鉄道は台風に対して比較的堅牢に作られているが、特に花東線と北迴線は山岳地帯を走るため、崩壊や土砂流入のリスクが高い。2024年4月の花蓮地震でも北迴線が大きな被害を受け、完全復旧までしばらくかかった。
台湾東海岸を自転車で旅する際は、台風や地震によって鉄道が使えなくなるリスクを念頭に置いておく必要がある。代替手段として、バス(花蓮バスや台湾好行)も花蓮〜台東間を走っているが、自転車の積載は事前確認が必要だ。
蘇花公路:走るか、乗るか
蘇花公路とは、花蓮と蘇澳新(宜蘭県)を結ぶ台9線の一区間、約118kmのことだ。太平洋に面した断崖絶壁の上を走るこの道路は、自転車から見た景色こそ圧巻だが、環島サイクリストにとって最難関の区間のひとつとして知られている。
蘇花公路が難しい理由
- 断崖に張り付くように作られた道で、落石・崩壊のリスクが常にある
- 大型トラックやバスの通行が多く、道幅に余裕がない区間がある
- 台風や地震による通行止めが頻繁で、迂回路がない(海か崖しかない)
- 2024年4月の花蓮地震でも長期通行止めになった
環島サイクリストの選択肢
| 選択肢 | 距離・時間 | 特徴 |
|---|---|---|
| 走り切る | 約118km、獲得標高あり | 絶景あり・リスクあり・完走の達成感あり |
| 臺鐵でスキップ | 花蓮→蘇澳新、約1.5時間 | 最も一般的。区間快が自転車対応 |
環島を完走した人の話を読むと、蘇花公路を走り切った人もいれば「問題なく乗った」という人も多く、どちらが正解という話ではない。天候・体力・スケジュール・リスク許容度によって判断が変わる区間だ。
今回の僕は、台風の爪痕が残る路面状況と翌日以降のスケジュールを考えて、臺鐵でスキップすることにした。翌朝6時5分の「區間快 4013」で、花蓮から蘇澳新へ。
サイクリストへの実用アドバイス
- 花東線は台9線とほぼ並走。「しんどくなったらいつでも駅に逃げ込める」という安心感がある
- 蘇花公路区間(花蓮〜蘇澳新)の電車迂回は環島の定番プラン
- 臺鐵のアプリ(台鐵e訂通)を入れておくと、時刻表の確認やチケット購入がスマホで完結する
- 台風シーズン(6〜10月)の環島では、運休リスクを考慮してスケジュールに余裕を持つ
Day 9 まとめ
走行データ
この日の走行距離は100.2km(計画では69km)。
移動時間は5時間32分、経過時間は7時間47分。
獲得標高は583.5m、平均速度は18.1km/h。
詳細なデータはStravaで確認できる。
費用まとめ(Day 9)
この日の出費は合計で932NTD(約4,660円)。
内訳は以下の通り:
- コンビニ(朝食・昼食など複数回):264NTD(約1,320円)
- ソフトクリーム(光復糖廠):55NTD(約275円)
- 夕食(花蓮香扁食:ワンタンスープ+汁なし麺):150NTD(約750円)
- パパイヤミルク(妙不可言現打果汁):70NTD(約350円)
- ランドリー:20NTD(約100円)
- 宿泊(ベイハウス コンフォーテル ドミトリー):373NTD(約1,865円)
合計:約4,660円
1NTD(ニュー台湾ドル)は約5円で計算している。
9日目の感想と教訓
良かった点
- 台風の被害を迂回しながらも、花蓮まで無事に到達できた
- 光復糖廠の日本統治時代の建物と、格安のソフトクリームが良かった
- 花蓮香扁食のワンタンスープが絶品。これだけでも花蓮に来る価値がある
- 東大門夜市のスケールに圧倒された
- 蘇花公路の電車迂回を決断できた
反省点
- 迂回路の情報収集が甘かった。辛い峠越えになることを事前に把握しておくべきだった
- 花蓮駅でエレベーターの場所を確認しなかった。スロープ奥に大型エレベーターがあり、実は階段を担ぎ上げる必要はなかった
- 迂回路で消耗して計画より30km以上多く走ってしまった
体調面
前日の池上弁当と宿での十分な休息で体調は良好な状態でスタートできた。ただし台風の迂回路でペース以上に体力を消耗した感覚がある。花蓮まで走り切れたのは良かった。明日は電車移動なので、少し楽になるはず。
次回予告
Day 10は花蓮から電車で蘇澳新まで輪行し、蘇澳新から自転車旅再開。宜蘭ではウイスキー工場も見学する。
果たして早朝の列車に自転車を持ち込めるのか。自転車をどう車内に収めるのか。台湾の電車に自転車を持ち込んで乗るのは初めてで、ドキドキの朝から始まる。
次回、「Day 10:花蓮→宜蘭」に続く。



