番外編のお知らせ
12日かけて台湾を一周した本編は、前回の Day 12 で完結した。とはいえ、計画時点で予備日も入れていたので、フライトは少し先に取っており、帰国までの3日間は台北観光モードで過ごすことになった。
自転車も返却済み、走行データもない、ペダルも踏まない。けれど、せっかくなので最後にもう3日分だけ、番外編としてまとめておきたい。
淡水で迎えた朝、駅近くで台北101を見下ろした象山ハイキング、仕事でお世話になっている方々とのランチ、雨の西門町、後乗りで台北に来てくれた両親との合流、松山文創園区と迪化街、寧夏夜市の喧騒、そして桃園空港から成田への帰国まで。
サイクリストとしての記録ではなく、ただの台湾観光記として、駆け足で読んでもらえたら嬉しい。
Day 13(11/17)淡水の朝から台北の夜まで
淡水散策と香满園の朝食

宿は淡水のホステル。チェックアウトしてすぐ、街を散歩がてら淡水駅まで歩く。
早朝の淡水は人気が少なくて、観光地らしい喧騒はまだ目覚めていない。




歩いていると「戀愛巷(れんあいこう)」という小さな路地に行き当たった。淡水最古の通り「重建街」沿いにあって、赤レンガと石段が積み上がる、いかにも昔のままといった佇まいが残っている。
一人だし、インスタ映え写真を撮ろうとも思わないが、こういった何でもない風景の中に立つと、その街を少しだけ深く知れた気がする。気まぐれな白猫まで添えられているのだから、街猫天国の台湾はずるい。


淡水河沿いに出て、駅前まで歩く。日中は夜景スポット「金色水岸」も、朝はただ穏やかな川の景色だ。

淡水駅に到着。前日の夜にここを通過したときは気づかなかったが、改めて見ると赤レンガの立派な駅舎だ。そして、そんな駅舎に日本のすき家があるのは面白い。
香满園で魯肉飯の朝食
MRTで南下、雙連駅で降りる。地下街の入口から地上に出ると、目当ての朝食店「香满園」が見えてきた。YouTubeの台北グルメ動画で、やたらと魯肉飯が勧められていたお店だ。

朝から行列のローカル食堂。看板には魯肉飯・赤肉湯など30〜60元のメニューが並んでいる。

注文したのは魯肉飯。甘辛い豚そぼろが艶やかに白米を覆い、高菜漬けの酸味がアクセント。小ぶりではあるが、これで30元(約150円)。台湾のローカル飯のコスパは反則的だ。
象山ハイキングと台北101展望(→ ヤマレコ詳細)

これまでは自転車のキャリアに積めばよかった荷物も、これから歩き回るには流石に辛い。台北駅のすぐ近くにある今日の宿「WORK INN TPE」で荷物だけ預かってもらう。

天気予報は雨だったが、午前中はまだ降りそうにない。せっかくなので、駅近くから手軽に登れて台北101を真正面に見下ろせる名所、象山に行ってみることにした。
電車の乗りつぶしマニアでもあるので、赤のMRTを淡水駅から象山駅まで全て乗りつぶしたかったのもある。
象山は標高184mの、台北の街中からそのまま登れてしまうお手軽な山だ。MRT信義線「象山」駅の2番出口から登山口まで徒歩10分、そこから階段中心の道を15〜20分登れば、目の前に台北101がドンと立つ展望スポットに着く。七星山や玉山が中級・上級だとすれば、象山はまさに入門編。東京タワーを階段で登るみたいなものだ。
ハイキングそのものの詳細はヤマレコの山行記録にまとめてあるので、ここでは雰囲気だけ。


登山口前の小さなお店「解解渇」で、水分補給用に冬瓜檸檬茶を注文。スッキリとしたやさしい甘みで、登る前から旅情が増す。いざ登山。

登山口からずっと階段を登っていく。とはいえ、階段の石畳は完璧に整備されていて、登山靴でなくスニーカーでも全く問題ない。



15分ほどで頂上に到着。ビル群が麓に広がっているので、くもりでも眺めは申し分ない。


「超然亭」という休憩所からの眺めが素晴らしかった。前面に遮るものがないので台北市街地の大パノラマが広がる。


ピストン予定だったが、案外早く頂上に着いたので周回ルートに変更。1時間ほどで麓に戻ってきてゴール。
MRT駅から手軽にハイキングできる山が台北市内にあるのはいい。
今度、台湾に行く機会があれば台北最高峰の七星山、ゆくゆくは台湾最高峰の玉山にも登ってみたい。
鼎泰豐:仕事でお世話になっている方々とランチ

11時半に台北101駅で待ち合わせ。雨が降る台北101を真下から見上げる。(余談:この旅の後、2026年1月にアレックス・オノルドがこの台北101をフリーソロで登っていた。信じられない)

ランチは、仕事でお世話になっている方々と「鼎泰豐」へ。

まずは「18天台灣生啤酒(18 DAYS)」で乾杯。台湾啤酒が手掛ける生ビールで、その名のとおり賞味期限は製造からたった18日間しかない。非加熱でろ過のみ、輸送中も0〜7度で冷蔵し続ける徹底ぶりで、麦の香りと綿密な泡立ちが際立つ。輸出されないので、まさにここでしか味わえない一杯だ。
お昼から麦ジュースをいただく。平日のランチに誘っていただいたのに、仕事ではない自分だけがビールを頂いてるという軽い罪悪感w

蒸籠の蓋を開けると、薄皮の小籠包から湯気がふわりと立ち上る。ひとつ箸でつまみ、レンゲに乗せて皮を破ると、熱々の肉汁がじゅっと染み出してくる。生姜と黒酢をちょっと添えて、あふれた汁ごとすする。
トリュフ入りの小籠包から、デザートのような小籠包まで、小籠包だけで完結するフルコースだった。

ずっとコンビニ飯ばかり食ってきた胃に、急に高級なものが入ってきて驚いている。とはいえ「ご馳走になります」のひとことで、感謝しかない。
台北駅のクリスマス装飾



ランチの後お別れして、おみやげに頂いたパイナップルケーキ(サニーヒルズ、微熱山丘という人気の銘柄)などを預けるため、ホステルのある台北駅へ。
11月中旬の台北駅。ホールには早くも巨大なクリスマスツリーが設置されている。周囲の人々に倣って大理石の床に寝転がると、見知らぬ天井が視界に広がった。
台北駅の中央コンコースでは、週末になると多くの人々が床に座り込み、寝そべって食事を楽しむ光景が見られる。これは元々、インドネシアやフィリピンからの外国人労働者が日曜の休日に集まったことから定着した文化であり、かつては「リトル・インドネシア」とも称された。コロナ禍の一時期には着座禁止措置が取られたものの、激しい抗議を受けて2020年に解除。現在も、台北市民と外国人労働者が同じ空間を分かち合う、多様性を象徴する場所として機能している。
雨の西門町と幸福堂タピオカ

午後になると予報通り雨。龍山寺から西門町方面へ歩いていると、レトロな洋館が雨に濡れて妙な趣を放っている。

雨の西門町は車と通行人の傘が交差して、視界の情報量が一気に増す。


鮮奶脆皮甜甜圏は、その名の通り鮮奶(牛乳)を生地に練り込んで揚げた台湾の名物スイーツ。揚げたてに粉ミルクをまぶしてあって、外はサクッ、中はもちっとした食感が癖になる。
並んで買ったドーナツを傘の下で頬張ると、温かい揚げパンの甘さが冷えた指に染みる。

タピオカミルクティーの「幸福堂」へも。
幸福堂は2018年に台北で生まれた、黒糖タピオカミルクティーの専門店。西門町の旗艦店はこんな雨の日でも結構な行列。

店頭の大きな鍋で黒糖タピオカを直火で煮詰めている。これが幸福堂の名物「手炒(てちゃお)」スタイル。

カップの表面に黒糖の縞模様が浮かぶ「黒糖ブリュレ風」。一般観光客的に並んで、買って、店先で映え写真を撮るという日本の観光客の参考になりそうな行動を堪能した。
両親との合流、圧倒的経済格差
夜は、別ルートで阿里山・嘉義方面を旅していた両親が、ちょうどこの日に台北まで来てくれて合流。
同じ台北駅の南側に宿を取ったが、自分は2,000円のホステル、両親はシーザーパークホテルっていうちゃんとしたホテル。聞けば阿里山では2人で2泊3日で20万円以上だったそうで、僕の15日間の旅費トータルとあまり変わらない。なかなかの経済格差を感じた。



夜飯は、台北駅にある「小南門點心世界」で台湾ビールで乾杯。家族で同じ蒸籠を囲んで小籠包をつまむ夜は、それだけで贅沢だった。
Day 14(11/18)松山文創・迪化街・寧夏夜市
朝食、松山文創園区へ

朝食は宿近くの「老蔡水煎包」で水煎包(底をパリッと焼き上げた中華まん)。具は鮮肉(豚肉)、高麗菜(キャベツ)、韮菜(ニラ)の3種類、1個20元と財布に優しい。底のカリッ、皮のもちっ、噛めば肉汁ジュワッと、3拍子そろった満足感がある。
松山文創園区

今日のメインは松山文創園区。日本統治時代の1937年に建てられた松山菸廠(タバコ工場)の跡地を、リノベして文化・デザインの発信地としてオープンした複合施設だ。煙突のある旧工場と背後の高層ビルが並ぶ景色は、いかにも「過去と現在の同居」という台北らしい絵柄。

中央の巴洛克花園には、なぜかアヒルのオブジェ。背景にはお馴染みの高層ビル群、その対比が絵になる。
迪化街と大稲埕の老建築


午後は迪化街へ。乾物と漢方の街として知られる老街で、清朝末期からの建物がリノベされて並んでいる。
巨大な麻袋に山盛りの八角や唐辛子、干し椎茸が並ぶ漢方薬店の店先は、見ているだけで嗅覚が刺激される。
「孤独のグルメ」ロケ地でランチ

迪化街の永楽市場近くにある「原味魯肉飯」は、『孤独のグルメ Season5』台湾出張編のロケ地として知られる老舗食堂。劇中で井之頭五郎(松重豊)が乾麺と下水湯(モツスープ)を堪能したシーンが放送されてから日本人観光客が急増し、店内の壁には番組のスチールや有名人の記念写真がびっしり貼られている。


注文したのは排骨飯、乾麺、下水湯などなど。乾麺は五郎が劇中で頬張ったのと同じ素朴な台湾の味。下水湯はあっさりした旨味で、こちらも飽きない。両親も「美味しい」と頬を緩めていた。聖地巡礼としても、純粋なローカル飯としても、満足度が高い一軒だった。
古早味豆花

午後のおやつは古早味豆花、こちらも『孤独のグルメ』のロケ地。台湾の伝統的なデザートで、絹ごし豆腐のような豆花にトッピングを乗せ、シロップで食べる。

八宝豆花と抹茶かき氷の合わせ技。豆花のつるんとした口当たりと、抹茶氷のシャリシャリ感の対比が面白い。
この後は、2日連続で台北101に行ったり、お土産のショッピングに付き合ったり。
寧夏夜市

夜は寧夏夜市へ。士林夜市ほどの混雑ではないが、地元客の比率が高くて気軽に屋台を回れるのがいい。



ソーセージ、角切り牛肉、地瓜球(さつまいもボール)と、屋台料理をはしごする。台湾ソーセージ独特の甘さ、肉の旨み、揚げたての香ばしさで、夜市は次々と五感を刺激してくる。

夜市で黒豚と遭遇。リードに繋がれているところを見ると、誰かのペットらしい。台湾の夜は予測不能だ。
Day 15(11/19)桃園空港から成田、そして帰宅
最後の街歩き


最後の街歩きで台北駅周辺を散歩。北門エリアの近代化遺産が渋い。日本統治時代の建造物を文化施設に転用するパターンを、この旅では何度も目にした。台北駅の西側には高層ビルが建築中で、今度来る時はまた違った姿を見せてくれるのだろう。
途中で立ち寄った「台北記憶倉庫」は、1913〜1914年頃に三井物産株式会社の倉庫として建てられた赤レンガ二階建ての建物。日本統治期の物流拠点が今も街角に残っている事実に、最終日のしんみりした気持ちが上塗りされる。
桃園機場捷運で空港へ

桃園空港行きMRT「桃園機場捷運」のA1台北駅へ。改札近くの巨大なクジラのオブジェが、空港へ向かう旅情を演出してくれる。台北駅から空港まで約35分、150NTD。
桃園空港から成田へ

空港到着後、フードコートで最後の台湾飯。排骨・煮卵・キャベツ・つみれスープ・魯肉飯のセットは、台湾の食卓の縮図みたいな一皿。

出発ターミナルが異なる両親とはここでお別れ。タイガーエア台湾 IT202 便で成田へ。搭乗を待つ間に「黒松紅土風味」を一本、最後まで台湾を感じさせてくれた。便は30分遅れで離陸。

成田、そして帰宅

3時間ほどで成田到着。
12日間の本編、3日間の番外編、合わせて15日間の台湾滞在が、ここで完全に終わった。
シリーズ完結のメッセージ
12日間ペダルを踏み続け、3日間台北で過ごし、そして帰ってきた。
環島の途中で出会った景色、料理、人、街の音、すべてが今でも鮮明に残っている。台風に翻弄され、雨に降られ、峠で泣きそうになり、それでも完走できたのは、整備された環島1号線のインフラと、見ず知らずの僕を励ましてくれた台湾の人たちのおかげだ。
このシリーズを最後まで読んでくれた方、本当にありがとうございました。
いつかまた、台湾の風を浴びに行きます。次は陽明山の七星山か、いつかは中央山脈の玉山か。台湾はまだまだ、走り尽くせないし、登り尽くせない国だ。


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