斜里岳に向かうまで
未完の北海道完乗プロジェクト
2年前の2016年夏、JR北海道の完乗を目指して7日間という長期にわたり、北海道全域を鉄道で縦横無尽に移動していた。しかし、その直前に北海道を襲った台風の影響で道東の鉄道網が軒並み不通となり、釧網本線と石北本線への乗車を果たせなかった。代替手段としてレンタカーを使用したものの、心残りは大きかった。
今回の北海道遠征は、日本百名山制覇という主目的に加え、あの時果たせなかった釧網本線と石北本線の完乗という副次的な使命も兼ねている。乗り鉄と登山という二つの情熱を同時に満たす、野心的な計画を練り上げた。
綿密に組み上げた5日間プラン
立案した行程は以下の通り:
1日目(8月31日):東京から空路で新千歳空港。根室本線経由の大回りルートで釧路へ、そして釧網本線・石北本線を乗り継いで北見駅まで。
2日目(9月1日):北見からレンタカーで斜里岳登山。その後、羅臼岳の登山口まで移動。
3日目(9月2日):羅臼岳登山後、阿寒湖エリアへ移動。
4日目(9月3日):雌阿寒岳登山。北見へ戻り、鉄路で札幌駅へ。再びレンタカーを借りて羊蹄山へ。
5日目(9月4日):羊蹄山登山。札幌経由で新千歳空港から帰京。
乗り鉄区間を往路・復路のどちらに組み込むか悩んだが、Googleカレンダーでパズルのように組み合わせを検証し、最も時間効率の良い順路を導き出した。羊蹄山は当初計画にはなかったが、レンタカーを2ヶ所で分散利用する鉄道旅ならではの利点を活かし、スケジュールに追加できることが判明した。
航空券と乗車券の戦略的確保
年間計画の段階で北海道遠征は決定事項だったため、4月に実施されたバニラエアのセールで成田・新千歳間の往復チケットを確保済み。諸費用込みで14,720円という破格の価格だった。
乗り鉄に使用するのは「バニラエア ひがし北海道フリーパス」。15,500円で5日間、札幌近郊と道東のJR北海道路線が特急含めて乗り放題となる。バニラエアの搭乗券を新千歳空港駅のみどりの窓口で提示することで購入できる特別なきっぷだ。実際の使用は1日目と4日目程度だが、長距離特急を考慮すれば十分に元は取れる計算だ。
レンタカーはいつものニコニコレンタカー。夏休み期間の8月末までは上乗せ料金が発生するため、9月1日からの利用開始として回避した。これは偶然の産物だったが、結果的にコストダウンに寄与した。宿泊は乗り鉄で遅くなる1日目のみ、北見駅前の東横インを予約した。
2018年8月31日 新千歳から道東鉄道大周遊

恒例の早朝成田空港へのアクセス。成田第3ターミナルからの出発。

11時前の新千歳空港到着後、空港内ローソンで「からあげクン ガラナ味」という新千歳空港限定商品を発見。北海道らしさ満点の魅惑的なフーズだ。


空港内で既に北海道を満喫。いやはや、素晴らしい旅の幕開けだった。ただし、ガラナ味のからあげクンは想像以上に甘い味わいで、少々面食らった……

新千歳空港のみどりの窓口で、今回の旅の要となるバニラエア ひがし北海道フリーパスを入手。快速エアポートで南千歳駅へ向かう。

南千歳駅でスーパーおおぞら釧路行きに乗り換え。特急ながら釧路駅まで210分を要する。新幹線なら東京から姫路まで到達できる時間だ。改めて北海道の広大さを実感する。

16時過ぎ、釧路駅で釧網本線網走行きに乗り換え。こちらの乗車時間はなんと220分。1両のワンマンカーで延々と乗り続ける、まさに鉄道旅の醍醐味だ。

途中の知床斜里駅で約30分停車。時刻は18時30分。


停車時間を利用して駅外へ。セイコーマートで十勝ブランデーハイボールと豚串という、いかにも北海道らしい食料を調達した。
19時45分、網走駅で釧網本線から石北本線へ乗り換え。

長きにわたる鉄道旅もようやく終了し、21時前に北見駅へ到着。駅前のホテルで就寝準備に入る。
2018年9月1日 北見から斜里岳への出陣
翌朝、ニコニコレンタカー北見駅店でお馴染みのフィットをレンタル。返却期限は8月3日14時。途中のコンビニで、飛行機持ち込み制限により携行できなかったペットボトル水や行動食を調達し、斜里岳登山口へ向かった。
実際に登ってみた
日程: 2018年9月1日(土) [日帰り] 天候: 曇り
アクセス
清岳荘前駐車場を利用。登山届ポスト前に協力金100円を投入。
地図・標高グラフ
| ⏱タイム | 🏃距離 | ↗登り | ↘下り |
|---|---|---|---|
| 04:13 | 11.1km | 1,117m | 1,118m |
コースタイム
ルート: 清岳荘-(新道コース)-斜里岳-(新道コース)-清岳荘
- 10:10
- 10:20
- 10:43
- 11:24
- 11:46竜神ノ池
- 11:52
- 12:21
- 12:52上二股
- 13:16
- 13:42
- 14:08旧清岳荘 登山口
- 14:20清岳荘 登山口
羅臼岳への移動と車中泊準備
斜里岳下山後は、翌日登頂予定の羅臼岳まで素早く移動を開始。羅臼岳登山口の駐車場は数台分しかスペースがないため、できるだけ早期に確保したかった。

休憩のため途中の道の駅に立ち寄り。2年前にも訪れたことがある場所だ。

道の駅に隣接する知床世界遺産センターの立派な建物。知床の豊かな自然や野生動物について学習できる。

翌日登頂する羅臼岳は、日本百名山の中でもヒグマとの遭遇率が最も高いとされる山。しっかりとヒグマ対策の知識を仕入れておく。


知床五湖への道中で分岐し、不安になるほど心細い道を延々と進んだ先に羅臼岳の登山口がある。ホテル地の涯は昨年営業を停止していたが、今年からリニューアルオープンしており、ホテル駐車場には多数の車両が停まっていた。こちらは登山者の駐車は禁止されている。

この登山者専用トイレを挟んで向こう側が登山者向けの駐車スペース。6台程度の狭いスペースだが、なんとか駐車を確保できた。胸を撫で下ろした。


翌日は早朝出発。羅臼岳登山口への方向を確認し、車中泊の準備を整える。なお、この地点では携帯電話は完全に圏外だった。
下山後の感想
コース状況・危険箇所等
前日の雨の影響で、泥濘が随所に発生していた。旧道と新道の分岐点まででも何度か渡渉があり、半分程度靴が浸かる深さの箇所も存在した。渡渉地点はピンクテープによる丁寧な案内があるため、ルートファインディングに困ることはない。
沢登りのない新道を選択した場合でも、スパッツは必須装備だと痛感した。自分は軽量化(LCCの機内持ち込み手荷物重量制限)のため携行しておらず、泥はね被害が甚大だった。
足元に注意を集中していると、頭上の枝に頭部を激突させること10回以上。上下両方への注意が必要だ。
北海道遠征1座目の手応え
今年の北海道遠征は道東の3座と羊蹄山を計画。4泊5日の日程は以下の通り: 1日目:新千歳空港から釧路経由(大回り)で北見まで乗り鉄旅 2日目:レンタカーで斜里岳 3日目:羅臼岳 4日目:雌阿寒岳、鉄路で北見から札幌、再びレンタカーで半月湖野営場へ 5日目:羊蹄山、札幌経由で新千歳空港から帰京
その1座目となる斜里岳に登頂完了。北見でのレンタカー受取が8時開始のため、10時からとやや遅めのスタートとなった。
渡渉があることは事前に把握していたため天候が気がかりだったが、当日は曇り。雨でなかっただけでも幸運だったが、前日の雨で泥濘だらけ、さらに何度もの渡渉で靴とパンツは泥まみれとなった。
足元ばかりに注意して歩いていると、木の枝に頭部を激突させること10回超。上下両方への注意が必要な教訓を得た。
斜里岳の展望は残念な結果だったが、翌日登頂予定の羅臼岳は天気予報で晴れマーク。斜里岳のリベンジで素晴らしい景色が見られることを期待したい。
かかった費用と装備
遠征中にかかった費用は、遠征最初の百名山にまとめて書くことにします。
交通費用
- 航空便: 成田↔新千歳空港往復 14,720円
- 電車・バス: 電車 604円 + ひがし北海道フリーパス 15,500円 + 高速バス(成田空港)900円 + 1,000円
- レンタカー: 54時間 9,800円 + 24時間 3,800円
- 駐車場・燃料: 駐車場 500円 + ガソリン代 5,863円
交通費合計: 52,687円
宿泊費用
- 宿泊費: 5,700円
宿泊費合計: 5,700円
食費・その他
- 食費: 朝昼晩 5日分 10,000円 + 行動食 4日分 1,200円
食費合計: 11,200円
総費用
合計: 69,587円
今になって思うこと
楽しみにしていた北海道遠征。いつもとは一線を画す鉄道とレンタカーを組み合わせた計画となった。
前年の2017年は利尻山のみの登頂だったが、今回の北海道遠征では斜里岳・羅臼岳・阿寒岳・羊蹄山の4座に挑戦。残りは大雪山・トムラウシ山・十勝岳・幌尻岳で、これらは2021年に登頂完了している。今回羊蹄山まで計画に組み込んだおかげで、最後の4座は旭川空港から時計回りに大雪山系を周回するだけで済み、効率的な遠征が実現できた。
鉄道旅行と登山の両方を満喫したい人には、この行程パターンは参考になるかもしれない。
































