開聞岳に向かうまで
九州の日本百名山5座を登る遠征計画
群馬と新潟の4座に登った遠征を終え、2週間後に九州の百名山を登る遠征旅行を開始した。
九州の百名山は、屋久島の宮之浦岳に大学時代に登った経験があるため、残りの5座(開聞岳、九重連山、阿蘇山、祖母山、霧島山)を今回の遠征で全て制覇する計画を立てた。
九州遠征の戦略と開聞岳の位置づけ
九州の百名山は比較的南部にまとまっているため、鹿児島空港を起点とする時計回りルートが最効率。LCCジェットスターの成田-鹿児島便を1月のセールで往復8,740円という破格で確保していた(平日設定がコツ)。
4日間で5座という超ハードスケジュールで、阿蘇山と祖母山は1日2座のツメツメ遠征。開聞岳は九州遠征の先陣を切る記念すべき第1座目として、薩摩半島最南端の「薩摩富士」への挑戦となった。
開聞岳の特徴と魅力
開聞岳(924m)は鹿児島県薩摩半島の最南端に位置する美しい円錐形の火山で、「薩摩富士」の愛称で親しまれている。標高は1,000m未満の低山ながら、日本百名山に選ばれたのは、その独立峰としての美しい山容と360度の展望、九州最南端という地理的重要性による。
大学時代に屋久島から鹿児島市内に戻るフェリーから初めて見た開聞岳の均整のとれた円錐形は、まさに「あんな山があるんだ」と感嘆させられる美しさだった。それから何十年も経って実際に登ることになるとは、人生の不思議さを感じる。
九州遠征の前日入りと鹿児島グルメ体験


2018年6月14日、成田空港からLCCジェットスターで鹿児島空港へ。雨模様の空港到着で若干不安になったが、以前も鹿児島空港で「条件付きフライト」を経験しており、この空港との相性の悪さを再認識。
空港近くのニコニコレンタカーで4日間のレンタカーを確保。車種はいつものフィットを指名し、九州5座の長距離遠征に備える。鹿児島市内では、九州遠征の前哨戦として天文館むじゃきで「プリン白熊」を堪能。鹿児島名物しろくまの元祖店での味わいは、九州遠征の幸先良いスタートを感じさせてくれた。




実際に登ってみた
日程: 2018年6月15日(金)[日帰り] 天候: くもりのち晴れ
アクセス
往路: 鹿児島市内(天文館むじゃき) → 池田湖 → かいもん山麓ふれあい公園
復路: かいもん山麓ふれあい公園 → 瀬平自然公園 → 知覧特攻平和会館 → 津貫蒸留所 → 阿蘇大観峰


池田湖を過ぎると、目の前に現れる開聞岳の美しい円錐形。山頂は雲に覆われていて展望を望めなさそうで少し残念だったが、雨が降っていないだけマシだと思って登山を決行。


かいもん山麓ふれあい公園の駐車場に駐車。公衆トイレもあり。
地図・標高グラフ
⏱タイム | 🏃距離 | ↗登り | ↘下り |
---|---|---|---|
03:14 | 8.7km | 951m | 943m |
コースタイム
ルート: かいもん山麓ふれあい公園-開聞岳-かいもん山麓ふれあい公園
- 05:59
- 06:11
- 06:40
- 07:30
- 08:11九合目
- 08:40五合目
- 09:02
- 09:13かいもん山麓ふれあい公園
下山と九州遠征観光の充実
瀬平自然公園からの開聞岳撮影




下山後は翌日の九重連山まで7時間の長距離ドライブだが、時間に余裕があるため九州観光を満喫。国道226号を北上し、海岸側の瀬平自然公園から開聞岳を撮影。ここから見る開聞岳の山容は絶景で、登った山を外から眺める贅沢な体験。


開聞岳の横に見える硫黄島も美しく、薩摩半島の海と山の調和した風景を楽しめた。登山だけでなく、多角的に開聞岳の美しさを味わえるのも九州遠征の醍醐味。
知覧特攻平和会館での歴史学習


以前から訪問したかった知覧特攻平和会館に入館。鉄道アクセスが悪く行けずにいたが、レンタカーでの九州遠征により念願が実現。館内には特攻隊員の写真パネルが並び、名前の文字列とは異なる重みと感慨深さを実感。
SF小説「三体」にも登場する知覧特攻平和会館は、「三体」ファンにとっての聖地巡礼でもある。戦争の歴史を学ぶ貴重な体験として、開聞岳登山と合わせて充実した鹿児島観光となった。
マルス津貫蒸留所での日本最南端ウイスキー体験


本坊酒造の津貫蒸留所は日本最南端のウイスキー蒸留所で、以前枕崎駅から伊集院駅へ行くバス旅の途中で見かけていた念願の訪問地。比較的小規模な蒸留所だが、併設されているウイスキーBARのアンティークな雰囲気が素晴らしい。
車での訪問のためテイスティングはしなかったが、日本最南端でのウイスキー蒸留の歴史と技術を学ぶ貴重な体験。開聞岳登山と合わせて、鹿児島の自然と文化を多角的に楽しめた。
阿蘇大観峰での夕日鑑賞と遠征継続


今日の目的地の九重連山へ行く途中の阿蘇大観峰では、阿蘇五岳の雄大な景色を堪能。根子岳のギザギザした特徴的な山容も印象的で、翌日登る九重連山への期待が高まる。大観峰からのパノラマは素晴らしく、九州の火山地形の壮大さを実感。








日の入りの時間まで見届けて、翌日の九重連山登山口である長者原ビジターセンターに向かった。開聞岳から始まった九州遠征の充実した1日目を締めくくる美しい夕日だった。
下山後の感想
危険箇所と注意点
開聞岳の登山道は全般的に危険箇所は少なく、火山性の地質による優れた排水性で、雨後でも泥濘や滑りやすい状況はほとんどなし。ロープが設置されている箇所もあるが、傾斜はそれほどでもなく、頼らなくても登山可能。
ただし火山岩と礫の登山道は足元が不安定になりやすく、特に下山時は慎重な歩行が必要。山頂付近の岩場も意外と広いが、展望に夢中になりすぎて足元への注意を忘れないことが重要。
登山の印象と魅力
九州遠征1座目の開聞岳は、前日の雨模様で展望を諦めていたが、山頂では見事な360度の大展望を楽しめた。遠征の幸先良いスタートとして最高の結果。1,000m未満の低山ながら、独立峰ならではの素晴らしい展望が開聞岳の最大の魅力。
かかった費用と装備
遠征中にかかった費用は、遠征最初の百名山にまとめて書くことにします。
交通費用
- 飛行機(成田-鹿児島空港往復): 8,740円
- 電車: 682円
- 高速バス(成田空港): 1,900円
- レンタカー96時間: 14,250円
- 駐車場: 700円
- ガソリン代: 3,407円
交通費合計: 33,656円
観光・雑費費用
- 知覧特攻平和会館入場券: 500円
- 温泉: 810円
観光・雑費合計: 1,310円
宿泊・食費・その他
- 朝昼晩4日分: 8,000円
- 行動食4日分: 1,200円
その他費用合計: 9,200円
総費用
合計: 44,166円
今になって思うこと
1,000m未満の低山でありながら日本百名山に選ばれることへの議論もあるが、実際に登ってみると深田久弥の選定眼の確かさを実感。
独立峰としての美しい山容、360度の展望、九州最南端という地理的重要性、薩摩半島の歴史と文化との関連性など、標高では測れない価値がある。大学時代にフェリーから見た「あんな山があるんだ」という感嘆から、実際に登頂するまでの人生の軌跡も感慨深い。
九州遠征の先陣を切る山として、開聞岳は期待以上の体験を提供してくれた。登山だけでなく、知覧特攻平和会館、津貫蒸留所、阿蘇大観峰といった九州の歴史と文化を学ぶ機会も得られ、単なる山登り以上の価値ある遠征の始まりとなった。
開聞岳の魅力は登山だけでなく、薩摩半島全体の自然と文化を楽しめること。日本百名山の中でも特に「総合的な体験」を提供してくれる山として、多くの登山者におすすめしたい。深田久弥に感謝している理由が、登ってみて初めて理解できた名山だった。