乗鞍岳から笠ヶ岳まで
笠ヶ岳に向かうまで
乗鞍岳から下山して、次の目標である笠ヶ岳に向かう準備を進めた。標準コースタイムで15時間という、今回の遠征でも最も困難とされる笠新道のピストンが待っている。前回の北海道遠征で幌尻岳の日帰りを経験していたとはいえ、笠新道の急登は別格との評判を聞いていた。
2021年8月7日 笠新道を日帰りピストンして笠ヶ岳に登る
前日の乗鞍岳下山後、夕方18時頃には新穂高温泉の駐車場に到着していた。さすがに週末前の金曜日夜ということもあり、すでに多くの車が駐車しており、空きスペースを探して車を停めた。朝4時台からの出発を予定していたため、なるべく早く休息を取ることにした。

長時間の行程に備えて、まだ暗いうちから出発することにした。駐車場で車中泊していた他の登山者たちも、似たような時間帯に動き始めており、やはり笠ヶ岳の日帰りピストンを狙っている人は多いんだなと感じた。標準15時間のコースタイムをいかに短縮できるかが鍵となる一日だった。
実際に登ってみた
日程: 2021年8月7日(土) 日帰り 天候: 晴れ
アクセス
新穂高温泉の市営新穂高第3駐車場に駐車。新穂高温泉エリアには複数の駐車場があるが、早朝からアクセス可能で無料の第3駐車場を利用した。
地図・標高グラフ
⏱タイム | 🏃距離 | ↗登り | ↘下り |
---|---|---|---|
11:58 | 22.5km | 2,183m | 2,174m |
コースタイム
ルート: 新穂高温泉-(笠新道)-笠ヶ岳山荘-笠ヶ岳-笠ヶ岳山荘-(笠新道)-新穂高温泉
- 04:13新穂高温泉無料駐車場
まだ薄暗い午前4時過ぎ、ヘッドライトの明かりを頼りに駐車場を出発。空気はひんやりとしており、これから始まる長丁場への緊張感を感じながら歩き始めた。
- 04:21新穂高温泉バス停
- 04:31登山口(双六岳・笠ヶ岳方面)
新穂高温泉から笠新道登山口までは長い林道歩きが続く。
- 04:49お助け風穴
- 05:02中崎橋
- 05:11
- 07:58杓子平
杓子平のカール ついに杓子平のカール地形が目の前にドーンと現れ、今まで続いた辛い急登が一気に報われる瞬間がやってきた。氷河によって削り出されたこの圧巻の景観は、笠新道の最大のご褒美だ。ただし、笠ヶ岳山頂までの道のりはまだまだ遠い。
抜戸岳までの残り300mの高度差を登り切れば、ようやく笠新道の急登地獄から解放される。ここからが本当の勝負どころだ。
チングルマ そろそろ綿毛に変身しそうなチングルマを発見。季節の移ろいを感じさせる高山植物の変化が興味深い。
ミヤマキンポウゲ 振り返ると、カール地形特有のスプーン状の地形がよくわかる。登るにつれて徐々に斜度がきつくなっていくため、稜線にたどり着きそうでなかなかたどり着けず、ヒーヒー言いながらの登りが続いた。
- 09:15
- 09:44
- 10:11
- 10:26
- 11:02笠ヶ岳山荘
- 11:23抜戸岩
- 11:58笠新道分岐
- 12:00分岐指導標(仮称)
- 13:08杓子平
- 15:07
- 15:23中崎橋
- 15:36お助け風穴
- 15:50登山口(双六岳・笠ヶ岳方面)
- 15:59
- 16:11新穂高温泉無料駐車場
新穂高温泉 ひがくの湯
下山後は新穂高温泉の外れにある日帰り温泉「ひがくの湯」でお湯につかって疲れを癒した。

令和の時代になっても、スーパーファミコンが自由に遊べる温泉。

鉄道模型を走らせることができる温泉。

極めつけに、うまい棒を好きなだけ食べられる温泉。登山後の疲れた体には嬉しすぎる、ホスピタリティの塊のような温泉だった。
新穂高温泉からは高山市街地に一旦下り、翌日登る予定の御嶽山の登山口への途中にある道の駅ひだ朝日村で車中泊をした。
下山後の感想
2日目の笠ヶ岳は、今回の遠征で一番きつそうな笠新道ピストンの日帰りだったが、前回の北海道遠征で幌尻岳の日帰りを経験していたので、大したことないだろうとたかをくくっていた。
しかし、笠新道の登りは予想以上に厳しかった。登っている時間があと数時間遅くなっていたら、確実に熱中症で倒れていただろうと思うほどの急登だった。一定の斜度で延々と続く登りは、体力的にも精神的にも消耗が激しい。
その分、笠新道を抜けた後に始まる稜線歩きの開放感は格別だった。標高差1400mを一気に登り切った後の達成感と、森林限界を超えた稜線からの大展望は、まさに登山の醍醐味そのものだった。
天候にも恵まれ、ギリギリで雨に降られることもなく、安堵しながら翌日の御嶽山へ向かうことができた。
かかった費用と装備
費用は、今回の遠征の中で最初の日本百名山 乗鞍岳の記事でまとめています。
今になって思うこと
日本三大急登(烏帽子岳のブナ立尾根、谷川岳の西黒尾根、甲斐駒ヶ岳の黒戸尾根)や北アルプス三大急登(烏帽子岳のブナ立尾根、燕岳の合戦尾根、剱岳の早月尾根)には漏れているが、笠新道はそれらと同等かそれ以上の急登だと断言できる。(谷川岳の西黒尾根がなぜ三大急登に選ばれているのか、本当にわからん。)
笠新道の特徴は、登りやすく整備されていながらも、同じような斜度の道が延々と続くため、休憩する隙を与えてくれないことだ。一定のペースで登り続けるしかなく、体力的にも精神的にも相当な消耗を強いられる。
しかも、杓子平から先はカール地形を登っていくことになる。カール地形はスプーン状になっているため、登るにつれて斜度が厳しくなってくる。登りの最後でこの仕打ちは本当に心が折れそうになった。
ただし、この厳しさを乗り越えた後の稜線歩きと山頂からの展望は、間違いなく北アルプス屈指の素晴らしさだ。笠ヶ岳から見る槍ヶ岳・穂高岳の眺めは、苦労して登った者だけが味わえる特別なご褒美と言えるだろう。
初心者にはおすすめできないコースだが、ある程度の登山経験を積んだ登山者であれば、ぜひ一度は挑戦してもらいたい。ただし、夏場の登山では熱中症対策を万全にし、早朝出発は必須。