個人開発アプリ「歩測」をリリースできないまま閉じた話:Google Play クローズドテスト 12 人の壁

歩測サービス終了 作ってみた
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歩いた歩数で日本地図を描くゲームアプリ「歩測」を、2026 年 6 月 1 日にサービス終了することにしました。

アイデアに着手したのが約 9 ヶ月前、実際にサーバーを動かして運営していたのは 2026 年 2 月から約 3 ヶ月。一度も正式リリースしないまま、Google Play のストアに並ぶ手前で閉じます。

この記事は、その顛末と、「動くものができた」その先で待っていた壁、そして次に活かしたい学びをまとめた話です。同じように個人開発をしている方の参考になればと思います。

忙しい人向けまとめ

  • 作ったもの: 歩数感覚で日本地図を描く Android ゲーム「歩測
  • 詰まったところ: Google Play の クローズドテストで 12 人のテスター が必要なルール(個人デベロッパー新規登録の場合)
  • 結果: 2 ヶ月で応募 2 人、実プレイには至らず。リリース要件を満たせず断念
  • 持ち帰れたもの: 海岸線の歪みエンジン、サーバーサイド地図レンダリングの知見、Note 記事への流入
  • 教訓: 「動くものができた」と「リリースできる」は別の話

「歩測」がどんなアプリだったか

簡単に言うと、歩数を「感覚」で当てるゲームですね。

カウンターが自動で歩数を刻んでいくのですが、画面の数字は途中から 1 桁ずつ隠れていく ようになっています。「ストップ」を押した時点で、今何歩だったかをリール式の入力で答える。実際の歩数との誤差が小さいほど、画面に描かれる日本地図がきれいに仕上がる、という仕組みです。

伊能忠敬が日本一周の測量で「歩測」して地図を作った逸話から、アイデアをもらいました。

技術的な詳細やゲームデザインの試行錯誤は Note に書いたので、興味があればこちらも読んでみてください。

なお、本アプリはクローズドテスト段階で開発を終えたため、一般リリースには至っておらず、ストア経由でインストールされた既存ユーザーはいません。本記事はあくまで開発者個人としての撤退記録です。

何が予想外だったか

クローズドテスト 12 人ルール

2023 年 11 月以降に作られた個人デベロッパーアカウントは、製品版リリースの前に 「クローズドテスト」を 12 人以上のテスターで 14 日間連続実施する ことが必須になっています。

これ、単に「12 人にインストールしてもらえばいい」という話ではないんですよね。Google Play Console 経由でテスト用のメールアドレスを登録し、対象者が実際にインストールして 14 日間使う 必要があります。家族や友人に頼んで形だけ通すこともできなくはないのでしょうが、歩く習慣を後押しするアプリとしてはちょっと趣旨が違う気もして、ちゃんと「歩測のコンセプトに興味を持った人」に集まってもらおうと考えました。

結果、テスター応募フォームを公開して 2 ヶ月、応募は 2 人。実プレイには至らず、テスト要件は満たせませんでした。

自分のリーチではリリースに届かなかった

これに気づいたとき、けっこう堪えました。

僕のように SNS フォロワー数百人レベルで細々とやっている個人開発者の場合、リリース前段階で 12 人の能動的な協力者を集めるのが想像以上に難しい。「動かしてみたい」と思ってもらえるリーチが、僕にはなかったということです。

数千人規模のフォロワーを持っていたり、強いコミュニティに属している開発者なら、12 人を集めるのは難しくないはずです。あくまで僕個人のケースとして、「動くものを作ってからリリースする」という王道ルートが、自分のリーチでは通用しなかった、という話です。

月額固定費が静かに重荷になる

API サーバーは Fly.io に置いていました。最初はリリース後の運用を見据えて 1GB のメモリ を割り当てていて、これで 1 ヶ月運用したときの請求が $7.83。金額そのものは小さいのですが、「使ってる人がほぼいないのに毎月課金される」のがじわじわ精神的に来る んですよね。

「これ、自分しか使ってないな……」と気づいてから 512MB に縮小 したところ、その後の月は無料枠(trial credit)に収まりました。下げてみたら全然動いた、というのが正直なところで、最初から小さく始めるべきだったなと思います。

そのまま運用しても月 $0 で続けられたわけですが、「使われていないものを動かし続ける」こと自体に気持ちが向かわなくなっていて、今回サービス終了に踏み切りました。

固定費が出る前提でインフラを選ぶと、ユーザーがいなくても精神的に重くなる、というのが個人開発での学びです。

それでも持ち帰れたもの

撤退の話ばかりだと気が滅入るので、ちゃんとプラスになった部分も書いておきます。

海岸線の歪みエンジン

歩測のコアは、歩数の誤差で海岸線を歪ませる アルゴリズムでした。これは TypeScript で書いた純粋なロジックで、別プロジェクト(atlas-proto という世界地図版の試作)にそのまま転用しています。「日本の海岸線」が「世界各国の輪郭」になっただけで、エンジンとしては同じものが動く、という感じです。

歩測自体は閉じましたが、このエンジンは別の形で使えるので、まるっきりゼロからの撤退ではない、と自分に言い聞かせています。

サーバーサイド地図レンダリング

D3.js + jsdom で SVG を生成して、resvg-js で PNG に変換する仕組みを作りました。OGP 画像をユーザーごとに動的生成する用途で、Node.js のサーバー上で動きます。これも他のプロジェクトで使えるノウハウとして残りました。

Note 記事の流入

開発の過程を Note に 2 本書いたのですが、これがちょくちょく読まれているのは嬉しい誤算でした。アプリ自体は成功しなかったけれど、「考えたこと」「作ったプロセス」は資産として残る という当たり前のことを、改めて実感しましたね。

次にやるとしたら何を変えるか

もう一度同じテーマで挑むなら、こうするかなと思います。

  1. リリース前に「集まってくれる人」を確保する — 完成度より、最初の 10〜20 人を先に作る。Discord でも知人ネットワークでも何でもいい
  2. 固定費の発生を遅らせる — クライアント完結で動くプロトタイプを先に作って、サーバーが必要になるまで Fly.io 等を契約しない
  3. クローズドテスト要件を最初に確認する — Google Play のリリース条件は時代によって変わる。技術選定の前に確認すべきだった

逆に、変えなくていいなと思った部分もあります。

  • コアアイデアの面白さに賭けたこと — 歩数を感覚で当てるという仕組みは、自分でも遊んで楽しかった
  • 公式の技術スタックで作ったこと — React + Capacitor + TypeScript は Web の知識が活かせて、生産性が高かった

おわりに

歩測は閉じますが、「歩数を感覚で当てる」という遊び方「歪みエンジン」という技術 はちゃんと残ります。

サービスは hosoku.creco.net で、サービス終了後もページとして残します。Web サイト自体は Cloudflare Pages の無料枠で動くので、過去プロジェクトの記録として置いておきます。

応援してくれた方、テスターに応募してくれた方、ありがとうございました。

次の個人開発で何を作るかは、まだ決めていません。歪みエンジンを世界地図に使う atlas-proto を引き続き触りながら、次のテーマをのんびり探そうと思います。

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