日本百名山全山踏破 96座目 塩見岳 | 台風直撃前の緊迫アタック

塩見岳山頂 日本百名山
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塩見岳に向かうまで

前日の御嶽山から、南アルプス南部の塩見岳へと山行を移す。御嶽山登山を終えた後、鳥倉林道を進み、ゲート前の駐車場を目指した。

大鹿村にはコンビニが存在しないため(道の駅は営業している)、事前に国道153号沿いのセブンイレブンで必要な食料を調達しておいた。また、この山域は携帯電波が届かないことが容易に予想できたため、事前にコンパスで登山届を提出して万全を期した。

2021年8月9日 台風が迫る中での塩見岳ピストン登山

確認していた天気予報では、台風が接近しており、午前中から暴風雨になる可能性が高い予報だった。当初の計画では午前4時出発を予定していたが、気象状況を考慮して大幅に前倒しし、午前0時過ぎの出発に変更することを決断。まだ陽が沈んで間もないうちから、強制的に睡眠に入った。

実際に登ってみた

日程: 2021年8月9日(月) 日帰り 天候: くもりのち雨

アクセス

鳥倉林道ゲート前の駐車場に駐車。登山口までは自転車を活用した。

地図・標高グラフ

⏱タイム🏃距離↗登り↘下り
10:3424.7km2,082m2,063m

コースタイム

ルート: 鳥倉林道ゲート-三伏峠小屋-本谷山-塩見岳-塩見岳東峰-塩見岳-本谷山-三伏峠小屋-鳥倉林道ゲート

山行タイムライン
  • 00:14
    鳥倉林道ゲート(駐車場)

    前回の乗鞍ヒルクライムで使用した自転車を活用し、ゲートから鳥倉登山口までの林道区間を効率的に移動する。

  • 00:35
    鳥倉林道登山口
    鳥倉登山口バス停
    鳥倉登山口バス停

    暗闇の中を自転車で約20分間漕ぎ続け、道路状況への不安を抱えながらもなんとか到着。空を仰ぐと、山奥ならではの美しい星空が広がっていた。

  • 01:20
    豊口山のコル
  • 01:53
    ほとけの清水
  • 02:23
    塩川・鳥倉ルート合流点
  • 02:46
    三伏峠小屋
    三伏峠の夜明け前
    三伏峠

    三伏峠までの登山道は暗闇でも比較的分かりやすく整備されており助かった。しかし、途中から雨が降り始め、シトシトからポツポツへと変化。レインウェアのフードを被ると、ただでさえ限られた視界がさらに狭くなり、歩行の難易度が一段と上がった。

  • 03:06
    三伏山
  • 03:47
    本谷山
    本谷山
    本谷山

    稜線に入ったが、予想していたほど風は強くない。もし稜線で激しい風が吹いているようなら撤退も考えていたが、この状況なら山頂を目指せそうだと判断した。

    塩見小屋へ続くゴーロの登山道
    ゴーロ

    ゴーロを塩見小屋に向かって登っていく。明るくなったためヘッドライトを収納しようとした際、被っていたはずの帽子がないことに気付いた。どこかで落としてしまったのだろう。少し戻って探してみたが見つからず、時間的余裕もないため諦めて先に進むことにした。

  • 05:06
    塩見小屋
    塩見小屋の朝の風景
    塩見小屋

    小屋に宿泊していた登山者と思われる男性がトイレのため外に出ており、挨拶を交わした。これまで闇の中をひたすら5時間ほど歩き続けていたため、人との出会いに心から安堵した。

    塩見岳への稜線
    塩見岳への稜線

    ここから標高差300mを上がれば塩見岳山頂。ただし、稜線には風を遮るものが何もなく、風の影響をもろに受ける区間となる。

    岩場での慎重な登攀
    岩場

    ハイマツ帯から岩場へと地形が変化する。普段なら岩場は大好物だが、風雨下の今は緊張感を持って慎重に三点支持で登るしかない。

    風雨に耐えるイワツメクサ
    イワツメクサ
    塩見岳山頂部

    山頂に近づくにつれ、風速は確実に激しくなってくる。しかし、体が持っていかれるほどではないため、慎重に進めば登頂は可能だと判断。

    高山に咲くタカネシオガマ
    タカネシオガマ
    厳しい環境に咲くチシマギキョウ
    チシマギキョウ
  • 06:08
    塩見岳
    台風接近中の塩見岳山頂
    塩見岳山頂

    何度もピークを越えて、ようやく塩見岳山頂に到達。風雨のため長時間留まることは危険と判断し、背後に見える塩見岳東峰へと向かう。

  • 06:11
    塩見岳東峰
    塩見岳東峰
    塩見岳東峰

    こちらの方が5m高い真の最高点。

    台風前の険しい気象条件

    景色は全く見えず、一瞬「何のために登ったのだろう」と自問しかけたが、間もなく嵐が本格化する状況でそんなことを考えている余裕はない。安全第一、すぐに下山しよう。

  • 06:14
    塩見岳
    塩見岳西峰の三角点
    塩見岳西峰の三角点

    塩見岳西峰に戻ると、もう一つ三角点らしきものがあった。旧三角点の原三角測点だったのだろうか。謎である。

    風雨に負けないクモマミミナグサ
    クモマミミナグサ
    ミネウスユキソウ
    ミネウスユキソウ
    綺麗な赤色チャート
    綺麗な赤色チャート

    赤というよりも紫がかったレンガのような色合いが印象的だった。

  • 06:58
    塩見小屋
    安全な樹林帯への下山路

    ようやく安心できる樹林帯まで下ることができた。登りの時は暗闇で見えなかったが、苔むして奥深い緑に包まれた登山道は、まさに南アルプスらしい豊かな自然環境を感じさせる。

    樹林帯のシナノオトギリ
    シナノオトギリ
    下山路で出会ったゴゼンタチバナ
    ゴゼンタチバナ
  • 08:09
    本谷山
    復路での本谷山再通過
    本谷山

    ピストンコースなのに、往路が真っ暗だったため既視感がまったくないという不思議な復路体験。

    ヤマトリカブトとタカネコウリンカの群生
    ヤマトリカブトとタカネコウリンカの群生
  • 08:47
    三伏山
    三伏山通過時の強風
    三伏山

    ここは風が特に強かった。台風が近づいているため、山頂では更に風が激しくなっているに違いない。

  • 08:58
    三伏峠小屋
    三伏峠小屋
    三伏峠小屋

    登りの時に休憩で利用したベンチを何気なく見ると、地面に自分の帽子が落ちているではないか。ここで落としていたのか!何はともあれ見つかってよかった。

    日本一高い"と言われる"峠
    日本一高い”と言われる”峠

    Wikipediaなら(誰に?)と突っ込まれそうな表現だ。

  • 09:17
    塩川・鳥倉ルート合流点
    丸太材のハシゴ
    丸太材のハシゴ

    雨の時は滑るため、これがかなり恐怖だった。

  • 09:37
    ほとけの清水
    ほとけの清水
    ほとけの清水

    使用しなかったが、水はしっかりと出ている。

  • 10:01
    豊口山のコル
    マルバダケブキ
    マルバダケブキ
  • 10:31
    鳥倉林道登山口
    下山後の鳥倉林道登山口
    鳥倉林道登山口

    ゲートまでは自転車でのダウンヒルだが、グレーチングの蓋にタイヤが嵌りそうで、あまりスピードは出せなかった。

  • 10:48
    鳥倉林道ゲート(駐車場)

道の駅歌舞伎の里大鹿で鹿肉を食べる

鹿肉ステーキ定食
鹿肉ステーキ定食

前日も立ち寄った道の駅で、無事に下山できたことを祝して鹿肉ステーキをいただく。ジビエ料理として大鹿村の特産品であり、登山後の疲労回復にはよさそう。

その後、車で塩尻駅までレンタカーを返却し、東京の自宅に帰宅した。

下山後の感想

遠征最終日となる4日目。夕方までには塩尻駅でレンタカーを返却しなければならないため、逆算して午前4時発を予定していた。しかし、本州西から上陸した台風が接近し、午前のうちから暴風雨となる予報が出ていたため、4時間繰り上げて午前0時発に変更する決断を下した。

真っ暗闇での登山というと富士山などで経験はあるが、ここには一緒に登る登山者もおらず、雨も降っていたため、かなり心細い状況だった。ヘッドライトで足元だけを照らし、ほぼ地面しか見ていない中で淡々と登る。踏み跡がしっかりしており、暗闇でも道を迷うことがなかったのは本当に助かった。

塩見岳へのアプローチ、風雨の中での岩場歩きは緊張の連続だった。時間が遅くなり、体が持っていかれるほどの風量になったりしたら、とても登れなかったと思う。

今回の山行で発見したことは、ピストンでも往路が暗いうちに登ると、復路はとても新鮮な気分で下れて退屈しないということ。普段見慣れた景色も、明るくなってから見ると全く別の表情を見せてくれる。

乗鞍、笠ヶ岳、御嶽山、塩見岳と4日間に渡る遠征は無事成功。自転車を持参しての登山は、またどこかでやりたいと思う。

かかった費用と装備

費用は、今回の遠征の中で最初の日本百名山 乗鞍岳の記事でまとめています。

今になって思うこと

南アルプスを攻略するためには自転車が本当に役立つ装備だ。

今回の塩見岳と次回の光岳・聖岳へのアプローチに自転車を使用したが、長大な林道歩きをパスすることで、時間と体力を大幅にセーブできる。他にも、バスを使わない場合の椹島(赤石岳・荒川岳)へのアクセスは自転車がないと相当厳しいはずだ(ただし、あの林道を自転車で走るのもそれなりに辛いだろうが)。

自転車は登山口に放置することになるため、くれぐれも盗難されないよう対策を講じる必要がある。ワイヤーロックは必須だし、目立たない場所に置くなどの工夫も重要だ。

台風接近という厳しい気象条件での登山だったが、結果的に南アルプス南部の秘境的な魅力を存分に味わうことができた。暗闇登山という特殊な体験も含めて、印象深い一座となった。


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