千葉県南房総の伊予ヶ岳と富山。「房総のマッターホルン」と呼ばれる鋭い岩峰と、里見八犬伝ゆかりの富山。山頂での野点(のだて)と、異世界のような房総の山々を楽しむエピソードの舞台です。
基本情報
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 山名 | 伊予ヶ岳(いよがたけ)・富山(とみさん) |
| 標高 | 伊予ヶ岳336m / 富山349m |
| 所在地 | 千葉県南房総市 |
| 難易度 | ★★☆☆☆(岩場・鎖場あり) |
| 推奨シーズン | 通年(夏は暑さ注意) |
| コースタイム | 周回4時間 |
| 登山スタイル | 低山ハイキング・岩場体験 |
ヤマノススメでの描写
原作での登場シーン
【百四十四合目~百四十七合目】柏木山、伊予ヶ岳~富山
- メンバー: あおい、ひなた(柏木山はあおいのみ)
- アクセス: 新宿駅→〈新宿さざなみ〉→岩井駅→〈市営路線バス富山線トミー〉→天神郷バス停
- コース: 天神郷バス停→伊予ヶ岳南峰→伊予ヶ岳(336m)→伊予ヶ岳南峰→六地蔵登山口→富山(349m)→岩井駅
あらすじ
百四十四合目から百四十五合目は柏木山編で、伊予ヶ岳~富山編はその続きとなります。
【百四十六合目 異世界に来た感じ】鎖場もある伊予ヶ岳の山頂になんとか到着。伊予ヶ岳山頂で甘いもの(朝顔の形のお菓子)を食べて、野点を楽しむ。事前に飯能窯の窯元で購入したお茶碗で、ひなたがスープジャーに入れて持ってきた氷と一緒に抹茶をいただく。
【百四十七合目 低い山でも楽しめる】伊予ヶ岳を下山し、舗装道を歩いて富山の頂上に着いた。展望台に登って海を眺めるが、特急に間に合うため下山するにはギリギリの時間。岩井駅まで急ぎながら下って、なんとか駅までたどり着いた。
ヤマノススメ単行本18巻に収録されています
また、山と高原地図特別版として「ヤマノススメ」とコラボレーションした地図が発売されています
ルート地図
聖地巡礼のポイント
- 伊予ヶ岳南峰: 岩場への取り付き
- 伊予ヶ岳山頂: 休憩のベンチで野点をしたスポット
- 富山山頂: 里見八犬伝の舞台。山頂には展望台
アクセス・登山情報
アクセス方法
房総半島の山へは、東京から特急利用で約2時間とアクセス良好です。
電車・バスでのアクセス JR内房線岩井駅から市営路線バス富山線「トミー」で天神郷バス停まで約20分(200円)。天神郷バス停まではデマンド運行(予約制)となっています。以前は予約不要でしたが、現在は「天神郷」バス停は始発時間の30分前までに電話予約が必要です。天神郷バス停手前の「国保病院前」バス停から歩ける距離ではあります。
特急利用 新宿から「新宿さざなみ」で岩井駅まで約2時間。土日祝日運行。平日は東京駅から「さざなみ」利用。
マイカーでのアクセス 館山道鋸南富山ICから約15分。伊予ヶ岳・富山それぞれに駐車場あり(無料・約10台)。
おすすめコース
富山三山(御殿山・伊予ヶ岳・富山)を巡る縦走コースが人気です。
伊予ヶ岳~富山縦走コース(原作ルート) 天神郷バス停→伊予ヶ岳登山口→伊予ヶ岳南峰→伊予ヶ岳山頂 休憩→富山→岩井駅
富山三山縦走コース 山田中バス停→御殿山→伊予ヶ岳→富山→岩井駅 約5時間の充実コース。
伊予ヶ岳ピストン 天神郷→伊予ヶ岳→天神郷 岩場体験に集中できる。約2時間。
装備と準備
低山ですが、岩場があるため適切な装備が必要です。
基本装備
- 登山靴(岩場対応)
- ザック(20L程度)
- 手袋(岩場・鎖場用)
- ヘルメット(推奨)
- 飲み物(1L以上)
- 昼食・行動食
野点セット(原作風)
- 抹茶(粉末タイプが便利)
- 茶碗(軽量のもの)
- 茶筅(携帯用)
- スープジャー(お湯or氷水)
- 和菓子
房総の山の魅力
伊予ヶ岳:低山に潜む「房総のマッターホルン」の険しさ
千葉県内で唯一「岳」の名を冠する伊予ヶ岳は、標高わずか336mとは思えないほどの峻険な山容を誇ります。最大の見どころは、山頂直下に待ち構える垂直に近い岩壁と鎖場です。あおいたちが慎重に足場を確認しながら登ったように、ここは低山の概念を覆す本格的なアドベンチャー。鎖を頼りに岩を越え、双耳峰の南峰に立った瞬間に広がる360度の大パノラマは圧巻です。足元に広がる房総丘陵の緑と、その向こうに輝く青い東京湾のコントラストは、この山ならではの「高度感」を存分に味わせてくれます。
富山:『里見八犬伝』の伝説が息づく双耳峰
伊予ヶ岳から望む端正な姿が印象的な富山(とみさん)は、曲亭馬琴の傑作『南総里見八犬伝』の舞台として知られる歴史の山です。山中には伏姫と八房が籠ったとされる「伏姫籠穴(ふせひめろうあつ)」があり、物語のロマンを感じながら歩くことができます。整備された遊歩道は歩きやすく、北峰の展望台からは、天候に恵まれれば対岸の三浦半島や富士山を望むことができます。歴史・文学・絶景の三拍子が揃った、房総低山ハイクの醍醐味が凝縮された一山です。
潮風と照葉樹林が織りなす「冬の楽園」
多くの名山が雪に閉ざされる冬、房総の山々は最も輝くシーズンを迎えます。スダジイやカシなどの照葉樹が濃い緑を湛え、冬でも比較的温暖な気候の中、潮風を感じながらの稜線歩きが楽しめます。原作であおいが楽しんだ「野点(のだて)」のように、山頂で温かい抹茶と和菓子を味わう時間は、まさに至福のひととき。下山後に麓の道の駅「富楽里とみやま」で特産のびわ製品や新鮮な海の幸を堪能するまでが、房総巡礼の完成形といえるでしょう。
実際の巡礼記録
日程: 2019年1月6日[日帰り]
コースタイム: 山田中バス停 08:28→08:48 峰林山 08:49→09:02 御殿山 09:04→09:18 鷹取山 09:20→10:33 富山国保病院バス停→10:38 天神郷バス停 10:41→11:09 伊予ヶ岳南峰 11:15→11:19 伊予ヶ岳 11:29→11:32 伊予ヶ岳南峰 11:37→11:53 六地蔵登山口 11:56→12:39 里見八犬士終焉の地→12:42 富山 12:46→12:48 里見八犬士終焉の地 12:53→13:16 伏姫籠穴 13:17→13:30 富山中前バス停→13:44 岩井駅
ルート地図
巡礼レポート
御殿山、伊予ヶ岳、富山の3つの山は「富山(とみやま)三山」と呼ばれています。今回はせっかくなので、これらを一度に歩ける「欲張り縦走コース」をプランニングしました。
岩井駅からバスに乗って山田中バス停へ
市営路線バス富山線トミー。富山の登山口近くのバス停までは電話予約が必要ですが(※当時は天神郷バス停の場合は不要でした)、市営バスで登山口まで行けるのは非常にありがたい存在。運賃も200円と格安です。

久しぶりに内房線に揺られて岩井駅へ到着。


そこから市営バス「トミー号」で山田中(御殿山登山口)バス停まで運んでもらいます。前日に予約を入れた際、「山田中」を「ヤマダチュウ」と言い間違えてしまいましたが、正しくは「ヤマダナカ」と呼ぶそうです。

登山口には駐車場とトイレが整備されています。



道中は至る所で水仙が咲き誇り、梅の開花も見られました。



しばらく舗装路を歩き、途中から登りやすい登山道へ入ります。



眼下の集落を見守る大黒様を過ぎれば、御殿山の頂上に到着です。
御殿山の頂上に到着




山頂からは次に登る伊予ヶ岳と、その奥にそびえる双耳峰の富山がはっきりと見えました。


しかし、御殿山からの下りは鷹取山までの鞍部へ続く長い階段。
年末年始の運動不足がたたったのか、早くも大腿四頭筋に張りと痛みが出てしまい、序盤から不安がよぎります。


尾根の先にある鷹取山のピークを越えると、道が不明瞭になりました。

踏み跡を頼りに降りた先が行き止まりで、戻ってみるとロープの設置された急な下りを発見。

若干戸惑うような道を二度ほどロープで降りると、朽ちたガードレールが残る廃道に出ました。


かつての花火工場事故の慰霊碑や、鮮やかなアロエの花を横目に下山を続けます。





天神郷


伊予ヶ岳登山口


天神郷を経て、伊予ヶ岳の登山口へ。急な階段を登りきると「ハイキングコース終点」の看板が現れ、その先からは待望の岩場が始まります。

斜度はそれほどありませんが、しばらくロープを頼りに進む箇所が続きます。

伊予ヶ岳の山頂に到着

慎重に登り詰め、標高336.6mの伊予ヶ岳南峰に到着しました。

岩の先端からは、次に目指す富山が望めます。続いて三角点のある北峰へも足を運びました。





伊予ヶ岳北峰。こちらに三角点がある。

北峰から見る南峰の岩壁は、今にも崩れ落ちそうな迫力があります。



菜の花が咲く道を通り、最後の一座・富山を目指します。
途中、登り口を間違えて畑のあぜ道を越えるハプニングもありましたが、無事にルートへ復帰。
富山の山頂にたどり着いた

富山の山頂展望台に辿り着きましたが、あいにくの曇り空。期待していた相模湾越しの富士山を拝むことはできませんでした。



伏姫籠穴



下山は『里見八犬伝』の舞台である「伏姫籠穴」を巡り、歴史のロマンに触れながら麓へ。



工事用バリケードのチーバくんに見送られながら、ゴールの岩井駅に到着しました。


富山三山の縦走は、低山ながら変化に富んだ非常に歩きごたえのあるコースでした。水仙や菜の花といった房総ならではの春の訪れを感じつつ、心地よい疲労感とともに山行を終えることができました。
周辺情報・関連記事
房総の山々(房総三山)
鋸山(のこぎりやま) 日本寺の大仏と「地獄のぞき」で有名。伊予ヶ岳と同様に岩場を楽しめます。
鹿野山(かのうざん) マザー牧場に隣接。「九十九谷展望公園」からの眺望は墨絵のような美しさです。
清澄山(きよすみやま) 日蓮聖人ゆかりの地。千年スギなどの巨木が見どころ。
関連する低山
柏木山 飯能窯でお茶碗購入のエピソード。
筑波山 関東平野の独立峰。
観光・グルメ
道の駅 富楽里とみやま 高速道路(富津館山道路)からも一般道からもアクセス可能。伏姫にちなんだお土産も豊富です。
房総の海の幸 新鮮なアジを使った「なめろう」や、それを焼いた「さんが焼き」は下山後の楽しみ。
びわソフトクリーム 南房総特産の「びわ」を使ったスイーツ。富山周辺はびわの産地としても有名です。
よくある質問
Q: 岩場は初心者でも大丈夫?
A: 鎖とロープが完備されていますが、ほぼ垂直に近い箇所があるため、「三点支持」を意識して慎重に登る必要があります。雨天時は岩が滑りやすく危険なため、無理は禁物です。
Q: 野点の道具は必要?
A: 原作であおいが実践したように、自作の茶碗や軽量な野点セット(モンベルの野点セット)を持参すると楽しみが広がります。山頂はスペースが限られているため、混雑時は周囲に配慮し、短時間で切り上げるのがマナーです。強風時はお湯が冷めやすいため、保温性の高いスープジャーの活用がおすすめです。
Q: ヤマビル対策は?
A: 例年4月から11月にかけて発生します。特に雨上がりや湿度の高い日は注意が必要です。忌避剤(ディート含有のもの)の使用や、肌の露出を避ける服装を心がけましょう。
Q: 公共交通機関(バス)の利用方法は?
A: 市営バス「トミー」を利用します。岩井駅から国保病院前までの区間内は予約不要ですが、登山口となる「山田中」や「天神郷」を含む区間はデマンド(予約制)です。 始発時刻の30分前までに電話が必要ですが、1日6便程度運行されており、計画的に予約すれば非常に便利です。もし時間が合わない場合は、岩井駅からタクシー利用(伊予ヶ岳登山口まで約2,000円程度)も検討しましょう。



