台湾環島サイクリング完全ガイド|12日間で約1,000kmを走破した全記録と実用情報

松山車站前の自転車 自転車
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12日間で約1,000kmを走破した、自転車による台湾一周「環島(フアンダオ)」の全記録をまとめたハブ記事。

このページから、各日の詳細記事(全13本)へすべて辿り着けるように設計した。台北を起点に一周し、季節外れの台風や壽卡峠の暗闇出発、池上弁当やカバランウイスキー、猴硐の猫村まで——12日間で出会ったすべてを索引化している。

これから環島に挑戦したい人の事前リサーチに、ふんわり読むだけでも台湾の風景を想像できる記事に、どちらにも応えられる構成を目指した。

環島1號線 0Kモニュメントと松山車站の標識
環島1號線 0Kモニュメントと松山車站の標識

環島とは何か

環島(フアンダオ)とは、文字通り「島を一周する」という意味の台湾語だ。自転車だけのものと思われがちだが、徒歩・原付・自動車・鉄道など、ありとあらゆる手段が「環島」と呼ばれる。重要なのは「自分の力で台湾という島を一周した」という事実そのもの。

台湾には「人生で一度はやりたい三つのこと」という言葉がある。台湾最高峰・玉山(3,952m)に登ること、日月潭を泳いで横断すること、そして自転車で環島すること。この三つを成し遂げて初めて一人前の台湾人だ、と半ば冗談混じりに語られる。

決定打となったのが、ジャイアント(GIANT)の創業者・劉金標氏。2007年、当時73歳で15日間かけて約927kmの環島を完走したエピソードと、同年公開された映画『練習曲』(陳懐恩監督)の「今やらなければ、一生できないことがある」というセリフが社会現象になった。この二つで、台湾は本格的なサイクリング大国への道を歩み始めた。

僕は以前から環島には挑戦してみたかったものの、コロナ禍や災害続きでなかなか踏み切れずにいた。それが今回、ワーケーションという形で会社の後押しを受け、ようやく実現できたかたちだ。走り始めると、この文化の懐の深さを身体で実感することになる。

12日間の全行程ダイジェスト

項目数字
期間2025年11月5日〜16日(12日間)
総距離約1,000km(※Stravaでログを取れていない区間あり、Strava集計では約976km)
総獲得標高約4,965m
走行日11日(うち1日は休養)
輪行区間蘇花公路(花蓮〜蘇澳新、1区間のみ)
ルート環島1号線ベース、反時計回りが定番だが僕は西海岸南下→南端壽卡峠→東海岸北上の時計回り
自転車MathewBikeでツーリングバイク(Froging Touring Bike)をレンタル(15日間契約)
装備パニアバッグ、ヘルメット、フロントライト、レインウェアなどツーリング装備一式
宿ホステル中心(1泊2,000〜3,000円)
補給セブン・ファミマが事実上の補給拠点
環島認定証
環島認定証

最終日、MathewBikeで受け取ったA4一枚の認定証。たったの紙切れだが、12日間ペダルを踏み続けた身体にはずしりと重く感じる。

11月5日、台北・松山駅前の「環島1號線 0Kモニュメント」から出発。西海岸を南下し、台湾南端の壽卡峠(標高460m)を越え、東海岸を北上。蘇花公路だけは安全のため鉄道で輪行し、最後に基隆を経由して11月16日に松山駅へ帰着。約1,000km の旅は、思っていたよりあっけなく、そして長かった。

帰国までの3日間(11/17-19)は番外編として、台北観光と両親との合流をまとめている。

全13日 区間別早見表

各日の記事は以下のテーブルから直接アクセスできる。距離・獲得標高は実走値。

Day日付区間距離標高主な見どころ・出来事記事
111/5台北→大渓65.5km282m環島スタート、三峡老街、初日からホステルで鍵紛失→ Day 1
211/6大渓→台中164.0km872m今回最長距離、風情海岸の風車群、逢甲夜市→ Day 2
311/7台中→嘉義102.1km155m春水堂創始店、彩虹眷村、嘉義の雞肉飯→ Day 3
411/8嘉義→台南87.7km228m北回帰線通過、烏山頭ダムで八田與一の偉業→ Day 4
511/9台南→屏東112.3km202m高雄観光(龍虎塔・美麗島駅・85ビル)、ゾウガメの村長→ Day 5
611/10屏東→台東115.0km1,076m暗闇出発の壽卡峠、パンク、台風由来の暴風→ Day 6
711/11台東(休養日)0km0m台風26号接近で休養、米苔目と剉冰を堪能→ Day 7
811/12台東→玉里83.9km602m豪雨北上、池上弁当の聖地・全美行、玉里神社跡→ Day 8
911/13玉里→花蓮100.2km583m台風の爪痕で迂回30km増、舞鶴の北回帰線2回目、光復糖廠→ Day 9
1011/14花蓮→宜蘭25.3km35m蘇花公路を電車で輪行、カバランウイスキー蒸留所→ Day 10
1111/15宜蘭→瑞芳78.3km643m全長2,167mの旧草嶺トンネル、念願の猴硐猫村→ Day 11
1211/16瑞芳→台北41.7km287m野柳地質公園、松山駅で環島ゴール!→ Day 12
番外編11/17-19台北観光〜帰国象山ハイキング、迪化街、寧夏夜市、桃園空港から成田→ 番外編

環島最大の難関3選

12日間のうち、特に「これは試練だった」と振り返って思う3つの場面を挙げる。

1. 壽卡峠:暗闇5時出発、雨と暴風、パンク(Day 6)

壽卡鐵馬驛站
壽卡鐵馬驛站

環島最大の山岳区間が、台湾南端の壽卡(シューカ)峠。標高460mと数字だけ見れば大したことないが、台風26号の接近と重なって、暗闇の5時出発・雨と暴風・峠の中腹でパンクという三重苦に見舞われた。

さらに台風で道路封鎖の可能性が浮上したため、宿泊予定地の金崙を諦めて台東まで延長119km。暗闇の中なんとか到着し、翌日は急遽の休養日となった。

「環島で初めての山越え」が、まさかこんな試練になるとは思っていなかった日。

→ Day 6: 屏東→台東|台風接近、パンクと暴風の壽卡峠越え

2. 季節外れの台風26号と土砂崩れ寸前の迂回路(Day 6〜9)

何度も上り下りを繰り返す峠道
何度も上り下りを繰り返す峠道

11月とはいえ、台湾は熱帯。台風26号は東海岸を直撃し、休養日(Day 7)の判断から、豪雨の中の北上(Day 8)、迂回路で30km増の山道走行(Day 9)まで、4日間にわたって翻弄された。

特に光復郷では台9線が橋崩落で通行止め、道幅の狭い峠道を迂回するハメに。後日ニュースで知ったが、数日前に通った寿卡までの道では土砂崩れも発生していた。本当に綱渡りな日程だった。

それでも諦めずに走り続けられたのは、台湾のサイクリスト向けインフラと、見ず知らずの旅人を励ましてくれた台湾の人たちのおかげ。

→ Day 8: 台東→玉里|豪雨の中を北上、池上弁当とプレート境界の街

3. 蘇花公路の輪行決断(Day 10)

花蓮駅に停車中のECM723電車
花蓮駅に停車中のECM723電車

花蓮〜蘇澳新を結ぶ「蘇花公路」は、太平洋の絶壁沿いを走る台湾屈指の危険区間。地震や台風での通行止めも頻発する。

環島サイクリストの間でも「電車でスキップが一般的」とされており、僕も無理せず鉄道輪行を選択。台鐵の區間快に自転車をそのまま積み込んで蘇澳新へ。

判断としては正解だった。空いた時間でカバランウイスキー蒸留所を訪問でき、思いがけずご褒美の一日になった。走ることだけが環島じゃない——危険を見極めて引く判断も、立派な走り方の一つだと思える経験になった。

→ Day 10: 花蓮→宜蘭|電車でワープして世界最高峰のウイスキー蒸留所へ

現地で感じた台湾の人と文化

12日間走って印象に残ったのは、台湾という国全体に「環島サイクリストを応援する空気」があることだった。

環島を応援するセブンイレブン
環島を応援するセブンイレブン

象徴的なのが、街中で目にする「加油(がんばれ)」というフレーズ。セブンイレブンにも環島応援メッセージが掲げられていて、コンビニそのものが補給拠点として機能している事実と相まって、走り手にとっては心強い。

両親の台湾旅と、台北で合流

鼎泰豐の小籠包2蒸籠と青菜、再訪
鼎泰豐の小籠包2蒸籠と青菜、再訪

環島ゴール翌日の11/17、別ルートで阿里山・嘉義を旅していた両親が、ちょうどこの日に台北で合流してくれた。

宿はどちらも台北駅の南側だが、僕は1泊2,000円のホステル、両親はシーザーパークというれっきとしたホテル。阿里山では2人で2泊3日20万円超えだったそうで、僕の15日間の総旅費とほぼ同じというのは、笑うしかない格差だった。

それでも、夕食で同じ蒸籠を囲めば、行き方の違いはどうでもよくなる。無事に環島を達成して台北で会って食事を共にする、それだけで十分。

猫の街・猴硐と動物との共存

猴硐猫村のタキシード猫
猴硐猫村のタキシード猫

Day 11 で訪れた猴硐(ホウトン)は、炭鉱の街が「猫の街」として再生した場所。住民と猫がごく自然に共生していて、台湾が2017年にアジア2番目の「No-Kill国家」になった背景を肌で感じた。

1998年の貓花園(台北・士林)がギネス認定の世界最古の猫カフェ、というのも、僕が2008年に訪れた極簡咖啡を調べていて初めて知った事実。台湾の猫文化は、想像以上に深く、しなやかだ。

台北駅のリトル・インドネシア

帰国前夜、台北駅のメインホールで床に寝転がってみた。週末の中央コンコースは、東南アジア系の外国人労働者と地元台北人がごちゃ混ぜに座り込み、寝そべり、食事を広げる。「リトル・インドネシア」と呼ばれる名物風景。多様性を許容する空間としての台北の懐の広さを、最後の最後に体感できた一夜だった。

日本統治時代の名残を辿る

台湾を自転車で巡って、何度も「ここにも日本の足跡があるのか」と立ち止まる場面に出会った。歴史の重なりを感じる、もう一つの旅のレイヤー。

八田與一と烏山頭ダム(Day 4)

烏山頭ダムほとりの八田與一像
烏山頭ダムほとりの八田與一像

嘉義から台南に向かう途中、烏山頭ダムへの寄り道。日本人技師・八田與一が1930年に完成させた台湾最大の灌漑施設で、嘉南平原を不毛の地から穀倉地帯へと変えた偉業の現場。台湾の教科書にも載る「最も尊敬される日本人」の足跡に、思いがけず触れることになった。

→ Day 4: 嘉義→台南|北回帰線を越え、八田與一の偉業に触れる

玉里神社跡と東部の日本人移民村(Day 8)

玉里神社の鳥居と参道入口
玉里神社の鳥居と参道入口

東海岸の玉里には、日本統治時代の玉里神社の跡が今も残る。鳥居だけが朽ち、本殿跡には地元住民が献花を絶やさない。Day 9 で立ち寄った光復糖廠(製糖工場)の和風宿舎、Day 14 の松山菸廠(タバコ工場)、Day 15 の台北記憶倉庫(三井物産旧倉庫)など、東海岸〜台北エリアには日本統治時代の建築が文化施設として再生されているケースが多い。

旧草嶺トンネル:鹿島組施工の鉄道遺構(Day 11)

旧草嶺トンネルの内部
旧草嶺トンネルの内部

宜蘭から瑞芳へ抜ける際に走った「旧草嶺トンネル」(全長2,167m)は、1924年に開通した宜蘭線の旧トンネル。施工は鹿島組(現・鹿島建設)。北口には新元鹿之助(台湾総督府鐵道部長)の揮毫による「制天險」が今も刻まれている。

廃線後に自転車・歩行者用として再開通し、現在は環島1号線の一部に組み込まれている。過去と現在が一本のトンネルで繋がっている、そんな実感が残った場所だった。

→ Day 11: 宜蘭→瑞芳|旧草嶺トンネルを越えて、猫まみれの猴硐へ

実用的な環島ガイド

これから環島に挑戦する人へ、走って感じた実用情報。

自転車レンタル

僕は台北の MathewBike で15日間契約のツーリングバイク(Froging Touring Bike)をレンタル。パニアバッグ・ヘルメット・フロントライト・レインウェアなどツーリングに必要な装備一式が付いてくる。日本語対応はないが、英語と簡単な中国語でやり取り可能、フィッティングも丁寧だった。返却時にはラミネート加工された「環島達成認定証」も貰えた。

ジャイアントの公式店舗(GIANT ADVENTURE)でも環島向けのレンタル+ツアーを提供している。価格はやや高めだが、英語・日本語の対応が充実。

補給と支払い

セブンイレブン・ファミリーマートが事実上の補給拠点。日本以上の店舗密度で、走っていれば数キロおきに必ず姿を現す感覚。さらにほとんどの店舗にイートインスペースがあるので、トイレ・冷暖房・席を全部一箇所で済ませられるのが大きい。茶葉蛋や大亨堡ホットドッグなど台湾コンビニ独自のホットスナックも、走り続けるうちに馴染みの味になる。

支払いは悠遊カード(Easy Card)が万能。MRT・バス・コンビニほぼ全店対応で、レートも良い。バックアップに Apple Pay も使えると確認できれば安心。

宿

910 Hostelの共同スペース
910 Hostelの共同スペース

ホステル中心で1泊2,000〜3,000円。環島サイクリスト御用達の宿は、自転車を部屋に持ち込めるなどの配慮があってありがたい。

一人旅でもGoogleマップで現地の宿を探し、Booking.comで前夜あるいは当日に予約していくスタイルで困らなかった。事前にすべて押さえなくても、その日の進捗に合わせて柔軟に取れる。

ルート設計

公式の 環島1号線(Cycling Route No.1) は約960kmで、台1線・台9線をベースに整備されている。青い看板が各所にあり、迷うことはほぼない。道幅も広く、自転車専用レーンが用意されている区間が多いので、車と並走して怖い思いをする場面は意外と少なかった。

回り方は反時計回り(左回り)が定番。台湾は右側通行なので、反時計回りに走れば常に道路の右端=海側を走ることになる。日本のサイクリストは時計回りの感覚で考えがちなので注意。

季節

11月は晴れる日が多く、気温的にもベストシーズン。ただし季節外れの台風リスクは念頭に置きたい(今回がまさに当たり年だった)。1〜2月は東北モンスーンで東海岸の風が強く、6〜9月は本格的な台風シーズン。3〜4月か10〜11月が比較的安定している。

環島の意義と価値

自分の脚で1,000km走り切ったあとに残ったのは、達成感より「台湾という国がぐっと近くなった」という感覚だった。

12日間という時間軸で、空港から市街地、農村、山岳、海岸、夜市、廃線跡、神社跡、台北の現代都市まで、台湾の多面性を一本の旅で繋いで歩けた。これは自転車という速度だからこそ得られた経験だった。

新幹線で台北〜高雄を結べば1時間半。でも自転車だと2〜3日かかる。その2〜3日の間に通り過ぎる街、立ち寄ったコンビニ、雨宿りした軒先、夜市で食べた料理の数々——どれも「効率」では絶対に手に入らない、自分の脚で積み上げた記憶だ。

環島を始めたい方へ

サイクリング夫婦と1号線を並走
サイクリング夫婦と1号線を並走

「いつかやってみたい」と思っている人へ、ハードルの下げ方を3つだけ。

1. 最初の1日(Day 1)の記事から読んでみてほしい。準備の様子、初日のトラブル、台北のスタート地点の雰囲気が分かる。「自分でも行けそう」と思えるかどうかが、決断の第一歩。
2. いきなり12日は無理、なら短縮ルート。台北→高雄を西海岸南下するだけなら4〜5日。鉄道で台北に戻れば1週間休暇で完結する。「半環島」と呼ばれる人気プラン。
3. 不安なら公式ツアー。ジャイアントの GIANT ADVENTURE は英語ガイド付きの環島ツアーを定期催行。装備・宿・補給を全て手配してくれる安心感がある。

僕の場合は完全ソロで、計画もゆるく組んで現地で調整した。それでも何とかなったので、最初は完璧を目指さなくていいと思う。

まとめ

12日間ペダルを踏み続け、約1,000kmを走り、台湾を一周してきた。

台風に翻弄され、雨に降られ、峠で泣きそうになり、それでも完走できたのは、整備された環島1号線のインフラと、見ず知らずの僕を励ましてくれた台湾の人たちのおかげだ。

このページから、各日の詳細記事に飛べる。気になった日からつまみ読みするもよし、Day 1 から順に追体験するもよし、好きな読み方で楽しんでもらえたら嬉しい。

いつかあなたも、台北・松山駅の0K地点で会いましょう。

全記事インデックス(時系列で読む)

記事キーワード
01Day 1:台北→大渓環島スタート、初日トラブル
02Day 2:大渓→台中164kmの激走、風情海岸、逢甲夜市
03Day 3:台中→嘉義灼熱地獄、春水堂、雞肉飯
04Day 4:嘉義→台南北回帰線、烏山頭ダム、八田與一
05Day 5:台南→屏東高雄観光、ゾウガメ村長
06Day 6:屏東→台東壽卡峠、パンク、暴風
07Day 7:台東 休養日台風26号、米苔目、剉冰
08Day 8:台東→玉里豪雨北上、池上弁当、玉里神社
09Day 9:玉里→花蓮台風迂回路、北回帰線、光復糖廠
10Day 10:花蓮→宜蘭蘇花公路輪行、カバランウイスキー
11Day 11:宜蘭→瑞芳旧草嶺トンネル、猴硐猫村
12Day 12:瑞芳→台北野柳、環島ゴール
番外編Day 13-15:台北観光〜帰国象山、迪化街、両親合流、桃園空港

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