- 忙しい人向けまとめ
- Day 12 実走レポート
- この日のルート
- 瑞芳ゴールデンハウスから出発(07:35)
- 八斗子から基隆港へ(08:07)
- 野柳地質公園へ路線バスで往復(09:26〜12:13)
- 雨の基隆塔と信二防空洞(12:13〜12:49)
- 台北までのラストラン(12:55〜14:18)
- 環島ゴール!松山駅(14:18)
- 饒河街観光夜市と永康街・天津葱抓餅(14:29〜15:30)
- 牯嶺街と228紀念館(15:44〜15:57)
- 夕焼けの基隆河とMathewBikeへ自転車返却(17:09〜17:43)
- 口口家のかき氷でクールダウン(17:55)
- 士林夜市(18:31〜18:48)
- MRT 24時間チケットで淡水へ(19:36)
- 台湾ビールで環島の祝杯(20:24)
- コラム:台湾の環島文化
- Day 12 まとめ
- 環島完結のメッセージ
忙しい人向けまとめ
- 瑞芳から海岸線・基隆を経て台北まで50km:望海巷跨海景観橋から基隆港、バスで野柳地質公園に寄り道、基隆塔と防空洞を見学してから台北へ最後のラン
- 松山駅で環島ゴール!:12日間 約1,000kmの旅が終了。初日に撮影した「環島1號線 0Kモニュメント」前で自転車を並べて記念撮影
- 常軌を逸した観光コース&自転車との別れ:永康街の天津葱抓餅、牯嶺街、台北二二八紀念館を巡り、夕焼けの基隆河を走って自転車返却。淡水で台湾ビールを開けて環島の祝杯
Day 12 実走レポート
ついに環島最終日。今日は瑞芳から台北へ、最後の50kmを走り切る。距離は短いが寄り道盛りだくさんの欲張りな1日になりそうだ。
この日のルート
瑞芳ゴールデンハウスから出発(07:35)

最終日にしてGPSログ取りをスタートし忘れる痛恨のミス。今日は記録より思い出を優先しよう。

瑞芳は基隆河の渓谷沿いに広がる町。北側の海岸線へ抜けるため、まずは山中の道を登る。気持ち涼しめの早朝、ペダルが軽い。自転車道のないトンネルが少し緊張するものの、抜けるとダウンヒルが待っていた。


台2線に出ると、湾の向こうにお椀を逆さまにしたような山容の「基隆山」が見えた。
かつて九份の北側まで伸びていた深澳線という鉄道があり、廃線跡の一部が今「深澳鐵道自行車(深澳レールバイク)」というアトラクションになっているらしい。河豚をモチーフにした車両で海岸線とトンネルを抜けるという、次に来たときは乗ってみたい。

港の上を渡る「望海巷跨海景観橋」は、まるで海に飛び込むような視界が広がる。自転車だけに許されたこの景観は、朝のサイクリングとして気持ちが上がっていく。
八斗子から基隆港へ(08:07)

セブンで朝食。スイカ牛乳、タロイモ肉でんぶパン、レーズンミルクメロンパン。最終日も朝食はいつも通りのコンビニ食、しつこいようだけど本当にコンビニはサイクリストにとってありがたい存在だ。
ここで一つ確認しておきたかった事を実行。普段は悠遊カードで支払いをしているが、いざというときApple Payが使えるか確認した。結論、コンビニはApple Pay対応(日本のクレカが使える)で安心。レート的には悠遊カードのほうがいいけれど、決済のバックアップ手段があるのは心強い。


長閑な海岸風景から基隆市に入ると、一気に都会の空気に変わる。港にはコンテナクレーンが並び、北部の海運拠点としての貫禄を見せつけてくる。
基隆は台湾北東端の港湾都市。台北の外港として清朝時代から栄え、日本統治時代には台湾の玄関口として整備された街だ。年間降雨日数が多いことから「雨港」の別名も持つ。


そういえば、基隆は石垣島とのフェリーが就航予定と聞いていた。後から調べたところ実際に就航したそうで、フェリーで台湾に渡れるのは旅好きとしてはたまらないロマンだ。次は船で来てみたい。
基隆と石垣島を結ぶフェリーは「Yaima Line」として2026年5月28日に就航しました。
野柳地質公園へ路線バスで往復(09:26〜12:13)

野柳地質公園までは自転車で行くと険しい海岸線を往復することになるので、潔く路線バスを使うことにした。立派な基隆バスステーションから790系統のバスに乗り込む。
実際にバスに乗ってみて、これは正解だった。海岸沿いの道は結構な上り下りで、バスがガタガタ揺れる。これを自転車で走っていたら脚が終わっていただろう。

30分ほどの揺れに耐えて野柳バス停で下車。漁港の風情ある街並みを歩きながら、岬の突端にある野柳地質公園へ向かう。

道中で波蜜(ボーミー)のミックスフルーツジュースを補給。
野柳地質公園で奇岩めぐり

野柳地質公園は、岬全体が天然の地質博物館になっているジオパーク。約2,000万年前の砂岩層が海蝕・風蝕で削られてできた奇岩群が並ぶ、台湾屈指の自然遺産だ。入場料は120NTD。


海と青空のコントラストが鮮やか。ロケーションだけで満点だ。ただしプロムナードを過ぎると直射日光から逃げ場がなくなり、容赦なくギラギラと照りつけてくる。
最初に高台のデッキに上って全体像を把握。これが正解で、ここから「次にどこを歩くか」が見通せた。
パンフレットに名前のついた岩を確認しながら歩くのも面白いが、より楽しいのは自分の目で何かに似てるなと想像を膨らませてから答え合わせをする遊び方だ。

僕がメロンパンだと思った岩は「カメ岩」だった。いや、どう見てもメロンパンだろ。
女王頭岩

野柳といえば「女王頭岩(クイーンズヘッド)」。エジプトのネフェルティティ女王の横顔に似ていることから名付けられた、ここの象徴的存在だ。

毎年2ミリずつ首部が細くなり続けていて、専門家からは「あと数年から十数年で首から上が折れる可能性が高い」と予測されている。だからこそ、見られるうちに見ておきたかった。



ここだけは群を抜く人気で、一緒に撮影するための行列が延々と続いていた。自撮りは要らないので横や後ろから何枚か収めるが、やっぱり正面からのシルエットが一番しっくりくる構図だ。
いい角度では撮れなかったので、別の場所にある「女王頭岩のレプリカ」を何枚か撮って満足することにした。
ちなみに、ここで一つ正直に告白。野柳の岩はどれも独特の風化模様で穴だらけになっているのだが、ゲーム『The Last of Us』に出てくる胞子に侵されたゾンビにしか見えなくて困った。わかる人にはわかってもらえるはず。

雨の基隆塔と信二防空洞(12:13〜12:49)


基隆市街地に戻る途中で突然の大雨。スコールのような豹変ぶりで、ここが亜熱帯だということを思い出させてくれる。


雨の合間を縫って、新しい観光スポット「基隆塔」へ。
2023年12月に開業したばかりの新ランドマークで、基隆港のコンテナクレーンをモチーフにしたオレンジ色のスチール構造が印象的。塔本体からスカイブリッジが伸びて、山上の中正公園・基隆大仏エリアへ水平歩道で直結している。入場無料というのが嬉しい。


展望台からは基隆の街並みと港湾の様子が一望できた。コンテナ船とクレーン、客船、雨に煙る街並み。港湾都市の機能美を眺める贅沢な時間。


この基隆塔は本来「基隆中正公園」へのアクセス手段として作られたらしいが、そちらには寄らず、徒歩で散歩道を下って元の入口まで戻るルートを選んだ。

途中、キジトラ猫と出会った。猴硐から続く台湾の猫遭遇に、顔がほころぶ。
信二防空洞


信二防空洞は太平洋戦争末期、米軍の基隆大空襲に備えて日本軍が中正公園の岩盤を掘削して造った大規模な防空壕。基隆塔と同じく2023年12月に整備・公開されたばかりで、入場無料で見学できる。
岩肌と赤レンガがそのまま残る通路は、太平洋戦争中の歴史をリアルに伝えてくる。観光地化された場所ではなく、街中にぽつんと存在しているのが逆に生々しい。


台北までのラストラン(12:55〜14:18)

また来るであろう基隆を後にして、いよいよ台北までのラストランへ。台5線を残り20kmほど。




南港展覧館が見えてくると、いよいよ台北エリアに入った実感が湧いてくる。次第に車とバイクの群れに飲み込まれ、初日に台北を走った日の混沌を思い出した。あの日は何もかもが新鮮で緊張していたのに、今日はもう当たり前の景色になっている。
とてつもなく長い旅路かと思っていたが、終わってみればあっという間の12日間。1日1日違うことが起き、毎日が刺激の連続だった。
初日の鍵紛失、164kmの激走、北回帰線通過、雨の壽卡峠、池上弁当、台風の迂回路、カバランウイスキー、旧草嶺トンネル、猴硐の猫たち。一つ一つ振り返ると、本当に色んなことがあった。それでも今、無事に台北まで戻ってこれている。
環島ゴール!松山駅(14:18)


ついにやってきた。初日のスタート地点である松山駅、そして「環島1號線 0Km」のモニュメント。
12日かけて、一周ぐるりと帰ってきた。
ここに自転車を並べて、心の中で叫んだ。
「台湾自転車で一周 環島達成!」
最後の方は淡々と進んできたのに、モニュメントを目の前にしたら一気に込み上げてくるものがある。約1,000kmの旅。台風に4日翻弄され、雨に降られ、峠で泣きそうになり、それでもなんとか帰ってきた。
ゴールを噛みしめていたら、お昼ご飯をまだ食べていないことを思い出して、途端にお腹が減ってきた。感動はさておき、まずは飯だ。
饒河街観光夜市と永康街・天津葱抓餅(14:29〜15:30)

孤独のグルメにも登場した饒河街観光夜市で何か食べようと立ち寄ったが、夜市にはまだ早く、ほとんどの店は閉まっていた。慈祐宮の朱色の屋根だけが鮮やかに目に映る。

仕方なく、葱抓餅(ツォンジュアビン)の有名店「天津葱抓餅」へ向かうために、台北市内を横断して永康街へ。


葱抓餅は、中国西北部発祥の「葱油餅」が台湾で独自進化したB級グルメ。生地を何重にも折りたたみ、焼いたあと鉄板の上で両側から叩きほぐす「抓(つねる)」工程が最大の特徴で、これで層がふんわりほどけて外サクサク・中モチモチに仕上がる。
行列に並んでいる間、作り手の所作を観察。生地を激しく叩きつけ、捏ね、引きちぎって伸ばすという、生地をいじめているような工程に見える。

注文したのは「全部入り」(卵・チーズ・バジル・ハム)。受け取って一口かじると、外はパリッと層になっていて、中はもちっと柔らか。あの謎の生地叩きこそが、この食感の秘密なのだろうと納得。
牯嶺街と228紀念館(15:44〜15:57)
ここからが、僕の常軌を逸した観光コースのクライマックス。
牯嶺街



牯嶺街は、台湾映画の傑作『牯嶺街少年殺人事件』(1991年、エドワード・ヤン監督)の舞台となった場所。1960年代の白色テロ下の台湾で起きた実際の少年殺人事件を題材にした作品で、台湾映画史を語る上で外せない一本だ。
当時の雰囲気は、古書店のファサードに薄く残るのみ。

「牯嶺街小劇場」のコンクリート建築だけが、ひっそりとあの時代の重さを伝えてくる。古書店も多くが営業しておらず、いずれは取り壊されてしまうのかもしれない。


通りを進むと総統官邸や台北府城 南門が現れ、台北という街の歴史的なレイヤーが幾重にも重なっていることを感じる。
228平和公園と二二八紀念館


228平和公園に移動し、臺北二二八紀念館を見学。
228事件は1947年2月28日に発生した台湾現代史最大の悲劇。戦後に台湾を接収した国民党政権の腐敗と本省人への差別待遇に不満が爆発、闇タバコ取り締まりでの女性殴打事件をきっかけに全島で抗議運動が起き、増援部隊による無差別鎮圧で犠牲者は2万人前後に及んだ。これが1949年から38年続く戒厳令(白色テロ)の幕開けとなる。紀念館の建物自体が、まさに事件発生を全島へ放送した歴史の現場(旧・台湾放送協会台北放送局)だ。
館内では、日本語のできる年配ボランティアの方が付きっきりで丁寧に説明してくれた。教科書的な知識しか持たない自分に、当時の台湾人としての心情、戦後の混乱、白色テロ時代の沈黙を、生きた言葉で語ってくれた。ここでしか得られない学びだった。
それにしても、葱抓餅から牯嶺街、そして二二八紀念館という流れ。日本人観光客にはあるまじき、常軌を逸した観光コースを堪能してしまった。
夕焼けの基隆河とMathewBikeへ自転車返却(17:09〜17:43)
初日にレンタルした自転車は15日間契約。本来あと数日は手元に置いておくつもりだったが、明日からの台北の天気予報が芳しくない。それなら今日中に返してしまおうと決めた。



士林のMathewBikeまでは、基隆河沿いのサイクリングロードを通って最後のサイクリングを楽しむ。夕日が水面を染め、川向こうのビル群がシルエットに変わっていく。この自転車との時間ももうすぐ終わるのか、と思うとセンチメンタルにならないわけがない。

MathewBikeに到着。1回パンクをしたのでタイヤチューブ代を支払い(250NTD)。事務的な手続きを淡々とこなすだけかと思いきや、ラミネート加工された「環島達成認定証」を手渡してくれた。
評判で聞いていたよりは少し塩対応気味のお店だったので余計に嬉しい。自分一人で噛みしめていた達成感を、他人に「達成しましたね」と認めてもらえるのは案外こみあげるものがある。
口口家のかき氷でクールダウン(17:55)


自転車を返した荷の軽さを感じたのも束の間、緊張がほぐれて疲れがどっと出てきた。甘いものが欲しい。
士林駅近くの「口口家」という甘味屋で、小豆とタロイモがたっぷり乗った鉄観音烏龍茶のかき氷を注文。
ふわっと立ちのぼる鉄観音の香ばしさが、鼻の奥までほどけていく。甘さ控えめのシロップが茶葉本来のコクをそっと引き立て、芋圓のもちもちとタピオカのQQ食感が交互に弾けて飽きがこない。ほっこり甘い小豆と、ほろ苦い鉄観音のコントラストが絶妙。自転車で固くなっていた身体が、ゆっくり溶けていく感じだ。甘すぎない大人のためのかき氷。
士林夜市(18:31〜18:48)




ついでに士林夜市を覗いていこう、と軽い気持ちで立ち寄った。
豪大大鶏排は、顔より大きい巨大フライドチキンで知られる台湾発祥のジーパイチェーン。1992年創業、1999年に士林夜市へ出店してから一気に全国区になった名物店だ。
有名な「豪大大鶏排」を食べながら散策しようと目論んでいたが、今日は日曜日。屋台前は身動きが取れないほどの人だかりで、何十分待ちか分からない行列ができていた。


人混みはもういいやと諦めて、士林夜市から早々に離脱。剣潭駅からMRTに乗ることにした。
MRT 24時間チケットで淡水へ(19:36)
剣潭駅の窓口で「24時間チケット」を購入。明日も雨予報で自転車もないので、MRT乗り放題が一番効率的。ポイントは「24時間有効」なので、今夜から翌日の同じ時間まで使えること。これから北の終着駅・淡水に向かうのにちょうどいい。


赤色のMRTでさらに北へ、30分。終着駅・淡水に到着。
淡水老街と金色水岸
予約した宿へは、淡水老街と金色水岸エリアを通る。夜の淡水河沿いをのんびり歩きながら向かう。夜市もちらほら出ているが、もう遅い時間で半分は閉まりかけ。それでも金色水岸のライトアップは綺麗で、士林の喧騒とは対照的な、落ち着いた夜だ。
台湾ビールで環島の祝杯(20:24)

宿に着いて、いつも通りコンビニで台湾ビールと夜食を調達。今日ばかりは缶ビールにも特別な意味がある。
「台灣啤酒CLASSIC」を開けて、誰に向けるでもなく、自分自身に向けて乾杯。
12日間、お疲れさま。よく走り切った。
コンビニ弁当と香雞排(シャンジーパイ)の唐揚げをつまみに、缶を傾ける。明日は雨。だがもう走らなくていい。それがこんなにも幸せなことだとは。
それでは、おやすみなさい。
コラム:台湾の環島文化

MathewBikeの店内で、スタッフが差し出してくれた一枚の紙。そこには僕の名前と「Certificate of Cycling Around Taiwan」の文字が印刷されていた。たった一枚の認定証なのに、12日間ペダルを踏み続けた身体にはずしりと重く感じる。海外からのサイクリストにも当たり前のように贈られるこの一枚は、台湾という国が「環島」という挑戦をいかに大切に扱っているかの証でもある。せっかくなので、最終日の今日は「環島」という台湾発の文化について少しだけ書き残しておきたい。
「環島」とは何か
環島(フアンダオ)とは、文字通り「島を一周する」という意味の台湾語だ。自転車だけのものと思われがちだが、徒歩で歩く徒歩環島、原付や大型バイクで回るバイク環島、自動車で回る自駕環島、鉄道で巡る鉄道環島まで、ありとあらゆる手段が「環島」と呼ばれる。手段は問わない。重要なのは「自分の力で台湾という島を一周した」という事実そのものなのだ。
なぜそこまで台湾人が環島にこだわるのか。背景には「人生で一度はやりたい三つのこと」という言葉がある。台湾最高峰・玉山(3,952m)に登ること、日月潭を泳いで横断すること、そして自転車で環島すること。この三つを成し遂げて初めて一人前の台湾人だ、と半ば冗談混じりに語られるほど、環島は国民的な通過儀礼として根付いている。
決定打となったのが、ジャイアント(GIANT)の創業者・劉金標(キング・リュウ)氏だ。2007年、当時73歳の劉氏は自社製ロードバイクで15日間かけて約927kmの環島を完走。さらに2014年、80歳のときにも12日間で再び一周してみせた。トップが自ら走る姿は台湾社会に大きな衝撃を与え、環島は一気に「中高年でも挑戦できる夢」へと格上げされた。同じ2007年に公開された映画『練習曲』(陳懐恩監督)も大きい。聴覚障害のある青年が自転車で台湾を一周するロードムービーで、劇中の「今やらなければ、一生できないことがある(有些事現在不做,一輩子都不會做了)」というセリフが社会現象になった。映画とジャイアント、この二つが2007年に重なったことで、台湾は本格的なサイクリング大国への道を歩み始める。
環島1号線と公式インフラ
国も本気だ。2015年、交通部(日本の国土交通省にあたる)が約960kmの「環島1号線(Cycling Route No.1)」を正式制定した。台1線と台9線をベースに、サイクリング専用道や県道を継ぎ足して島をぐるりと一周できるよう設計されている。0Kの起点モニュメントは台北の松山駅前にあり、ここがゴール地点としても機能している。
走ってみてまず驚くのは、キロポストや路面標示の充実ぶりだ。ルート上には「環島1号線」のロゴが入った青い看板が一定間隔で立ち、迷うことがほとんどない。補給面でもセブンイレブンとファミリーマートが事実上の補給拠点として機能しており、トイレも飲料水も塩分も、走りながら無理なく確保できる。日本で同じことをやろうとしたら、ルートを引くだけで数年かかるだろう。
そして「環島認定証」の文化。台湾自転車協会、ジャイアントのGIANT ADVENTURE、僕がお世話になったMathewBikeなど、複数の団体やショップが独自に認定証を発行している。海外サイクリストにも分け隔てなく贈られるところに、台湾の懐の深さを感じる。
環島サイクリストのスタイル
ひと口に環島と言っても、走り方は実に多彩だ。プロ選手は12時間台で一周してしまうが、一般的なペースは9日間前後(環島1号線の公式推奨は8泊9日)、ゆっくり観光しながらだと2〜3週間というのも珍しくない。
回り方は反時計回り(左回り)が定番。台湾は右側通行なので、反時計回りに走れば常に道路の右端=海側のレーンを進むことになり、海をすぐ右手に感じながら走れる。日本のサイクリストは島は時計回りの感覚で考えがちなので注意したいポイントだ。最近はジャイアントの公式ツアー、シニア環島、家族環島、ファッション重視のインスタ映え環島など、スタイルもどんどん多様化している。完走して受け取る認定証は、額装するもよし、机に飾るもよし。タダの紙切れと言ってしまえばそれまでだが、走った本人にとっては紛れもなく勲章である。
私の12日間を振り返って
そしてここからは、僕自身の12日間を駆け足で振り返ってみたい。
- Day 1(11/5)台北→大渓:MathewBikeで自転車を受け取り、いざ出発。初日からホテルの鍵を紛失するというトラブルに見舞われ、先が思いやられる幕開けだった。
- Day 2(11/6)大渓→台中:今回最長の164kmを激走。とにかく距離を稼いだ日で、台湾の広さを脚で実感した一日だった。
- Day 3(11/7)台中→嘉義:31度の灼熱地獄。幹線道路をただ淡々と南下するだけの忍耐の一日だった。
- Day 4(11/8)嘉義→台南:北回帰線の通過モニュメントで一枚。八田與一の偉業に触れた、嘉南平原の意味を体感する一日。
- Day 5(11/9)台南→屏東:高雄に立ち寄って龍虎塔・美麗島駅・果貿社區・85ビルを駆け足観光。湿地公園ではゾウガメの「村長」と対面し、112km走破。
- Day 6(11/10)屏東→台東:台風接近の中、暗闇の5時出発で環島最大の難関・壽卡峠へ。パンクと暴風という二重苦に泣きそうになりながら、計画変更で台東まで延長119km。
- Day 7(11/11)台東 休養日:壽卡峠の疲労回復のため思い切ってオフに。朝の蛋餅、昼の米苔目、デザートの剉冰と食べ歩き。台風による花蓮の橋崩壊ニュースに肝を冷やす。
- Day 8(11/12)台東→玉里:台風から逃げるような豪雨の中を北上。池上で「全美行」の駅弁を頬張り、プレート境界モニュメントと玉里神社跡で旅情に浸る。
- Day 9(11/13)玉里→花蓮:台風の爪痕で迂回を強いられつつ、舞鶴の北回帰線(台湾で二回目)と光復糖廠のアイスに救われた。
- Day 10(11/14)花蓮→宜蘭:危険区間の蘇花公路は無理せず鉄道で輪行。空いた時間でカバランウイスキー蒸留所を訪れ、思いがけずご褒美の一日になった。
- Day 11(11/15)宜蘭→瑞芳:旧草嶺トンネルの2km超を走り抜け、念願の猴硐猫村へ。猫と戯れた2時間は、間違いなくこの旅のハイライトの一つ。
- Day 12(11/16)瑞芳→台北:野柳地質公園の奇岩群を最後に堪能し、ついに台北へ。MathewBikeで認定証を受け取った瞬間、12日間が一気にフラッシュバックした。
振り返ってみると、雨に祟られた壽卡峠、池上弁当を食べた台東〜玉里の谷間、そして猴硐の昼下がりの猫たち。地味な平坦区間ですら、今となっては全部が愛おしい。
結び
終わってみればあっという間の12日間だった。出発前は「1,000kmなんて本当に走れるのか」と半信半疑だったのに、いざ毎日ペダルを踏んでみると、人間の身体は意外と慣れるものだ。鍵を失くしても、雨に降られても、土砂崩れで通行止めになっても、何だかんだで翌朝にはまた前へ進めた。それを支えてくれたのが、整備されたインフラと、見ず知らずの僕に「加油!(がんばれ)」と声を掛けてくれた台湾の人たちだった。
環島は特別な人だけのものではない。プロでなくても、若くなくても、ロードバイク歴が短くても、ペダルを踏み出しさえすれば誰でも走れる。台湾は「環島」という冒険を、これ以上ないほどあたたかく歓迎してくれる国だ。この記事を読んで、ほんの少しでも心が動いた人がいたら、次は是非あなたの番だ。台北・松山駅の0K地点で会いましょう。

Day 12 まとめ
走行データ
この日の走行距離は41.7km(計画では38km)。
移動時間は2時間26分、経過時間は6時間34分。
獲得標高は286.6m、平均速度は17.1km/h。
詳細なデータはStravaで確認できる。
注:朝の瑞芳から数キロのGPSログを取り忘れたため、Stravaの数値はそれ以降の記録になっている。実際の総走行距離はもう少し長いはず。
費用まとめ(Day 12)
この日の出費は合計で約1,595NTD(約7,975円)。
内訳は以下の通り:
- コンビニ(朝食・昼食・夕食含む複数回):366NTD(約1,830円)
- 食費(葱抓餅・かき氷など):140NTD(約700円)
- 入場券(野柳地質公園など):120NTD(約600円)
- 交通:路線バス60NTD(約300円)+ MRT 24時間チケット180NTD(約900円)
- 自転車返却(タイヤチューブ代):150NTD(約750円)
- 宿泊(Taipei Travelers International Hostel):579NTD(約2,895円)
合計:約7,975円
1NTD(ニュー台湾ドル)は約5円で計算している。
12日目の感想と教訓
良かった点
- 環島完走! 1,000km、12日間の旅をやり切った
- 野柳地質公園の自然造形美を堪能できた(女王頭岩、見られて良かった)
- 基隆塔と信二防空洞で港町・基隆の魅力に触れた
- 牯嶺街・二二八紀念館で台湾近代史を体感
- MathewBikeから環島達成認定証を頂けたのが嬉しいサプライズ
反省点
- 朝のGPSログを取り忘れた最終日のミス
- 士林夜市は日曜の人混みを甘く見ていた
- 12日間の写真・動画整理が追いつかない問題(今思えば毎日ちょっとずつでもやるべきだった)
体調面
距離は短く、観光メインだったので体力的には余裕。むしろ自転車を返して荷物を下ろした瞬間に、疲れが一気にきた感じ。緊張が解けたのだろう。
環島完結のメッセージ
12日間のシリーズ「台湾環島サイクリング」、これにて完結です。
台北から時計回りに約1,000kmを走り、東海岸の絶景と西海岸の都市部、台風の試練と猫村の癒し、コンビニ食と夜市グルメ、すべてが今振り返っても夢のようでした。
台湾環島は終わってしまったが、次の日から3日間(予備日2日+帰国日1日)も台北観光で滞在しているので、もしかしたら番外編として続きを書くかもしれません。
ここまで読んでくださって、本当にありがとうございました。
いつかあなたも、台湾の風を浴びにペダルを踏みに行ってください。






















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